🏞83)─2─1815年4月5日 インドネシア・スンバワ島のタンボラ大噴火と火山の冬。コレラのパンデミック。イエローストン国立公園。~No.346No.347No.348 @ 

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 インドネシアのコンパス紙「火山の神への信仰は、宗教の違いをはるかに超えて、共通の強い力を持つ」
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 1815年4月5日 インドネシア・スンバワ島のタンボラ山が大噴火して、1200キロ離れたジャワ島のバタビア(現ジャカルタ)まで爆発音が届いた。
 標高約4000メートルであったが、噴火後は2580メートルとなり、直径約7キロ、深さ約1200メートルの大カルデラが出現した。
 バタビアにいたイギリス・ジャワ副総督ラッフルズは、各地からの報告をまとめて記録を残した。
 琵琶湖の水二杯分の噴出物が噴煙と共に吹き上げられ、噴煙は40キロを越えて成層圏にまで達した。
 巨大な火砕流は、麓まだ猛スピードで駆け下って海に流れ込むや大津波を引き起こし、その被害は約1万人であった。
 火山灰は、広範囲に降り積もって大地を覆って自然に大打撃を与え、農作物を枯らした。 その後、飢餓と疫病が発生して10万人以上が犠牲となった。
 成層圏に達した噴煙に含まれていた粉じんやガスが、太陽光を遮る「エーロゾル」を引き起こし、それが地球を漂いながら、世界を覆った。
 太陽光を遮ったエーロゾルが消滅するまで、数年間かかった。
 太陽光が弱まった為に、地球は急速に寒冷化して「火山の冬」訪れ、異常気象が大地を襲った。
 ヨーロッパは、この年の夏は雨が多い悪天候となり、翌16年の冬は近代史上最も寒い年となった。
 アメリ東海岸では、7月に雪が降り「夏のない年」として語り継がれた。
 寒冷化によって欧米で大凶作が発生して飢餓が起きるや、ヨーロッパからアメリカへの移民が増え、アメリ東海岸から西海岸へと「人の波」が押し寄せた。
 19世紀の欧米の異常は、タンボラ大噴火が原因であった。
 インドの風土病であったコレラが、天候不順で突然変異を起こし、人の移動に伴って地球上に広がって爆発的大流行となり、世界中で数百万人が犠牲となった。
 だが。火山噴火は、大被害をもたらすと同時に大いなる恩恵も与えてくれた。
 吹き上げられた噴煙に含まれたミネラルが、大地に降り注いで豊潤な土地を作り植物に恵みを与えた。
 インドネシアでは、豊作となり食糧に不安がなくなるや人口が増えた。
 ジャレド・ダイアモンドアメリカ生物地理学者)「インドネシアで米三期作ができ、多くの人口を養えるのは、火山の存在の御陰だ」
 ギレン・ダーシー・ウッド(環境史家)「火山噴火のような自然災害は、歴史研究ではずっと脇役扱いでした。人間の精神こそ歴史の中心にあり、自然は背景に過ぎない。そんな『人間中心主義』に支配されてきました。
 しかし、タンボラ噴火の影響を調べれば調べるほど、自然が歴史を動かしうるという確信を深めました。
 噴火の2ヶ月後、雨天が続いた事による作戦の失敗でナポレオンがワーテルローの戦いに敗北。戦乱が終わった後は冷夏で農作物がとれず食糧難になり、欧州に餓死者があふれます。被害の大きいスイスを中心に、穀物の輸出を禁じるなど保護主義的な政策が目立つようになりました。当時優勢になりつつあった『レッセ・フェール(自由放任主義)』の価値観が揺らいでいったのです。
 アイルランドなど寒冷化が激しかった土地から、北米大陸への移民が急増しました。米国内でも、中西部や西部の温暖な場所への移住者が馬車の列をなし、新たな居住地を見付けました。1819年の米国初の金融危機にも寒冷化が影響しました。
 19世紀を通じてコレラの犠牲になったのは数百万人。これが各国政府が公衆衛生に力を入れ、国際的に協力するキッカケにもなりかした。東日本大震災が日本に変化を促したように、自然災害は社会の変化を加速させる力があります。
 タンボラ噴火がなければシンガポールの繁栄はなかったでしょう。ラッフルズはジャワを植民地にすべきだと主張していましたが、噴火でジャワが荒廃し、新天地シンガポールに移ったのです。
 もし再びタンボラ級の噴火が起きれば、世界の食糧生産は数年間、3〜5割減る可能性があります。死者は数百万人に上るでしょう。極めて大きな被害があるのに、発生頻度あとても低い。こんな現象に対して、人間は上手く備える事が難しい生き物です。
