🌈16)─1─古代日本の装いの力―異性装の日本史。「装いの力―異性装の日本史」。~No.31 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 日本人女性は、自分の意志で、鎧兜を着て刀、薙刀、火縄銃を持って武装し、男性兵士と一緒に戦場に立って敵と戦っていた。
 日本人の女性は男性よりも好戦的であった。
 この点において、昔の日本人女性と現代の日本人女性とでは全然違う。
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 2022年10月5日 YAHOO!JAPANニュース 産経新聞「女装は古代から? 「異性装の日本史」をたどる
 法橋関月《巴御前出陣図》江戸時代(18世紀) 東京国立博物館【後期展示】 Image TNM Image Archives
 多様な性のあり方を社会全体で理解し、認め合う動きが出てきた今、日本における「異性装」の歴史をたどるユニークな展覧会が注目を集めている。渋谷区立松濤美術館(東京)の「装いの力-異性装の日本史」だ。
 【写真】「光るセルフポートレイト(女優)/白いマリリン」
 衣服や化粧などによって生物学的な性を越える試みは、性的指向に限らずさまざまな理由で古来、行われてきた。本展は歴史書や絵画から近現代の新聞雑誌、漫画、映像まで、男装・女装がどのように表現されてきたのかを、社会との関わりも含めて考察している。
 異性装にまつわる言及は『古事記』までさかのぼり、小碓命(をうすのみこと)(後の倭建命(やまとたけるのみこと))が女装をして九州の熊曽(くまそ)の宴に潜入、討伐したことが記されている。また『とりかへばや物語』『新蔵人物語』といった平安~室町時代の物語にも男装・女装をした主人公が登場。さらに『平家物語』でおなじみの巴御前(ともえごぜん)を筆頭に女武者も人気を集め、近世の錦絵などにたびたび描かれてきた。
 男性の女装、女性の男装と「性を重ねることで通常とは異なる力(異能)が生じるという考え方があったように思われる」と、性社会文化史研究者の三橋順子氏は図録で指摘している。加えて、宗教上の禁忌が強い西洋社会とは違い、日本人は異性装の芸術、芸能に寛容であるばかりか大いに魅せられてきた。歌舞伎や大衆演劇女形宝塚歌劇の男役スターなど、例を挙げればキリがない。
 明治に入り西洋文化流入すると、異性装は一時的にだが禁じられ、社会的に異端視する風潮が強まっていった。「リボンの騎士」「ベルサイユのばら」といった人気漫画や芸能の世界では喜んで受容しても、実社会での偏見はいまなお残る。
 現代美術家森村泰昌の「女優シリーズ」やダムタイプの記録映像、そしてシモーヌ深雪らドラァグクイーンによる華麗でパワフルな装いの展示で本展は締められる。性のありようは、その時々の社会次第で変わり得るのだと改めて気づかされる。
 一部展示替えあり。30日まで。月曜休(10日は開館し翌11日休)。土・日曜、祝日と最終週(25~30日)は日時指定予約制で、公式HPからの予約が必要。(黒沢綾子)
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 「装いの力―異性装の日本史」
 渋谷区立松濤美術館
 10月30日終了
 アーティスト
 シモーヌ深雪、D.K.ウラヂ、豊原国周、石井林響、篠山紀信、濱谷浩、森村泰昌 他もっと見る
 男性か女性か―人間を2つの性別によって区分する考え方は、私たちの中に深く根付いています。近年では、人間に固定の性別はなく、従って「男性 / 女性」という二者択一の規定を取り払い、多様な性のあり方について理解し、認め合うという動きがでてきたものの、実際には性別における二項対立の構図はいまだに様々な場面で目にするものでしょう。
