🏕8)9)─1─大災害と人間心理。バイアスの危険性。励ましと慰めの対応マニュアル。~No.13No.14No.15No.16 @

人は皆「自分だけは死なない」と思っている -防災オンチの日本人-

人は皆「自分だけは死なない」と思っている -防災オンチの日本人-

  • 作者:山村 武彦
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2005/03/02
  • メディア: 単行本
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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 日本は、自然災害多発地帯で、自然災害空間に支配されている。
 日本人の脳は、本来、危機意識が高い自然災害対応脳であった。
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 自然災害空間と人災空間が人格形成・性格形成に強い影響を与えている。
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 人災犠牲者には動的で、科学的、合理的、論理的(西洋)、観念的(中華)に洗練された。
 天災被災者には静的で、神秘的、情緒的、無常観、現実的に泥臭い。
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 日本人の精神力は、長い民族の歴史空間と多発する自然災害の現実時間で鍛えられ、柔軟性に富み、復元力があり、わりかしとしぶとい。
 日本人の精神力を支えてきたのは、日本天皇の祈りである。
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 磯田道史「日本人は、蟻の気持ちになって考えるような自然万物一体の思想を持ちやすい」
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 2017年9月7日 朝日新聞「科学 ユリイカ
 震災経験した若者は
 震災を経験した若者は、他人を助けたり、他人の役に立ったりする仕事を志すようになる。テレビドラマなどで目にするような物語が、現実に多くの人の身の上で起きているようだ。米バージニア大の大石繁宏教授らの研究チームが論文をまとめ、専門誌に発表した。
 大石さんらは消防士や幼稚園の先生など『人助け』の度合いが強いと考えられる3種類について、応募状況の推移を調べた。1992年の阪神大震災で被災した神戸市など関西の5都市では、応募人数が震災後に以前の約3倍になったのに対し、被災していない東京都町田市など関東の4都市では2倍程度。競争倍率の上昇も関西のほうが顕著だった。
 また、全国の1,500人にアンケートを実施。東日本大震災など94年以降に国内で起きた7地震の経験者は医療や教育、警察などの職業についていた人が10%いたのに対し、未経験の人では6.5%だった。
 研究チームは『自然災害は人々の価値観を自分中心から他人思いに変え、社会構造にも変化をもたらす』と分析している。(小宮山亮麿)」
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 手塚昌明「(日本の好きなところは)人のせいにしない国民性ですかね。いろいろなことがあっても、日本ってまず自分の行いを振り返って少しでも自分に非があったり、悪いことがあると反省するでしょう。それって、外交的はつけ込まれやすいし私たちの弱点にもなるだけれど、人をおもんばかることができて人の痛みが分かる国民なんだと思うんですね。どことは言いませんが何でも人のせいにする国ってありますよね。世界では自分が謝ったら負けだという考えが常にあって、外国人って自分に非があってもまず謝らない事が多いと思います。世界がそうした考え方で回っているということはよくわかってなければならないですが、といって日本人からそうした美徳がなくなってほしいとは思いません。決して人のせいにしないという日本人の精神性は断然大事にすべきだと思っているのです」(2017年10月号『正論』)
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 9月23日・30日号 週刊現代「大災害と人間心理
 いざというとき、人はどう動くか
 ……
 その心理、専門的にはこう言います
 ・正常性バイアス‥危機なことに遭遇したにもかならず、それを『危険ではない』と捉えてしまう心理傾向を『正常性バイアス』という。人は日常生活をスムーズにかつ平穏に行おうとするために、身の回りで起こる出来事すべてに一つ一つ反応をするのは難しいと考える。そのため、多少の危険や異常であれば正常の範囲内のものとして扱ってしまう。
