🏕2)─2─日本に地震安全地帯がない理由。~No.3 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2023年8月25日15:50 Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE「今年前半は“震度5弱以上”が多発 「巨大地震の前触れ」は本当か? 日本に地震安全地帯がない理由  #災害に備える
 [図] 震度5弱以上の地震活動(2023年1月~7月)
 今年5月。能登半島震度6強地震がゴールデンウイーク中に発生したのをはじめ、千葉県、伊豆諸島、鹿児島県トカラ列島震度5弱以上の揺れが相次いだ。SNSなどでは、「あちこちで発生する地震に関係性があるのではないか」「『南海トラフ巨大地震』や『首都直下地震』の前触れなのではないか」などと危惧する声も聞かれた。このような地震の多発をどのように考えたら良いのだろうか。また、なぜ日本では地震が多いのだろうか。9月1日の「防災の日」を前に、もう一度おさらいしてみたい。
 地震は本当に多かったのか?
 [図] 月別の震度5弱以上の地震発生回数(2000年1月~2023年5月)
 地震は本当に多かったのだろうか。まずは地震の規模、マグニチュード(M)でみてみる。気象庁によると、今年5月に日本およびその周辺で発生したM4.0以上の地震の回数は141回だった。M4.0以上の月別地震回数(1998年1月~2023年5月)を調べてみると、中央値は84回で、地震の半数以上が73回~106.5回の間に収まる。また、同じようにM5.0以上の月別地震回数(1973年1月~2023年5月)を調べてみると、中央値10回(半数以上が7回~15回の範囲に収まる)に対し、今年5月は28回。いずれの規模で見ても、通常よりは地震が多い月だったといえそうだ(ちなみに、月別地震回数が最も多かったのは、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震が発生した2011年3月で、M4.0以上は3241回、M5.0以上は521回で、いずれも桁違いの数となっている)。
 揺れの大きさ(震度)という観点ではどうだろうか。今年5月の震度5弱以上の地震回数は6回。過去の震度5弱以上の月別地震回数(2000年1月~2023年5月)をみると、突出して多い月が4つある。2度の震度7を観測した熊本地震が発生した2016年4月は22回、東北地方太平洋沖地震が発生した2011年3月は33回、新潟県中越地震が発生した2004年10月は18回、三宅島付近から新島・神津島付近にかけて活発な地震活動があった2000年7月は17回と、いずれも二桁の回数を記録しているのだ。こうした月に比べると、今年5月は少ない。ただ、震度5弱以上の地震が0回の月も少なくないことを考えると、それなりに多かったとはいえそうだ。
石川県能登地方の地震
 次に、今年5月に発生した地震の中でも、最も揺れが強かった能登半島地震について考えてみたい。石川県能登地方では、2018年ごろから人が揺れを感じない規模のものを含め地震の回数が増加傾向にあり、2020年末ごろからその発生頻度が高まっていた。さらに2021年半ばごろからは、人が揺れを感じるような地震も目立つようになっていた。2022年6月には震度6弱、震度5強の地震が相次いで起きており、こうした一連の地震活動の中で、今回の大きな地震が発生したものだ。
 政府の地震調査委員会などは、こうした地震活動について「能登半島の地下深くにある流体の移動に伴って起きている可能性がある」との見解を示している。気象庁の下山利浩地震情報企画官は「このような地震活動がいつまで続くのかはよくわからない状況。地震活動の領域も変化しており、今年5月の地震後は海域にも広がっている。もし、海域で大きな地震があった場合は津波が発生するおそれもある」と警戒を呼びかけている。
 もともと地震が多い関東地方
 また、今年5月のように、千葉県など関東地方で大きめの地震が発生するたびに、想定されている「首都直下地震」を頭に思い浮かべる人も少なくないだろう。しかし、関東地方はもともと地震活動が活発な地域であることを知っておく必要があるだろう。
 関東地方の地震活動が活発なのは、陸のプレートの下に南側から「フィリピン海プレート」が沈み込み、さらにその下には東側から「太平洋プレート」が沈み込むという非常に複雑な地下構造となっているためだ。さらに、東日本大震災を引き起こした2011年3月の東北地方太平洋沖地震以降は、地震活動がそれ以前と比べて活発になったエリアも多い。