 しかしながら、人々はこの性の境界を、身にまとう衣服・化粧によって越える試みをしばしば行ってきました。社会的・文化的な性別を区分するための記号である衣服をもって、生物学的に与えられた性とは異なる性となるのです。もちろん、異性装を実践した人物の性自認性的指向は非常に多様なものであり、それらが異性装とともに自動的に変化するということはありません。あくまで、社会的・文化的に識別されている性の越境を可能とするものが異性装なのです。
 本展覧会では、古代から現代までの日本における様々な異性装の文化・表現を通して「装いの力」について考察します。男女の境界とは何なのか。その境界をこえるというのはどういうことなのか。男らしさ、女らしさとは何なのか。日本における異性装の系譜の一端を辿ることで、それらがどのように表現されてきたのかということを探り、「異性装」という営みの「これまで」と「これから」について考えます。
 ※会期中、一部展示替えがあります
1. 記念講演会「写真でたどる女装と男装の近・現代史」
 日時: 9月10日(土)午後2時~(約1時間30分)地下2階ホール
 講師: 三橋順子氏(社会・文化史研究者)
 参加費: 無料(要入館料)
 定員: 40名(要事前申込、先着順)
2. スペシャル・トークセッション「Drag Queen in Japan ~異性を装うとは何か? ジェンダーセクシュアリティの見地から~」
 日時: 10月9日(日)午後5時~(約1時間30分)地下2階ホール
登壇者: シモーヌ深雪氏×ブブ・ド・ラ・マドレーヌ氏×三橋順子氏(司会)
 参加費: 無料(要入館料)
 定員: 40名(要事前申込、先着順)
3. パフォーマンス記録映像 ダムタイプ《S/N》 特別上映
 日時: 9月17日(土)①午前10時30分~午後12時30分の回  ②午後2時~午後4時の回会場: 地下2階ホール
 オペレーター: 山中透氏(作曲家、プロデューサー、DJ)
 参加費: 無料(要入館料)
 定員: 各回40名(要事前申込、先着順)
※イベント詳細・お申し込み方法は公式ホームページよりご確認ください。
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 朝日新聞
 ヤマトタケルも?異性装の日本史 美術作品で系譜たどる展覧会=訂正・おわびあり
 2022年9月13日 16時30分
 装いによる「性の越境」の先には何があるのか――。日本の文化の中で連綿と営まれ、さまざまな資料や美術作品に記録されてきた「異性装」。古代から現代まで、その系譜をたどる画期的な展覧会が、東京の渋谷区立松濤美術館で開かれている。
 日本で異性装に言及した最古の例は、ヤマトタケルが女装で敵の隙を突くという古事記のエピソードにさかのぼる。平安後期の作とされる「とりかへばや物語」では兄妹が装いと立場を入れ替え、室町期の「新蔵人物語絵巻」では男を装って参内した娘が帝の寵愛(ちょうあい)を受けて出産する。
 江戸時代の絵巻は、男装の女官や女帝、女人禁制の僧侶に付いて疑似的な異性愛行為の相手をした稚児など、現実に存在した可能性のある異性装者の姿を描く。ただし、彼らの装いは本人の性的指向アイデンティティーと関係なく、職業や立場によって求められた異性装だった。
 能や白拍子など芸能の世界でも、異性装の例は枚挙にいとまがない。桃山時代の「阿国(おくに)歌舞伎草紙」には、男装でかぶき者を演じる出雲阿国(いずものおくに)が女装の男性と共演する様子が描かれる。阿国歌舞伎は男装の遊女らによる女歌舞伎、少年による若衆歌舞伎などに展開。それらが風俗を乱すという理由で禁止されると、筋書きを重視し成人男性だけで演じる野郎歌舞伎が生まれ、現代の歌舞伎の原型となった。
 歌舞伎の人気役者を描いた錦絵や読み物、祭りの出し物といったフィクションの世界では、異性装の登場人物たちが大衆を大いに楽しませた。実社会では、身分の高い男性の女装には寛容な一方で男装した女性は罰せられるという非対称性があったものの、異性装という選択肢は緩やかに受け入れられていた。だが、そんな状況は明治の西洋化とともに一変する。
