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2023年11月3日 MicrosoftStartニュース マグミクス「コロコロ変わった怪獣王「ゴジラ」の立ち位置 悪役から正義の味方、そして「神」へ?
加々美利治
1954年の映画『ゴジラ』DVD(東宝)
© マグミクス 提供
最初は敵役だった怪獣王ゴジラ
ゴジラシリーズ最新作『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』が、2023年11月3日にいよいよ公開されます。前作にあたる『シン・ゴジラ』(2016年)から7年ぶりということで、公開を待ち望んでいた人も多いことと思います。そこで、誕生から69年におよぶ「ゴジラ」の歴史について振り返ってみましょう。
【画像】どうしたの? ヒーローと握手する「ゴジラ」も イメージを変えた歴代作品たち(6枚)
最初の映画『ゴジラ』が公開されたのは1954年11月3日。実はこの日に全国同時公開されたわけではなく、地方によって公開日は異なるのですが、公式ではこの日に認定されています。そのため、2017年には11月3日は「ゴジラの日」と、一般社団法人・日本記念日協会が認定、登録しました。
日本特撮作品の第一号とも言うべき『ゴジラ』(1954年)は、その後の作品に与えた影響も大きく、作品を未見の人でもオマージュされたシーンなどを見たことがあるかもしれません。それほどまで多くの作品に影響を与えた偉大な作品です。
この第1作では怪獣がゴジラしか出ませんが、第2作となった『ゴジラの逆襲』(1955年)で、後に相棒となる怪獣アンギラスが登場しました。このアンギラスの登場により、ゴジラ映画はこれ以降、怪獣と戦うスタイルがメインとなっていきます。
そして第3作『キングコング対ゴジラ』(1962年)で初のカラー作品となりました。そして第4作『モスラ対ゴジラ』(1964年)へと続きます。お気づきの人も多いでしょうが、この2作はゴジラの名前が先に来ない作品でした。
当時のゴジラは悪役、敵役のイメージが強く、あくまでも人類の脅威という描かれ方をしていたと思います。このイメージが変わったのが第5作『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)からでしょうか。ここで初めてゴジラは善玉としてモスラとラドンと協力し、宇宙から来た大怪獣キングギドラとの戦いに臨みました。
この作品の成功が約1年後にTV放映を開始する『ウルトラQ』へと続き、第一次怪獣ブームとなります。そう考えると、悪役だったゴジラがベビーフェイスに転向する展開は必然だったと言えるかもしれません。
その後、TVでのウルトラシリーズが終了してもゴジラ映画はコンスタントに製作され続けましたが、興行成績の下降は抑えきれず、『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(1969年)から、複数の作品をまとめて上映する形式の「東宝チャンピオンまつり」の一角となります。
しかし、この「東宝チャンピオンまつり」でのゴジラ映画は、『メカゴジラの逆襲』(1975年)で幕を閉じました。ゴジラ映画史上ワーストとなる観客動員数だったことが原因だったそうです。
これには当時の世相も関係するかもしれません。復活を遂げたウルトラシリーズの2期も終わり、子供たちの興味は特撮ヒーローよりもアニメ作品である『マジンガーZ』をはじめとする巨大ロボットものに以降していった時期でした。
関連するビデオ: 【ゴジラ-1.0】浜辺美波、歴代ゴジラと本作ゴジラの違いを明かす!『ゴジラ-1.0』初日舞台あいさつ (シネマトゥデイ)
こうしてゴジラはふたたび永い眠りにつくことになります。
時代に寄り添って姿を変えていったゴジラ像
このゴジラが復活することになったのが、第16作にあたる『ゴジラ』(1984年)です。ゴジラ誕生30周年記念映画でもありました。この頃の空気感は、筆者は今でも覚えています。ゴジラ復活の機運は公開の数年前からありました。それが製作側とファンの両方で盛り上がり、復活したというわけです。
アニメが『宇宙戦艦ヤマト』から『機動戦士ガンダム』のブームで、子供だけでなく中高生やさらにその上の年代まで楽しめる存在となったのが80年代以降でした。その影響もあって、特撮にもそれまで大人になったことで「卒業」していた世代がファン活動を続けるようになったのも、この頃だったと思います。そういった相乗効果がゴジラ復活を後押ししたのでしょう。