 ・集団同調性バイアス‥ 人は危機的状況に陥るとき、過去様々な局面で繰り返してきたパターンに沿って行動する。だが、どうして良いか分からない場合は、周囲の人の行動を探りながら自分も同じ行動をとったほうが安全だと考える。これを『集団同調性バイアス』と呼ぶ。『協調』を重んじる傾向にある日本人は、とくにこのバイアスがきわけて強いとされている。
 ・同化性バイアス‥地震や交通事故などの突然訪れる危機に、人は防衛の心理が働いて緊急対応する。一方、津波や台風、放射能汚染といった緩やかな時間の中で悪化していく危険には、人は鈍感になりやすく、認知や予測が遅れてしまう傾向にある。これを『同化性バイアス』と呼び、上記の正常性バイアスと結び付き、より強く働かせる作用がある。
 ・凍りつき現象‥災害に直面したら、人はパニックに陥り大慌てする──この考は実はデタラメで、実際にはショック状態に陥り、茫然として何もできない人が被災者の8割にも及ぶ。これが『凍りつき現象』で、右の図にあるように、心の活動性は身体の活動性とは真逆の動きを示しており、災害発生直後はほとんど機能しない。
 ・楽観的無防備‥『楽しいはずの状況では、ネガティブなことが起こるわけがない』という心理作用を、『楽観的無防備』という。つまり、旅行を楽しんでいる人は、自分の楽しい時間を脅かす災害のような悪い情報を自動的に、かつ無意識に排除してしまうのだ。加えて、その状況がグループなどの集団である場合、さらに心理作用が悪化してしまう危険もある。
 ・ベテランズ・バイアス‥被災経験が豊富な人は、新たな災害に直面した時、過去の経験を生かして行動するのが合理的だと考える。しかし時として、不測の事態に陥った場合に経験が判断を誤らせてしまって思わぬ惨事を招くことも少なくない。地震や台風を頻繁に経験している日本人は、特にこうした『ベテランズ・バイアス』による事故が少なくないとされる。
 『災害心理学』とは 広瀬弘忠氏
 災害時、逃げ遅れて亡くなった人のニュースを見て、なぜもっと素早く行動に移さないのか、防災対策はとらなかったのか、と不思議に思った経験はないのでしょうか。
 理由は一つ、現代人は安全に慣れて危険に鈍感になり、予期せぬ事態に対応できないからです。既存の防災マニュアルも、個別のケースやこうした人間の心理状態について考慮していません。
 ここ10年の日本の大災害を振り返っても、厳重な防波堤など津波の耐性があったはずの三陸地域で津波被害が深刻になった東日本大震災、2度の大地震が襲った熊本地震、近年頻発する大規模な豪雨被害など、そのどれも経験則にあてはまらないものばかりです。
 本当の災害から身を守るためには、人間は災害に直面したとき、どんな行動をとってしまうのか、その心のメカニズムを理解する必要があります。これが『災害心理学』なのです。例えば『自分だけ逃げるのは、卑怯』という考えが災害時ですら起こるのは、『集団同調性バイアス』という言葉で解釈できる。いかに人々が正確な判断をできていないか分かりますよね。
 災害では、『自分の身は、自分で守る』に尽きます。危機意識を正しく持てる人だけが、生き残ることができるんです」
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 2017年11月30日号 週刊新潮「生き抜くヒント! 五木寛之
 人を励ますということ
 たまたまテレビをつけたら、癌に関する特集をやっていた。
 なにげなく見ているうちに、つい最後まで仕事を脇においてつきあってしまう。やはり健康の問題はいくつになっても気になるものなのだ。
 そのなかの、実際に癌を抱えた患者さんの声で、すこぶる反省させられる発言があった。
 どんなに心のこもった励ましでも、ときにむなしく感じられることがあるというのだ。
 実際に癌とたたかっている人、または癌を克服した人の言葉は身にしみて嬉しく心強い。
 しかし、そうでない人や健康な人の声は、いまひとつ本当に励まされるところがない、というのである。
 なるほど、たしかにそうだろうなあ、と深くうなずくところがあった。
 苦しい体験をし、それを乗りこえてきた人の言葉には、おのずからある重みがある。たとえ無器用な励ましかたであったとしても、受けるほうとしては戦友に似た共感の回路が存在するからだ。
 人を励ますということは、簡単なことではない。がんばれ、とは言わないように、と、最近の励ましマニュアルでは教えるようだ。がんばりましょうね、と言うように指導するらしい。
 悲嘆にくれている人を励ますのは大事なことだ。グリーフ・ケアという活動の重要さは、最近ますます注目を集めている。
 仏教とは何か、と質問すれば、一般には、智恵と慈悲の教えです、という答えが返ってくる。
 智恵とは天地万物の真理、人間生死の真実を知ることだろう。そして慈悲とは、慈アンド悲、の合成語だと説明される。慈はマイトリー。悲はカルナー。中国人は造語の天才だから、その2つを合わせて慈悲という見事な言葉を作った。