 1873(明治6)年、今の軽犯罪法にあたる条例で異性装が禁じられると、違反者の摘発が新聞をにぎわすようになった。事件の一場面をスキャンダラスに描いた「錦絵新聞」の一つは、ある夫婦の妻が出生時は男性だったと世に知られた結果、婚姻を無効とされた上に髪を切られる痛ましい出来事を報じている。
 82年に法令がなくなった後も、異性装者への差別感情は残った。一方で、大正・昭和期に各地で生まれた少女歌劇など、芸能としての異性装への嗜好(しこう)は大衆の中に存在し続けた。男装の麗人が主人公の少女漫画「ベルサイユのばら」が1970年代に一世を風靡(ふうび)したことは、旧来の「女/男らしさ」が揺らぎ始めた時代に象徴的だ。
 性別二元論や性規範に対し、装いを武器に挑みかかる現代アーティストもいる。森村泰昌は女優に扮するセルフポートレート写真で、性にとどまらず人種や「見る/見られる」関係の線引きを揺さぶった。パフォーマンス集団・ダムタイプで活動したブブ・ド・ラ・マドレーヌは、裸の身体を誇張し女性でありながら「女装」することで、「見られる前に、見せたいように見せ返す」のだと語る。
 展覧会の最後では、89年から関西で続くドラァグクイーン・パーティー「DIAMONDS ARE FOREVER」のメンバーによるインスタレーションが展示されている。ドラァグクイーンは一般に、過剰に女装したゲイ男性のパフォーマーであることが多いが、ブブら女性クイーンも出演するDIAMONDSを率いるシモーヌ深雪は「異性装をしているという意識はない」。それよりも「度を超えて、世間の常識からどれだけ逸脱するか」が重要だと言う。
 「たまたま性別を越えているという点では『異性装』だが、不思議な格好という意味ではシャーマンのような『異装』と言える」と、性別越境の歴史に詳しい明治大学非常勤講師の三橋順子さん。「単に二次元的に性の境を越える『越境』ではなく、空間や時間など複数の境を越えていく『超越』的なものを、森村さんやDIAMONDSは表現しているのではないか」(田中ゑれ奈)
 ▽「装いの力―異性装の日本史」展は10月30日まで。祝日をのぞく月曜と9月20日、10月11日は休館。
 <訂正して、おわびします>
 ▼13日付「彩る」面の「ヤマトタケルも? 異性装の日本史」の記事で、異性装を禁じる法令がなくなったのが1880年とあるのは、1882年の誤りでした。
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江戸の女装と男装
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 ウィキペディア
 異性装(いせいそう)とは、文化的に自らの性役割に属するとされる服装をしないこと。
 男性が女性に属する服装をすることを女装(じょそう)と言い、女性が男性に属する服装をすることを男装(だんそう)と言う。
 概要
 従来の社会にある服装規範に違和感を持ち、自由でありたい人が持つ性のあり方を異性装指向及びトランスヴェスチズム(transvestism)という。一般に異性装を行う者をトランスヴェスタイト(transvestite, TV)と呼ぶが、これは本来は医学的な概念としての呼称であり、これにネガティブなイメージを持つ異性装者が自ら生み出した呼称にクロスドレッサー(cross-dresser, CD)がある。同様に異性装を行うことをクロスドレッシング(en:Cross-dressing)という。 また自分又は相手に、全体又は一部の異性装をさせて性的に興奮を得るフェティシズムは、異性装嗜好(一部異性装指向)ともいう。両方とも比較的男性に一層多いことが知られている。
 異性装をしている状態をA面(after)と表現する場合もある。逆に異性装者の異性装をしていない状態はB面(before)と表現される。
 性別違和症候群としての異性装
