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地名には、先人の子孫への想いが詰まっているが、現代日本人が新しく付ける地名は無味乾燥で味気ない。
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2023年10月5日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「地震大国・日本に「坂」が多いのはなぜ? 地名でわかる「東京の町」
谷川 彰英
東京の高低図に照らして地名を探りながら、東京の地形と地名の安全度、危険度、震災への心構えを、読者に「立体的に」また「蘊蓄をもとに」伝える『地名に隠された「東京津波」』。本書から読みどころを抜粋してお届けする。
日本は地形と地名の宝庫
日本は地名の宝庫だとよくいわれるが、それほど地名が豊かに残っているのは、日本列島の地形が多様であるからである。つまり、日本は地形が多様で変化に富んでいるから、多くの特徴ある地名を今に伝えているということである。
たぶんこれは日本が地震王国であるということと関連している。太平洋側の日本海溝から見れば1万メートルに達する山の部分が今は陸地として出ており、日本海も水深が3000メートルに及ぶ。いうなれば、日本列島は高い山脈の尾根の部分だけが海上に出ているのであって、当然のことながら山は鋭くそびえ立っており、そこに多くの谷が形成され、その間に平野が広がっている。
したがって、日本には「山」「川」「島」「池」「森」「林」「石」など自然の地形を示す地名が圧倒的に多い。さらに、そこに人が住むようになって、「村」「田」「橋」「船」などの地名が成立してくる。
© 現代ビジネス
対照的なのはアメリカ合衆国である。特に中西部は地形の変化に乏しく、州と州との境界線が直線で何十キロも続くというのが当たり前のようになっている。これは住んでいる人々の数が少なく、定住していなかったことがその理由である。
日本の場合は平野部であっても、一直線に村と村の境界を引くことなど不可能である。村々の田の領有地は決まっており、その田んぼは普通、曲線を描いているからである。長方形に田を整備したのは戦後のことである。
東京の町は地名でわかる!
東京の町も例外ではない。今の私は地名に関する本を書くことがライフワークのようになっているが、その私に地名の重要性に開眼させてくれたのは、ある地理学者のひとことだった。私が大学教員として最初に赴任したのは千葉大学教育学部だったが、そこで出会った地理学者が会議の前の立ち話で、こう話された。
「東京ってのは、地名で地形がわかってしまうんだよ。山の手には山とか岡という地名があるし、下町には橋や川という地名が多い。その2つを結んでいるのが坂なんだよ」
私自身は特に地理学を学んだわけではなかったが、とにかく東京に10年もの間住んでいて、何気なく東京の町についていくつか疑問に思っていたことを、このひとことが解いてくれた。
一方、私個人は小学校の高学年の頃、なぜかわからないが地図大好き少年だった。学校でもらった地図帳を毎日見ながら暮らしていた。地図には見る人の意識によって実に様々な事実が浮かんでくることが無性に楽しかった。
© 現代ビジネス
初めて上京したとき思ったのは、東京ってなんて坂の多い町なんだろうということだった。私が生まれ育ったのは長野県の松本市だったが、ここは典型的な扇状地で細かい坂があるわけではない。なだらかな傾斜地が続き、その周りには3000メートル近い山々が連なっている。
そんな地形のところから出てきた若者には、東京は異様に坂の多い町だという印象を与えたのである。
後編【「現代の東京人」が失ってしまったもの…「タワマン」が奪った「大切な感覚」】に続きます。
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10月5日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「「現代の東京人」が失ってしまったもの…「タワマン」が奪った「大切な感覚」
谷川 彰英
東京の高低図に照らして地名を探りながら、東京の地形と地名の安全度、危険度、震災への心構えを、読者に「立体的に」また「蘊蓄をもとに」伝える『地名に隠された「東京津波」』。本書から読みどころを抜粋してお届けする。
前編記事【地震大国・日本に「坂」が多いのはなぜ? 地名でわかる「東京の街】特
失われた高低感
昨今の東京人を見ていると、この東京の町の地形、特にその土地の高低感が失われているように見えてならない。どこの繁華街に行っても同じように見えてしまう。新宿も渋谷も池袋も同じような町に見えてしまう。人々は超高層ビルを見つめ、人々が行き交う通りをぬって歩くだけだから、同じなのである。
ところが、よく見るとこれらの繁華街も微妙に違っていることがわかってくる。いちばんわかりやすいのは渋谷である。「渋谷」と書かれているように、ここは「谷」である。
今の渋谷駅があるあたりがいちばん低く、代々木方面に行くにも坂、青山方面へは「宮益坂」、西に向かえば「道玄坂」である。唯一南方のみ下に向かっており、ここを流れるのが港区を経て東京湾に注ぎ込む古川という川である。
実は今のJR線.東横線の「渋谷駅」の地下には川が流れている。これが古川の源流だが、「渋谷川」とも呼ばれている。新宿御苑を水源地とし、「千駄ヶ谷」という谷を通って渋谷に流れている。
渋谷が「谷」であることは、地下鉄銀座線の渋谷駅が地上3階から出発していることを見てもわかる。青山の台地を抜けた電車はいきなり渋谷の上空に出て止まる。そこがターミナルなのである。
なぜ失ったのか
このように東京人が土地の高低感を失ったのにはいくつかの理由がある。
一つは歯止めがかからぬように東京中に林立する超高層ビルである。今は地盤の強弱に関係なく、どこでも超高層ビルを建設している。東京スカイツリーの建つ墨田区は地盤は決して堅固ではない。
もちろん耐震への対策は十分できていようが、観光客はただ、より高い塔が完成すればよいと考えている。同様に、下町にも高層マンションが建ち並んでいる。そんなところから、東京人が足元を見つめることを忘れ、高層ビルを見つめることに慣れてしまったことがまず一つの理由である。
2つ目は交通機関の発達である。東京の町を歩いてみると、けっこうきつい坂が多いことを実感できるが、ほとんどの人はJRや地下鉄、私鉄の電車を利用している。JRはそのほとんどが高架になっているため、ほとんど水平だという感覚に慣らされてしまっている。地下鉄はそのほとんどが地下を走るため、その上がどうなっているかなど関係ない話である。
先に述べた渋谷駅のように天空を走っても、そんなものかと不思議にも思わない。これが現代の東京人の感覚なのである。
もう一つ理由を挙げるとすると、街並みのつくりがどこも同じになってきていることである。特に繁華街では、新宿も渋谷も池袋も見た目にそう大きな変化は認められない。自分が行きたいショップやレストランがそこにあればいい、というのが特に若い世代の感覚であろう。
もっと読む【関東大震災では東京に津波が来なかった理由…東日本大震災との「決定的な違い」】
●本記事は2012年に刊行された書籍から抜粋して作成したものです。
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