 『たぶん直ぐには起きないが、被害は大きいので予算を下さない』という話しは現実には通じません。
 それでもタンボラの経験から、政府や家庭が食糧を数年分ためておく、主な火山の避難計画を作っておく、ぐらいは必要だと思います」
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 2015年現在。超巨大噴火で地球規模の自然災害を引き起こす危険性のある火山は、ワイオミング州などに広がるイエローストン国立公園であるといわれている。
 イエローストンは、210万年前、130万年前、64万年前と約70億年周期で超巨大噴火を繰り返している。
 ミチオ・カク(物理学者)「噴火したら、私たちが知っている合衆国はなくなる」
 ジェイコブ・ローエンスタン(米地質調査所・USGSの地質学者)「私たちは噴火を止められない。超巨大なら被害を和らげる事すら難しい。地球上のどこで起きようが、それは現代文明にとって大きな試練になるでしょう」
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 ジャレド・ダイアモンド『火山が文明を育んだ』「私は火山の厄災(やくさい)ではなく、人類にもたらした恩恵について話したいと思います。人類全体にとって、火山の噴火で被った被害よりも、利益が比べようもなく大きいからです。現代の日本が豊かで繁栄しているのも、また、はるか昔の縄文人の人々が驚くほど進んだ技術を持っていたのも、日本に火山がある事が大きな理由なのです。
 火山は溶岩や火山灰を噴き出す事によって、地球内部にある栄養分を地表に届け、土壌を若返らせます。なかでもリン酸塩、カリウム、ナトリウム、カルシウムが植物の成長には重要です。植物がよく育てば、それを食べる動物もたくさん生きられます。雨によって土壌から流れ出た養分は、川を通じて海にも注がれます。日本の近海が海藻や魚介類に満ちているのは、火山の御陰なのです。
 地球上には他に、土壌を豊かにする現象が二つあります。一つは氷河です。巨大な氷の塊が前後にズレて地表が磨り潰され、内側から養分が供給されます。米カンザス州など『小麦ベルト』と呼ばれる地帯がその例です。もう一つは地殻の隆起です。私の住むカリフォルニアのように、プレート同士がぶつかり合って山が盛り上がり、新たな土壌ができます。
 これら三つの中でも、火山は最も広がりがあります。火山が集まる、日本、インドネシア、イタリアなどは世界の他の地よりも農地の生産性が高いのです。
 日本の外交や政策について話す時、決まり文句は『日本には資源がない』です。確かに、石油も石炭も鉄も限られています。しかし産業革命より前に目を向けると、日本は資源小国などではありませんでした。江戸時代、200年以上続いた鎖国政策で、ほとんど資源を輸入せずに自給自足の経済を実現していました。火山がもたらした豊かな土壌、適度な降雨の御陰で、食料や材木など、生活に必要な物資の大半を手に入れていたのです。
 日本は国土が狭いうえ大半を山が占めているので、人が住み、農業を営める土地は限られています。それでも多くの人口を維持できたのは、火山が100以上も集中しているからです。
 もっと昔の縄文人達も、世界の狩猟採集民の中では特異な存在だったと言えます。獲物を追いかけて移動して回るのが普通なのに、縄文人は村々に定住し、狩猟採集民としては異例の人口密度を保っていました。一定の場所に留まっても、火山の御陰で野山や海で食料がたくさん採れたからです。
 そして、食べ物を加熱したり、木の実の灰汁(アク)を抜いたり、保管したりする為に縄文土器を発達させました。たいていの狩猟採集民は、頻繁な移動の邪魔になるのが重い土器など作りません。縄文文明は、人類でおそらく最も早期に土器を発達させた文明の一つです。
 日本とは全く対照的に、温帯でもっとも土壌が貧弱なのがオーストラリア大陸です。かって僅かに火山活動があった東海岸の一部を除けば、森林をいったん伐採してしまうと回復に非常に時間がかかります。土地を豊かにするには肥料を加えるしかありません。そのオーストリアから日本は材木や小麦が輸入されているのは皮肉な事です。
 もちろん、時に火山は脅威になります。噴火で大勢が命を失い、都市が埋まり、幾つかの文明も消えました。ポンペイに限らず、ギリシャクレタ島に栄えた古代ミノア文明は、サントリーニ島の噴火で弱体化し滅びました。南九州の初期縄文人も大噴火で全滅しました。どれも大変な悲劇です。