 性別違和症候群は広い概念であるが、その中にも異性装に関連する分類がなされる。性別違和症候群に分類される広義の性同一性障害(GID)には、両性役割服装倒錯症(英語版)が部分的に含まれる。これを「dr-TV」という。またGIDには含まれないが、なお性別違和症候群に含有されるものをフェティシズム服装倒錯症といい、これを「f-TV」という[1]。両者とも異性装を行うが、両性役割服装倒錯症(英語版)は、性的興奮を伴わずに自己の生物学的性とは反対の性別の服装を身につけることで、異性の一員であるという一時的な体験を享受するために、社会的に反対の性役割に同化するものに対し、フェティシズム服装倒錯症は自己の生物学的性とは反対の性別の服装を着用することによって性的興奮を得るものと区別される。
 変身願望を実現するための手段としての異性装は、性同一性障害とは異なる。
 宗教上の禁忌
 女性唯一の米国名誉勲章受章者メアリ・ウォーカー(1870年)。彼女は男装を咎められ何度も逮捕されている。
 旧約聖書申命記』の22章5節に
 「女は男の着物を着てはならない。また男は女の着物を着てはならない。あなたの神、主はそのような事をする者を忌みきらわれるからである。」
 とあるため、同書を聖典(啓典)に含めるユダヤ教キリスト教イスラム教の戒律に抵触する。現代では世俗化が進み教会などにおいてもこの規定を重視しない社会が多いが、シャーリアを法源とするイスラム国家では異性装が犯罪となることもある。
 軍装
 異性装が宗教的禁忌となる社会では、女性軍人の軍装が異性装とみなされ問題となる。古くはジャンヌ・ダルクが異端審問で魔女と認定された理由のひとつが軍装を身に着けたことであった。
 現代では、男女問わず国民皆兵であるイスラエルにおいて、正統派ユダヤ教徒であることを立証できる女性は宗教理由による良心的兵役忌避が許されている。湾岸危機に際してアメリカ軍がイスラム国家のサウジアラビアに駐屯した際には、米軍の女性軍人の存在に対してサウジアラビア政府が難色を示した。なお同じくイスラム国家であるイランでは、全身を覆うイスラームの女性装に則った軍服をまとった女性兵士の部隊がある。

 異性装を描いた作品
 上記の「異性装の理由/芸術」の項と、下記の「関連項目」も参照。
 神話や伝説を多く含む古代の史書古事記』『日本書紀』は、ヤマトタケルが女装して宴に潜入して、熊襲建を討ったと伝える。
 中世文学においても異性装の物語は人気を博した。その代表的な作品が平安時代後期に描かれた『とりかへばや物語』であり、男装の女君と女装の男君がジェンダーを入れ替えて宮廷生活を送る物語である。平安時代末期の『有明の別れ』は男装の女君が隠れ身の術を使って活躍し、室町時代の短編物語絵巻『新蔵人物語』では主人公の女性が自らの意志で男装して宮中に上がる。
 江戸時代には、小説や演劇等において異性装や男女の入れ替えといった発想を取り入れた作品が多く作られた。曲亭馬琴の小説『南総里見八犬伝』に登場する八犬士のうち2人(犬塚信乃・犬坂毛野)は女装で登場している。柳下亭種員・二世柳亭種彦・柳水亭種清が書き継いだ小説『白縫譚』の主人公若菜姫は男装している。歌舞伎『青砥稿花紅彩画(白浪五人男)』の主人公の一人である弁天小僧は女装して美人局を働く男性であり[5]、女装のまま居直って正体を現す場面は「知らざあ言って聞かせやしょう」のセリフとともに知られている[8]。神田祭山王祭では、女性が男装する出し物があるなど異性装がしばしば行われており、これらを描いた浮世絵が多数現存する。これらの異性装は職業や立場によるもので、性的指向アイデンティティとの関係は無いとされる。
 近代において、実在の人物である川島芳子をモデルとした村松梢風の小説タイトルに使われた『男装の麗人』という言葉は、美男子に扮した女性を指す表現として広く使われた。こうしたキャラクターが登場する演劇や映画・テレビドラマ、漫画・アニメーション作品は現代に至るまで多数制作されている(『リボンの騎士』や『ベルサイユのばら』など)。
 逆に女装した男性が登場する作品もあり、サブカルチャーでは「男の娘」「バ美肉」と呼ばれるジャンルが存在する。
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 美術手帳
