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政府が行う官製のクール・ジャパンは多額の税金を投じたが失敗に終わった。
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2023年12月14日 YAHOO!JAPANニュース FRIDAY「「中国・韓国」に完敗か…「マリオ・ポケモン」を生んだ日本のゲーム業界を衰退させた背景にあるもの
ハロウィンのコスプレイベントでは、『原神』のキャラクターが大人気だった
コロナ禍の「巣ごもり需要」で世界的に成長したゲーム産業。昨今は中国のゲームメーカーの台頭が目覚ましい。米国の調査会社センサータワーが今年10月の世界モバイルゲームパブリッシャー売上高ランキングの上位100社を発表。
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トップ3は騰訊(テンセント)、網易(ネットイース)、米哈遊(miHoYo)と中国企業が占めた。上海に本社を置く米哈遊(miHoYo)は非上場企業で公開される情報が少ないが、ヒット作の『原神』は発売開始後の2年で37億ドル(約5600億円)を稼いだ、という推計もある。
先日のハロウィンやゲームショウでのコスプレでも中国の『原神』『崩壊:スターレイル』、韓国の『NIKKE』のキャラが人気で、日本のゲームキャラで仮装する人が減っていることがSNSで話題となった。和製ゲームが世界を席巻したのは今は昔の話なのだろうか。
「国の支援体制の違い」
立命館大学映像学部教授の細井浩一氏(65)は端的にそう語り、こう続ける。
「韓国には、コンテンツ振興院という政府系機関があり、ゲーム、音楽、ファッション、アニメなどエンタメ産業の人材育成や海外進出、金融支援と官民が一体となっています。’99年にゲーム総合支援センターという政府系機関ができ、その初代所長の金東絋(キム・ドンヒョン)さんは『韓国が国際社会で生き残るためゲーム産業に投資を』と金大中(キム・デジュン)大統領に直談判をして予算を取っています。
’01年、視察に行きましたが、ソウル市内のビルに中小のゲームパブリッシャーを集め、それぞれの会社ではなく、韓国全体の統一のロゴとブランド名で世界に送り出すという支援をしていました。スタジオ中には最新鋭の機器が揃っており、各企業は、世界のユーザーに遊んでもらえるゲームを作り出すために努力し、ゲーム産業の国際競争力強化のために国が後押しする姿に驚愕しました。
中国はお国柄、実質的な官民一体で、外貨が稼げると判断できれば国も支援を惜しみません。私は『コンテンツ魔法陣』と呼んでいますが、例えば、中国である漫画がヒットすれば、すぐに映画にもゲームにもなる仕組み作りができています。チープな作りではなくその世界観をしっかりと理解したものが短い時間で作り出せ、他メディアへとどんどん循環していく速度にも驚きました」
そのような状況とは対照的に、日本では民間企業任せの状態だ。ヒット作品を他メディアに展開させるノウハウはあるが、各社が行い、そのスキルは外にまず漏れない。横断的な取り組みをベンチャー企業が担おうとするも、大手企業はその流れに乗ろうとしない。韓国のように政府系機関が音頭をとって官民一体で海外進出を狙う動きは乏しいと言わざるを得ない。
分岐点、と細井教授は指摘し、こう語る。
「日本にはまだ過去の優れた作品が残され、そのアドバンテージがある間に構造改革を行うべき。ポケモンやスーパーマリオは世界でヒットしています。しかし、中国や韓国のコンテンツが台頭し、世代が変わった時、日本発のコンテンツがランキングに入らなくなっているかもしれない。
いま何とかしないといけないタイミングなのですが、日本は国内市場がそこそこあり、スマホゲームが一つ当たれば、『ガチャ』と呼ばれる課金のシステムもあり、数年間は収益が出ます。しかし、予想を超えるスピードの少子化で国内市場は急速に縮んでいきます。
当たったゲームだけでなく、過去の資産として眠っている良質なコンテンツを、海外のようにスマートに映画やドラマ、小説、漫画へと循環していけば、大きな収益も生まれ、何より多分野で新しい人材が育っていくんですが…」
世界のゲーム市場で日本のシェアは年々下がっている。細井教授によれば「単純な推計は困難であるが」とした上で、’01年は35%のシェアを誇ったが、’14年19,3%、’22年13.4%に減少している。
世界を席巻した日本のアニメもNetflixなどの表現の自由度が高く、資金豊富な米国企業に国内の優秀な人材が流れている。国内の優秀な人材が外資に移ると、海外メーカーはさらに繁栄する。反対に国内では人材が枯渇し、負のスパイラルは進んでいく。
「ゲームアーカイブの保存環境の整備・推進は不可欠です。例えば、ファミコンのソフトは約1200種類ありますが、アメリカやヨーロッパ、韓国の研究機関ではファミコンを含む大量のゲーム資料が収集・保管され、充実したコレクションを有する所蔵館も存在しています。一方の日本では、国立国会図書館や一部の大学、民間機関で収集・保管されていますが、いずれも小規模で運営に課題を抱えている状況です。 ファミコンについては、日本中を熱狂させただけあり、1200種類の中に遊びのアイデアや面白さのアイデアが網羅的にあるんです。
日本のコンテンツには埋もれた資産がたくさんあります。日の目を見ずに埋もれてしまった作品の中にも小さな種がたくさん宿っています。戦略を練って、アーカイブから学び、国際的に通用するコンテンツや人材の育成の場とすることを始めるべき」(細井教授)
国内市場が縮み、海外展開に生き残りをかけるゲーム産業。ちなみに「ポケモンGO」はジョン・ハンケを代表とする米国のベンチャー企業ナイアンティックが開発したもので、日本発ではない。‛15年、ジョン・ハンケCEOは細井教授の所属する立命館大学が主催したカンファレンスで講演を行っている。
「無精髭で、ラフなTシャツ姿で京都に来られました。ジョン・ハンケCEOはファミコンの生みの親で、当時、立命館大学で教鞭をとられていた上村雅之教授(故人)に会うとイノベーター(変革者)同士で分かりあうことがあるようで、とても嬉しそうでした。
米哈遊(miHoYo)の『原神』は日本ゲームの影響を強く受けている。’00年以降、『青少年に悪影響を及ぼす』として、中国国内では13年間にわたって家庭用ゲーム機は禁止とされてきました。それでも中国に人たちは、厳しい規制をくぐり抜け、『紅白機(ホンパイチー)』と呼ばれるファミコン互換機で遊んでいました。
日本の蒔いたゲームの種が世界のクリエーターや消費者に深く、長い刺激を与えています。しかし、発信源の日本ではいまだに『子どものオモチャ』と目されているのではないでしょうか」(細井教授)
カルチャーという言葉には耕す、という意味もあると指摘する。受け継がれてきたアドバンテージがある今、次代の人材を発掘し、育成する最後のチャンスの時でないか。
取材・文:岩崎 大輔
FRIDAYデジタル
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