 今から100年前の1923年9月の関東大震災を引き起こした大正関東地震は、陸のプレートにフィリピン海プレートが沈み込む相模トラフに蓄積されたひずみを解放するM7.9の大地震だった。過去の地震発生間隔から、大正関東地震と同様の相模トラフを震源とするM8クラスの大地震がすぐに発生するとは考えられていないものの、それよりも小さいM7クラスの地震はいつ発生してもおかしくないとされている。1995年の阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震熊本地震(いずれもM7.3)のように、M7クラスの地震が人が生活している場所の直下で起きると最大級の揺れである震度7に襲われるおそれがある。
 関東地方で大きめの地震があった場合は、「首都直下地震ではなくてよかった」とただ安心するのではなく、首都直下地震に対する備えを見直す機会としたい。
 日本に地震安全地帯はない
 「能登半島や千葉の地震は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震と直接的には関係がない」というのが地震学の一般的な見方だ。また、今年5月に地震が多かったのも、「偶然」といえるだろう。
 日本周辺では、海の「太平洋プレート」や「フィリピン海プレート」が、陸のプレート(北米プレートやユーラシアプレート)の方へ年数センチの速度で動いており、陸のプレートの下に沈み込んでいる。複数のプレートによって、日本列島には複雑な力がかかっているため、そもそも世界でも有数の地震多発地帯となっている。このため、同じ時期に地震が多くなることは決して不思議なことではない。
 なお、近い将来の発生が危惧されている「南海トラフ巨大地震」は、2011年3月の「東北地方太平洋沖地震東日本大震災)」、100年前の「大正関東地震関東大震災)」などと同様に、こうしたプレートがひしめき合う境界で発生する「海溝型地震」だ。太平洋側で発生する海溝型地震は、地震の規模が大きくなるため、強い揺れに見舞われる範囲が広くなる。巨大な津波を伴うことにも警戒が必要だ。
 ただ、津波を伴う地震日本海側でも発生することには注意を要する。北海道から北陸にかけた日本海東縁部にはひずみが集中している海域があり、1983年の日本海中部地震や1993年の北海道南西沖地震など、甚大な津波被害が出た地震が起きている。日本海側だから津波は関係ないなどと考えるのは大きな間違いだ。
 また、プレートがひしめき合っていることによって、その境界だけでなく、プレートの内部でも地震が発生する。プレートの内部には、過去の地震によってずれ動いた場所が古傷のように残っている。プレートに力が加わり続け、耐えきれなくなると、この古傷が再びずれ動く。この古傷が活断層で、陸域の活断層がずれ動いて起きるのが「内陸型地震」。「阪神淡路大震災兵庫県南部地震)」や「熊本地震」はこのタイプだった。地震の規模は海溝型地震に比べると一回り小さく、一度発生してから次に発生するまでの間隔も時に数千年単位と長いが、ひとたび発生すると、人々が生活する場所の直下で起きるため、激烈な揺れに見舞われて大きな被害となりやすい。また、活断層は日本沿岸の海底にも多く存在する。それらがずれ動いた地震の場合は津波を伴うこともある。
 国土地理院によると、日本では2000以上の活断層が見つかっている。さらに地表に現れていない古傷も多く存在していると考えられている。これらの古傷がいつずれ動くのかはよくわかっていない。ただ、西南日本では、南海トラフ巨大地震の前後に活断層による内陸型地震が多くなるという見方もある。
 いずれにせよ、日本に地震安全地帯はない。日本中どこでも被害を伴うような大きな地震が突然発生する可能性があることを肝に銘じ、備えを進めたい。
 (文・飯田和樹)
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 8月25日7:03 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「人類を脅かす「メガ天変地異」が起きるかもしれない…その震源地は「アメリカ」と「鹿児島」にあった