 NEWS / REPORT
 2022.9.3
 異性装の歴史から問う、ジェンダーの未来。「装いの力ー異性装の日本史」が東京・渋谷の松濤美術館で開幕
 衣服の力によって性を越境する試みである「異性装」。その系譜と表現をたどり、日本における異性装のこれまでとこれからを考える「装いの力ー異性装の日本史」が東京・渋谷区立松濤美術館で開幕した。会期は9月3日〜10月30日。
 展示風景より、8章「現代から未来へと続く異性装」
 生まれながらの性別から、衣服の力によってその性を越境する試みである「異性装」。日本におけるその歴史と表現をたどり、異性装のこれまでとこれからを考える「装いの力ー異性装の日本史」が東京・渋谷の松濤美術館で開幕した。会期は9月3日〜10月30日。
 日本では、その歴史においてしばしば異性装を試みることで、従来の性別とは異なる社会的な立ち位置を得ようとした人々が存在した。本展は、古代から現代までの様々な絵画や衣裳、写真、映像、マンガなどの作品を通して、各時代の異性装の様相を通覧することで、その性の越境を可能とする「装いの力」について考察することを促すものだ。
 会場は大きく2つのエリアに分かれており、全8章で構成。地下1階は奈良時代から江戸時代までの、2階からは明治時代以降における近・現代の異性装の事例が取り上げられている。
 展示風景より
 1章「日本のいにしえの異性装」では、古くから残る異性装の歴史を紹介。その異性装の最古の事例として挙げられているのが『古事記』だ。九州のクマソタケル討伐を命じられたヤマトタケルは、髪を下ろし、女性の着物を身にまとうことで女性に扮し、相手の隙をついた、というエピソードがこの書物には残されている。
 展示風景より、三代・山川永徳斎日本武尊》(昭和時代初期) 個人蔵
 室町時代の《新蔵人物語絵巻》は、とある貴族の三女が主人公の物語。この三女は「男になって走り歩きたい」という願望のもと、兄とともに男装をして宮中に出仕。帝に仕え、新蔵人(しんくろうど)と呼ばれるようになった。
 展示風景より、《新蔵人物語絵巻》(室町時代、部分) ※前後期で場面替えあり
 谷文晁(たに・ぶんちょう)によって模写された江戸時代の《石山寺縁起》では、僧侶と同伴する少女の姿が見える。当時僧侶は女人禁制であったため、近年の研究では女装をした稚児なのではないか、と考えられている。
 展示風景より、谷文晁《石山寺縁起》巻三(江戸時代、部分) サントリー美術館 ※前後期で場面替えあ
 2章「戦う女性ー女武者」では、軍事領域は男性と考えられていた時代に、甲冑を身に着け武具を持った「戦う女性」を取り上げる。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも登場している巴御前の姿が描かれた《奈良絵本 平家物語》や、現存数が少なく非常に貴重な女性用の甲冑《朱漆塗色々威腹巻》がこの章の見どころと言える。
 展示風景より、《奈良絵本 平家物語》第17冊「木曾の最期の事」 (江戸時代、部分) 神奈川県立歴史博物館
展示風景より、手前は《朱漆塗色々威腹巻》(江戸時代)彦根城博物館 ※前期展示のみ、奥は長谷川雪旦《白拍子図》(江戸時代、前期展示のみ) 東京国立博物館
 戦う女性もいるいっぽう、美しい男=「若衆」も存在する。3章で紹介されるこの若衆とは、一般的には元服前の若い男性のことだが、場合によっては男色の対象となった陰間(かげま)と呼ばれる少年や役者を指すこともあったという。ここで展示されている葛飾北斎の《若衆文案図》は、あたかも美人画と見まごうほどの中性的な少年が描かれており、当時はその独特な雰囲気に美を見出していたのではないかと言われている。
 展示風景より、葛飾北斎《若衆文案図》 (1840年)氏家浮世絵コレクション ※前期展示のみ
 展示風景より、《納戸紗綾地菖蒲桔梗松文 振袖》 (江戸時代)奈良県立美術館