 この慈悲という表現が、わが国で俗に情けをかけること、というように変容した。
 『お代官さま、お慈悲でごぜえますだ』
 などと時代劇で農民が土下座して懇願したりする。
 励ましの効用
 しかし本来は、慈は慈、悲は悲、方向は一緒でも内容は歴然とちがうらしい。
 慈、すなわちマイトリーは、私の勝手な解釈では、友愛とか、仲間意識とかいったものだろう。アメリカでアフリカ系の人びとが『ブラザー!』と呼びあうようなものである。今ふうに言えばヒューマニズムと訳してもさしつかえあるまい。明るく前向きの姿勢だ。
 これに対して悲、カルナーというのは、痛みを共有する無言の感情である。
 おおざっぱに言うと、慈は励ましで、悲は慰めということではあるまいか。
 悲しみにくれ、打ちひしがれている人に対して『がんばれ!』と力強く励ますことは大事なことだ。もう駄目だ、と道ばたに座りこんでいる人に対して、『さあ、起ち上ろう。そこまで行けば船が待っているよ。この肩につかまって一緒に歩こう』と励ませば、それにこたえて起ち上り歩きだす人もいるかもしれない、励ましの効用というものだ。
 しかし、世の中には励まされてもどうしようもないという局面も、ないわけではない。さまざまな心の葛藤を経て、窮極の事態を迎えいた人に対して、『残酷』なアピールではないだろうか。
 相手の痛みを半分せおってでもいいと決意したとしても、苦しみや痛みは、しょせん個人その人だけのものである。いかなる善意からであっても分けてもらえるものではない。
 そういう場面に直面し、励ますおのれの無力さを思い知らされた者が、思わず知らずにもらす『ああ』というため息が、悲というものの実体ではあるまいか。
 そこでできることは、ただ黙ってそばにいることぐらいだろう。
 被災地のマニュアル
 悲という字の非は、一説に鳥の翼が左右に分かれた形であると聞いたことがある。心が2つに引き裂かされた状態のことらしい。
 被災地の人びとの心を支えようと、善意の人びとがボランティアに出かけていく。励ましのマニュアルを持参する場合もあるという。そこには、どこまでも聞き手に徹することが指示されていて、安易に『がんばりましょう』などと励ますべきではない、固くいましめられているのだそうだ。
 その指導は正しい。ところで、ある若者から聞いたのだが、ふつう被災して悲嘆にくれている人たちは、口数が少ないのが自然である。その重い口を開かせて、思いのたけを語ってもらおうと苦心しても、そうなかなかうまくいくものではない。
 そこで話を引きだそうと、いろいろ善意の質問をする。すると、ときには警戒されたり、うるさがられたりすることもあるらしい。当然のことだ。疲れきって避難しているときには、身の上話などする元気もないだろう。
 『根ほり葉ほりいろんなことを聞くんだもの、気味悪くて』
 と、後で話していた人もいたらしい。
 人を励ますというのは、むずかしいことである。心のケアなどということは、一朝一夕に学べるものでもない。
 『自分も癌を抱えているか、癌を体験したことのある人の言葉でないと、いまひとつ心に響かない』
 という患者さんの声が今も耳に残って離れない」


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 自然災害空間と人災空間の最大の違いは、「怒り」の表現にる。
 人災空間では、人への「怒り」は増幅され、心に忌まわしい傷痕を刻み、性格を憎悪で捻曲げ、人格を陰険に変貌させる。
 人災空間の「怒り」は、消える事もなく残り、癒やされる事のない復讐心は対象相手「人」が死に絶えるまで報復を求め続ける。
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 日本列島は、人災空間より自然災害空間が濃い。
 中国大陸や朝鮮半島は、人災空間の方が自然災害空間よりも濃い。
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 日本で、世界の常識のような暴動や騒動が起き辛いのもこのせいである。
 日本人と中国人・韓国人・朝鮮人が、幾ら話し合っても分かり合えないのはこの為でもある。
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 キリスト教マルクス主義共産主義は、自然災害空間よりも人災空間に適した、宗教であり、哲学・思想・主義である。




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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2015/07/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)