 しかしもっとも重要なのは、それは人類全体にとっては決定的な打撃にはならなかったという事です。それぞれの場所で見ても、イタリアもギリシャも、そして縄文人も、噴火の後に人が戻ってきているでしょう。その暮らしを支えたのもまた、火山です。だから、日本をはじめ火山が集中する地域の人達は、火山を呪ってばかりいない。火山の存在を有り難いと思っているのです」
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 石黒耀『神話の元は噴火だった』「古事記日本書紀には、火山噴火だと解釈すれば上手く説明できるストーリーが沢山あります。国産みの神イザナミは、岩や土、風、海といった神の兄弟として火の神カグツチを産み落として死にます。これは、火山噴火で日本の国土を創ったと考えれば納得いきます。
 記紀神話のモチーフは、阿蘇に伝わる神話と考えます。阿蘇カルデラには外輪が欠けている所があります。阿蘇神話は、主人公のタケイワタツノミコが蹴破って中の水を外に流し、勢い余ってひっくり返り、阿蘇五岳を造ったと伝えます。これは約1万年前に起きた地震・洪水を正確に描写しています。
 火山の神格化は、世界中でみられます。ハワイの女神ペレが西から島々を順に移動してきたとされるのも、地学的に正しい。一番東のハワイ島の噴火を見た彼らは、西側の島々が一直線に並んでいる事や、岩の質が同じ事に気付いた。そこから想像力を膨らませたのでしょう。自然の摂理である『神』の正体を、見事に捉えていたのです。
 人々が火山に神を見るのは、火山が人類を作ったからではないでしょうか。アフリカ東部を南北に貫く大地溝帯で人類がサルから枝分かれしたのは、火山活動と深く関わっていたと私は見ています。一部の集団は温泉や熱気で食料を加熱して食べる事を覚えました。生よりも栄養を取りやすく、殺菌もできるため健康・長寿になっていったと考えます。石器に使える岩も、乾季にも湧く水も、豊かな生態系も、火山にはあります。大地溝帯が火山でなければ、人類は進化できたでしょうか。
 私自身は無宗教です。それでも『神』としか言いようのない自然の持つ力は、東日本大震災を経験してもなお、十分に理解されていないと感じます。火砕流が襲ってくるような場所で原発を運転しよとする。地震の巣のような東京に、あらゆる機能を集中させる。私には、『神の道』に外れた事だと思えるのです」
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 巽(たつみ)好幸(神戸大学教授)『変動続ける大地ニッポン』「日本に火山が集まっているのも、地震が多いのも、4枚のプレートが集中しているからです。特に太平洋プレートは沈み込みが速く、マグマが大量にできる。噴火したマグマが積み重なるだけでなく、噴火しなかったマグマも地下で冷えて固まり、地殻が盛り上がる事によって、山がちな地形ができたのです。
 急峻な地形のせいで、川は速く流れて海に注ぐ。途中でカルシウムやマグネシウムを含む時間がなく、水は軟水になります。昆布やカツオのダシは軟水だと旨味成分を引き出しやすい。和食の発達は、火山が多い事と関係があります。欧州では川がゆっくり流れて硬水になり、獣肉食に相性が良いのです。
 ……火山活動は、昔から当たり前のように繰り返されてきた事です。火山は何時噴いてもおかしくない。九州で超巨大カルデラ噴火が起きたら、日本の存続すら危ういでしょう。その認識を持って、火山と向き合っていかなければならないのです」
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山岡耕春(名古屋大学教授)「気候が寒冷化して地球的に食糧が不足する。巨大噴火で経済的にも打撃を受ける日本が食糧を買うのは難しくなるだろう」
 日本国内で巨大噴火などの自然大災害が起きれば、政府は機能停止し救援及び復興は不可能となる。
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 最悪、日本国内で生活できなくなる可能性がある為に、海外脱出に備えて英語を勉強し、円の暴落に備えて外貨か金(金塊・金貨)を蓄えるべきだと言われている。
 日本から逃げ出す為の、英会話教育と財テクである。
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 2015年9月14日 阿蘇山噴火。
 日本の火山は活発化し、地震が頻発している。












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