 異性装で思い浮かぶ代表的なもののひとつが「歌舞伎」ではないだろうか。4章の「江戸の異性装―歌舞伎」では、かぶき踊りの創始者と言われている出雲阿国が描かれた《阿国歌舞伎草紙 第二段》が展示。男装の阿国が女装をした夫・三十郎と戯れる「茶屋遊び」の演目が当時人気を博し、この性の倒錯のおもしろさに江戸の人々は惹かれていたことが伺える。その後、遊女による歌舞伎や若衆歌舞伎なども誕生したが、風紀を乱すという理由で禁止に。成人男性役者が芝居を演じることで興行許可がおりた「野郎歌舞伎」が、現在まで続く歌舞伎の基礎となっている。
 展示風景より、《阿国歌舞伎草紙 第二段》(桃山時代、部分) 大和文様館 ※前期展示のみ
 5章では江戸の異性装のなかでも「物語の登場人物・祭礼」に焦点を当てる。江戸時代に人気を博した小説や合巻などには異性装の人物が活躍することもあった。曲亭馬琴による『南総里見八犬伝』の女装剣士や、歌舞伎の演目としても有名な『三人吉三廓初買』で登場するお嬢吉三も女装の盗賊だ。
 展示風景より。左から、歌川芳艶《弁天小僧菊の助 市村羽左衛門 坂東三八 坂東又太郎 松本国五郎 嵐吉六 日本駄右衛門 関三十郎》(1862) ※A期展示のみ、歌川国貞(三代豊国)《三人吉三廓初買》(1860)早稲田大学坪内記念演劇博物館 ※前期展示のみ、一養亭芳瀧《里見八犬傅》(1874)国立劇場 ※前期展示のみ
 祭礼という非日常の場でも異性装は見られ、山王祭神田祭では男装の女芸者による演目が行われるという事例もあったようだ。
 5章江戸の異性装―物語と祭礼 展示風景
 異性装という営みは、時代背景や当人の身分によって許されたり罰せられたりした。江戸時代では、歌舞伎や小説など表現の場では積極的に受け入れられたものの、実世界ではすべて許容されていたわけではない。しかし、祭りのような特別な場ではある程度許容される、といったゆるやかな側面も持ち合わせていた時代だと言える。
 6章「近代における異性装」で紹介する作品からは、異性装に対する人々の考え方が徐々に変わっていく様子を見ることができる。明治新政府が立ち上がった頃、日本は西洋の価値観を取り入れ同等になろうと文化醸成を推し進めた。その結果制定されたのが「違式詿違条例(いしきかいいじょうれい)」。現在の軽犯罪法に当たる本条例には、異性装禁止の項目が含まれていた。
 展示風景より、6章「近代における異性装」
 メディアではこのような刑罰報道が増えた。《東京日々新聞 813号》では、とある夫婦が結婚後、戸籍制度によって妻が女装をした男性であることが発覚。双方の同意のもとの婚姻であったにもかかわらず、離婚を強いられ、妻の男性は散切り頭にされてしまった、という痛ましいニュースだ。
 展示風景より、落合芳幾《東京日々新聞 813号》(1874) 東京都江戸東京博物館
 展示風景より、明治政府が制定した「違式詿違条例(いしきかいいじょうれい)」により刑罰を受けた人々の報道
 一般社会での異性装の取り締まりが厳しくなるいっぽうで、芸能など表現の分野では変わらず異性装は容認されており、少女歌劇や男装の麗人・ターキーが人気を博したりと、矛盾した状況も生まれた。その後も異性装のキャラクターが活躍するマンガ『リボンの騎士』や『ベルサイユのばら』など、現代でも人気のコンテンツが表現の場では生まれ続けていることが、7章「現代における異性装」からはうかがい知ることができる。
 展示風景より、濱谷浩《東京浅草 国際劇場 男装の麗人ターキー リハーサルの夜》(1938) 東京都江戸東京博物館
 展示風景より、左から手塚治虫『リボンの騎士』(少女クラブ版、1953〜56) 手塚プロダクション 、池田理代子ベルサイユのばら』 池田理代子プロダクション、江口寿史『ストップ!!ひばりくん!』 (1981〜83)
 8章「現代から未来へと続く異性装」では、これまでの歴史を踏まえて、異性装の未来を考えていくセクションとなる。現代アーティスト・森村泰昌の「女優シリーズ」作品やダムタイプの《S/N》記録映像が展示されており、異性装と密接に結びつくジェンダーセクシャリティに関する諸問題について考えさせられる。