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 地震が発生するのはプレートという固い岩板が移動するからである。
では、そのプレートを動かしているものとは何なのだろうか? そして、その動きに周期はあるのだろうか? 地球表面を覆う十数枚のプレートが移動することで、かつて地球上にあったひとつの超大陸は、五つに分裂したと言われている。そして、このような大地の変動によって生じたひずみから起きる巨大な振動が地震だ。
ここでは『天変地異の地球学 巨大地震、異常気象から大量絶滅まで』を片手に、地球の地下2900kmまで潜り込み、プレートの動くしくみを見てみよう。

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 【漫画】「南海トラフ巨大地震」発生時、「名古屋港」にいたら…そのとき目にする惨状
 (本稿は藤岡換太郎『天変地異の地球学――巨大地震、異常気象から大量絶滅まで』を一部再編集の上、紹介しています)
 プレートが動けば地震が起きる
 海溝型地震の2つのタイプ。 上:チリ型 若くて温かく、軽いプレートが浅い角度で沈み込む。 下:マリアナ型 古くて冷たく、重いプレートが深い角度で沈み込む
 固体地球に起因する災害の第一は地震です。地震には海で起こる地震と陸で起こる地震がありますが、ここではおもに海で起こる地震について述べます。これは地球の表層を覆っている100kmほどの厚さのプレートと呼ばれる岩板の部分で起こります。
 10枚程度あるプレートどうしのせめぎあいによって発生するのです。
 まず、プレートが離れていく海嶺[かいれい]では、地面が両側へと押し広げられて割れ目(リフト)が形成されるときに地震が起こります。プレートがすれ違うトランスフォーム断層または断裂帯と呼ばれるところでは、2つのプレートが行き違う(すれ違う)ために、横ずれの断層が地震を起こします。
 これらの地震はいずれも地殻ないしは上部マントルで起こるため、比較的浅い(地下60kmくらいまでの)地震です。
 一方、プレートがぶつかる境界、日本海溝マリアナ海溝のような沈み込み帯では、2つのプレートが沈み込んだり、跳ね上がったりするときに地震が起こります。このような地震を海溝型地震といいます。
 海溝型地震は沈み込むプレートの「年齢」によって、チリ型とマリアナ型の2つのタイプに分かれます。片方が沈み込むときに沈み込まれる側も一緒にひきずり込まれますが、これがもとに戻ろうとするときに大きな地震になります。この地震は一般的には震源が深い深発地震になり、しばしば大きな被害をもたらします。
 しかし、670km以深ではプレートは潜り込めないために横たわっていきます。
 なお、これら海で起こる地震とはタイプが異なる陸で起こる地震は、内陸部にある活断層や岩盤などで発生する地震です。震源が浅いことが多く、その場合は兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)や新潟県中越地震のような、大きな被害をもたらします。
 ただし海溝型地震と比べて規模は小さく、被害を及ぼす範囲は20~30km程度にとどまります。
 沈み込み帯は、日本列島の近くでは千島海溝、日本海溝南海トラフ琉球海溝日本海東縁(日本海側は日本にとっては西になりますが、なぜか日本海から見て東縁と呼んでいます)があります。伊豆・小笠原海溝では巨大地震は少ないようです。
プレートを動かすのはプルームである
 地球の断面図
 地球の断面図を見ると、ゆで卵のようになっています。真ん中の黄身にあたるものは核(外核内核)です。核は鉄でできています。殻に相当する薄い部分が地殻で、その下の白身にあたる部分がマントルです。
 マントルは岩石でできていて、流動性があります。マントルの流れのことを「プルーム」と呼んでいます。
 寺田寅彦に『茶わんの湯』という随筆があります。

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 ここに茶わんが一つあります。中には熱い湯がいっぱいはいっております。
 (中略)
 次に、茶わんのお湯がだんだんに冷えるのは、湯の表面の茶わんの周囲から熱が逃げるためだと思っていいのです。もし表面にちゃんとふたでもしておけば、冷やされるのはおもにまわりの茶わんにふれた部分だけになります。