 展示風景より、8章「現代から未来へと続く異性装」
 展示風景より、篠山紀信森村泰昌『デジャ=ヴュ』の眼》(1990) 作家蔵
 くわえて、グロリアス古橋悌二)、DJ Lala(山中透)、シモーヌ深雪らによって始められた、日本最初期のドラァグクイーンによるエンターテイメントダンスパーティー、"DIAMONDS ARE FOREVER"のメンバーによるインスタレーションも見ることができる。古いジェンダー観のままの地球を飛び出し、宇宙へ向かうといったコンセプトだ。
 展示風景より
 本展は、異性装に関する日本史をたどり、知ることで既存の「男」「女」という二項対立のジェンダー規範について改めて考えさせられるものだ。ぜひ現場へ足を運び、自身の頭でジェンダーの未来について考えるきっかけをつくってみてほしい。
 また、会場ロビーにはドラァグクイーンの写真パネルが設置されている。フラッシュを焚いて撮影すると変化が起こる仕様になっているため、こちらもぜひ試してみてほしい。
 2Fロビーの写真パネル
 Information
 装いの力ー異性装の日本史
 会期:2022年9月3日〜10月30日 ※会期中一部展示替えあり
 会場:渋谷区立松濤美術館
 住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
 電話番号:03-3465-9421
 開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00) ※入館は閉館時間の30分前まで
 休館日:月(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
 料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生・60歳以上 500円 / 小中学生 100円  ※土日祝、会期最終週は日時指定予約制。詳細は美術館HPにて公開。
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 Pen
 女装はいつから始まったのか?『装いの力―異性装の日本史』で考える多様な性の未来
Art 展覧会
 2022.09.13
 文・写真:はろるど
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 DIAMONDS ARE FOREVER『神々の黄昏』記念撮影パネル 本記念パネルは撮影OK。フラッシュをたくとドラァグクイーンたちの顔が浮かび上がる。
 男性が女性の服を着たり、女性が男性の服を着るなど、身にまとう衣服によって性の境界を越えようとする異性装。近年、多様な性について認め合おうとする動きが強まり、ファッションにおいてもジェンダーレスな服が流行。またクロスドレッサーとして、生物学的な性別と異なる衣服を身につける人に対しても理解が進んでいる。しかし男らしさ、女らしさという価値観が残っているように、依然として人間を性別によって区分する考えが根強いのも事実だ。そもそも異性装という言葉自体も、性の二項対立を前提としている。
 渋谷区立松濤美術館で開催中の『装いの力―異性装の日本史』では、日本の古代から現代までの異性装の歴史を、絵画や衣装、写真、映像、漫画といった作品を通して紹介している。はじまりは奈良時代に編纂された古事記だ。九州討伐を命じられたヤマトタケルは、髪をおろし、女性の衣服を身にまとうことで、警備の厳しい熊襲兄弟の宴に潜入し、気を許した隙をついて討伐に成功する。そして平安時代室町時代に成立した物語や御伽草子にも異性装の人物がたびたび登場。鎌倉時代の『石山寺縁起絵巻』にも女装した稚児が見られるなど、古くから異性装の文化が存在していたことが分かる。
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 三代・山川永徳斎日本武尊』 昭和時代初期(20世紀) 個人蔵 古事記日本書紀に伝わるヤマトタケルのエピソードは、日本最古の異性装の1つと言える。
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 能「巴」装束・面 国立能楽堂 能の「巴」は、鎌倉時代初期の女武者として戦場で活躍した巴御前を主人公とした演目。伝統的に男性の能役者が男装の麗人を演じるという、複層的な異性装の例として挙げられる。(前期展示)
 江戸時代においても男性の役者が女役をこなす野郎歌舞伎や、曲亭馬琴による『南総里見八犬伝』 といった読み物にも異性装が見られる。また祭礼でも男装の女芸者などが現れるが、明治時代に入ると一転し、異性装は西洋諸国に対して恥ずべき習慣と考えられるようになる。さらに違式詿違条例(いしきかいいじょうれい) が制定されると異性装そのものも禁止され、違反者が摘発されるなど刑罰の対象となった。同条例は8年間にて廃止されるが、新聞や雑誌の言説や、異性装を精神疾患とみなす当時の誤った西欧精神医学の導入などにより、 異性装を忌避する感情が一般化していく。ただそれでも少女歌劇の男役といった芸能における異性装の需要は失われなかった。
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 手前:田中千代『いかり肩スーツ』 昭和20(1945)年 渋谷ファッション&アート専門学校 19世紀の西洋において男性と女性の服は明確に区別されたが、20世紀になるとココ・シャネルらが男性服に使われていた素材を用いたスーツを制作するなど、性差を打破するようなデザインが生み出されていく。このスーツは戦後の洋裁ブームの立役者の1人である田中千代の作品。シンプルながらも洗練されたデザインが魅力だ。
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 左:森村泰昌『光るセルフポートレイト(女優)/バルドーとしての私』 平成8(1996)年 豊田市美術館 右:森村泰昌『光るセルフポートレイト(女優)/白いマリリン』 平成8(1996)年 作家蔵(豊田市美術館寄託)
 ラストは現代における異性装だ。舞台芸術から漫画、映画などに現れる異性装のキャラクターだけでなく、映画女優に扮した森村泰昌のセルフポートレートや、ダムタイプのパフォーマンス映像といった現代アートも紹介される。そしてダムタイプのメンバーの1人であり、グロリアスとして活動した古橋悌二が、DJ Lala(山中透)とシモーヌ深雪とともにはじめた“DIAMONDS ARE FOREVER”のメンバーによるインスタレーションも見どころだ。歌って踊るドラァグクイーンたちが古いジェンダー観の残る地球を捨て、宇宙へと自由に羽ばたいていく。教義上においてもタブーだった西洋とは異なり、日本における異性装の文化は意外にも多様だ。『装いの力―異性装の日本史』にて人々の生活と異性装の関わりを知りつつ、ジェンダーセクシュアリティの問題を踏まえながら、その未来のあり方を考えていきたい。
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 『装いの力―異性装の日本史』
 開催期間:2022年9月3日(土)~10月30日(日)
 ※前期:9月3日(土)~10月2日(日) 、後期:10月4日(火)~10月30日(日)
 開催場所:渋谷区立松濤美術館
 東京都渋谷区松濤2-14-14
 TEL:03-3465-9421
 開館時間:10時~18時(毎週金曜日は夜8時まで開館) ※入場は閉館の30分前まで。
 休館日:月(ただし9月19日、10月10日は除く)、9月20日、10月11日。
 入場料:一般¥1,000(税込)
※土・日曜日、祝日・最終週はオンラインでの日時指定予約制
 https://shoto-museum.jp
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