 そうなると、茶わんに接したところでは湯は冷えて重くなり、下のほうへ流れて底のほうへ向かって動きます。その反対に、茶わんのまん中のほうでは逆に上のほうへのぼって、表面からは外側に向かって流れる、だいたいそういうふうな循環が起こります。
 『茶碗の湯』寺田寅彦より(一部改行追加)

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 このようにして起こる対流が、固体であるマントルの内部でも起こっているわけです。
 2つのプルームがマントルの対流を起こす
 プルーム
 プルームには、熱いホットプルームと冷たいコールドプルームがあります。
 コールドプルームは沈み込んだプレートの残骸で、いったん深さ670kmくらいのところにたまります。そのあと変成作用というものを起こして密度がマントルより大きくなり、マントルと核の境界になっている2900kmの深さにまで落ち込みます。
 コールドプルームがそこまで落ちると、その反流として、ホットプルームが立ち上ってきます。こうして、マントルの中では対流が起こります。
 プルームの運動には少なくとも2つのパターンがあります。
 1つは、水平方向にプレートを動かして大陸を移動させている運動です。この場合、たとえば太平洋プレートが生産されてから日本海溝に沈み込むまでには1億2000万年ほどかかります。1年では9.5cmほど動いている計算です。
 もう1つは、核とマントルの境界で生まれたスーパーホットプルーム(後述)が地表に向かって垂直方向に上昇する運動です。この場合は約2900kmをおよそ3000万年で上ると考えられ、1kmを約1万年なので、1年では10cmほどと、速度としては水平方向の運動とほぼ同じです。
 このようにプルームには2方向への運動がありますが、垂直方向のほうが長距離を移動し、ツゾー・ウィルソンが提唱したところによれば約3億年というサイクルで動かすことで、さまざまな天変地異を起こしているわけです。
 メガ級の天変地異――スーパーホットプルーム
 鬼界カルデラの外輪山をなす薩摩硫黄島 photo by a****************p
 プルームの大規模なものは、直径が数千キロメートルにも及びます。こうしたプルームをスーパープルームといいます。
 その高さは深さ2900kmのマントル最下部から地表にまでつながることもあります。スーパーホットプルームは、大量のマグマを生成します。日本列島の体積の約6倍もあるオントンジャワ海台をつくった洪水玄武岩も、スーパーホットプルームによって地表に上がってきて、減圧されることで大量のマグマになったと考えられています。
 スーパーホットプルームの活動は、短時間に膨大な量のマグマを放出するので大きな災害を周辺にもたらします。
 また、放出されるガスには二酸化炭素が大量に含まれているので地球温暖化につながります。天変地異とは別格の、いわばメガ天変地異です。
 いま、米国のイエローストーン国立公園に大量のマグマが上がってきているのではないかという説がありますが、もしそれが本当だとすれば、人類は大変な災害に見舞われることになります。
 最近では、鹿児島県の南にある鬼界カルデラで大きな噴火があるのではないかと神戸大学の研究者らが言っていますが、かつてここでは、縄文人を壊滅させたような破局的大噴火が起こりました。そのようなことにならないよう祈るばかりです。
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 プルームが招く災いは地震だけではない。『天変地異の地球学――巨大地震、異常気象から大量絶滅まで』は、〈プルームが発生する→プレートが移動する→超大陸が形成、もしくは分裂する→海水中の酸素が欠乏状態になる→生物が絶滅する〉という歴史的事実を紹介している。まさに、プルームは天変地異の究極の原因なのだ。
 さらに連載記事<福島第一原発の悲劇、じつは「想定内」だった…「貞観と宝永」平安時代と江戸時代の前例から予測する「地震と噴火の周期」>では、地震と噴火の周期について詳しく解説しています。

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 天変地異の地球学――巨大地震、異常気象から大量絶滅まで
 日本は世界でも稀な「災害が束になってやってくる国」だというのです。災害が束になると、それはもう「天変地異」です。天変地異を軸に46億年をとらえなおす、かつてないスケールの地球科学! 

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 藤岡 換太郎
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 2019年5月29日 現代ビジネス「 火山学者が戦慄する「すでに富士山は噴火スタンバイ」という現実
 南海トラフと富士山「令和の大噴火」
 鎌田 浩毅京都大学名誉教授 プロフィール
 「3.11」が状況を一変させた
 富士山は日本一の高さを誇る美しい山だが、いつ噴火してもおかしくない活火山であることは、意外と知られていない。
 いまから約300年前の江戸時代に、富士山は大噴火した。それ以来、地下に大量のマグマを溜め続けたまま、不気味な沈黙を保っている。
 私が専門とする地球科学には、「過去は未来を解く鍵」という言葉がある。過去に起きた自然現象を調べることで、未来の事象を予測するという意味だ。
 それに従ってタイムスリップすると、この1707(宝永4)年のいわゆる「宝永の大噴火」は、記録に残っている富士山噴火ではマグマの噴出量が第二位という巨大さだった。噴火は断続的に半月ほど続き、火山灰は横浜や江戸、さらには房総半島にまで降り積もって、大きな被害をもたらした。
 この過去の事実をもとに、同じことがこれから起きたらどうなるかを予測するため、私は2007年に『富士山噴火 ハザードマップで読み解く「Xデー」』をブルーバックスから上梓した。幸い6刷と版を重ね、テレビ各局はこの本を参考にして富士山に関するアカデミック・バラエティー番組を次々に制作し、私も解説をつとめた。
 ところが、2011年に起きた東日本大震災、いわゆる「3・11」は、富士山をめぐる状況を一変させてしまった。巨大地震から4日後、富士山の直下で地震が発生したとき、火山学者は全員、肝を冷やした。マグマだまりの直上に「ひび割れ」を起こした可能性があるからだ。
 幸い噴火はまだ起きていないが、富士山はすでに「噴火スタンバイ」の状態にあると私は考えている。
 富士山東京からも富士山は近い Photo by photolibrary
 「令和の大噴火」は巨大地震とともに
 富士山だけではない。東日本大震災以後の日本列島は、地震と噴火が繰り返される「大地変動の時代」に突入した。いまや未来を解く鍵は、過去の地震や噴火の例の中に探すしかないのである。
 2030年代の発生が確実な南海トラフ巨大地震に関しても、過去に重い事例がある。
 1707年、南海トラフマグニチュード8.6という日本最大級の「宝永地震」が発生した。
 そのわずか49日後、富士山が大噴火した。これが前述した「宝永の大噴火」である。
 現代にあてはめれば、やがて起こるマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震のあとに富士山が大噴火するということだ。
 仮にいま、宝永クラスの「令和の大噴火」が起きると、ハイテク社会が受ける打撃は江戸時代とは比較にならない。
 火山灰は東京に5センチメートルほども積もり、コンピュータや精密機器の小さな隙間にまで入り込んで、ライフラインのすべてを停止させる。航空機も墜落の危険があるため羽田も成田も閉鎖される。富士山周辺だけでなく首都圏全域で、あらゆる機能が麻痺してしまうのだ。
 内閣府は富士山噴火を2兆5000億円規模の激甚災害になると予測しているが、この計算には含まれていない項目がある。
 近年、研究が進んだ「山体崩壊」という破局的な現象で、山が変形するほど崩壊し、膨大な岩石や土砂が高速で流れ下る。もしもいま富士山で山体崩壊が起きたら、40万人が被災する可能性がある。
 富士山噴火Photo by Getty Images
 それでも強調したかったこと
 「大地変動の時代」には、それに合わせた羅針盤が必要だ。その思いで東日本大震災以後の研究成果を取り入れ、前著を全面的に書き直したのが新刊の『富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ』(講談社ブルーバックス)である。
 実は富士山は「噴火のデパート」ともいわれ、多様な噴火をして火山灰、溶岩流、噴石、火砕流、泥流など多様な噴出物を出す。本書の前半では、それぞれの危険性と、防災上の知識を解説した。
 後半では、富士山がいまどのような状態にあるのか、なぜ南海トラフと富士山は連動するのかを解き明かし、最先端の噴火予知技術についても解説した。
 プレートひしめく日本列島では「地面は揺れ、山は火を噴く」のを避けることはできない。それでも噴火の前兆をつかまえ安全に避難できるよう、火山学者は噴火予知の研究に日夜没頭している。
 人知を超える自然をコントロールすることはできないが、災害を「科学」の力で軽減することは可能だからだ。
 だが、私が本書でとくに強調したかったのは、それでも富士山は日本人の「心のふるさと」であり、多大な恩恵を与えてくれているということだ。
 自然と人間の関係を「長尺の目」で見れば、災害は一瞬の出来事であり、恩恵を享ける時間のほうがはるかに長い。そこには「短い災い」と「長い恵み」という表裏一体の関係がある。両者をよく知ることが自然を「正しく恐れる」ことにつながるのだ。
 その意味では、日本人必読の書ともいえるのではと自負している。
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