それゆえに復活したゴジラはそれまでと違うテイストとなります。アニメが大人の鑑賞に堪えられるようリアルになったように、ゴジラもそれまで以上にリアルな世界観の作品となりました。
84年版は54年版と同じくゴジラ単体での映画となっています。内容も54年版をあえてなぞらえて製作しているところもありました。しかし、よりち密に精査された部分も多く、当時の水準として、極めてリアルな怪獣映画に仕上がっています。
また、ゴジラの立ち位置も「東宝チャンピオンまつり」の頃でなく、初代に寄せた人類の脅威という原点に回帰しました。むしろそれ以上の存在、大自然の代弁者のように神格化していったのは、この作品以降だったかもしれません。
この84年版が好評だったことから、ゴジラは「VSシリーズ」と呼ばれる作品群へと続くことになりました。その最大の特徴は、それまでのゴジラシリーズと違って歴史がつながっている点です。そのため、『ゴジラvsビオランテ』(1989年)で初登場した超能力少女・三枝未希(演:小高恵美さん)がレギュラーとして出演していました。
「VSシリーズ」は興行成績も良かったため、発展的解消として一度シリーズを終了して、「平成モスラシリーズ」にバトンタッチします。このゴジラ空白期にハリウッドで制作されたのが『GODZILLA』(1998年)で、日本のゴジラとは大きく異なった解釈に困惑したファンも多い作品です。
当初は21世紀になってから「新ゴジラシリーズ」をスタートする予定でしたが、「平成モスラシリーズ」の不振から前倒しとなり、『ゴジラ2000 ミレニアム』(1999年)が制作されました。これ以降のシリーズは「ミレニアムシリーズ」と呼ばれるようになります。
この「ミレニアムシリーズ」の最後となったのが『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)。多くの怪獣が登場したお祭り映画で、ファンの評価も分かれた異色作でした。本作はゴジラ生誕50周年記念作品で、ゴジラシリーズの最終作と言われています。往年のミニチュアや着ぐるみを多用した東宝特撮としては確かに最後かもしれません。
その後に『シン・ゴジラ』、今回の『ゴジラ-1.0』と続きます。この他にもハリウッド制作の「モンスターバースシリーズ」やアニメ版など、多くのゴジラ作品が制作されました。もはやゴジラは、ミニチュアや着ぐるみで制作されるだけでなく、さまざまなジャンルで活躍するコンテンツとなったのでしょう。
そして世代によってもゴジラに抱く思いは大きく違うのではないでしょうか? みなさんの抱くゴジラ像はどんなものですか?
(加々美利治)
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11月3日 YAHOO!JAPANニュース 映画.com「【「ゴジラ-1.0」評論】異例ずくめのゴジラは「山崎戦記映画」として高精度な着地を遂げる!
「ゴジラ-1.0」
「山崎貴、やりおったわ!!」というのが、終映後に自然と口を衝いて出た称賛だ。正直、レジェンダリーの米「GODZILLA ゴジラ」(2014)そして庵野秀明が主導した「シン・ゴジラ」(2016)を経た後では、同フランチャイズに表現の余白など残っていないのでは―? そんな懸念を一蹴する重量感に満ちた手応えを、この最新作は自分にもたらしたのだ。
前回から約7年ぶりとなる久々の和製実写ゴジラ長編は、戦後の混乱期に物語の足場を置き、日本が防衛において丸裸な状況下、核が生んだ巨大怪獣の本土上陸を迎えるというバッドテイストを描いている。製作時より遥か以前を主舞台とするシリーズ希有な試みであり、また「シン・ゴジラ」がパーソナルな人間ドラマを排し、未曾有の危機にひたすら対処していく群像シミュレーションだったのとは異なり、ゴジラと戦うことで人生の負い目を払拭しようと立ち上がる帰還兵(神木隆之介)の葛藤がドラマの導管となっている。
しかもタイトルキャラクターのプロダクションデザインは「ALWAYS 続・三丁目の夕日」(2007)のアヴァンタイトルやライド・アトラクション「ゴジラ・ザ・ライド」など、監督自身がこれまでに傍系の領域で手がけたプロトタイプを進化させるという、独自の開発手順を踏んでいる。こうしたゴジラの常道を逸れ、またどの過去作とも距離を置く異端性も、冒頭の「やりおったわ!!」にリバーブをかけるのである。
だが対照的に、山崎貴作品としてはため息が出るほどの精度で軌道に沿ったものだ。「三丁目の夕日」トリロジーで見せた昭和期のランドスケープ再現力を筆頭に、「永遠の0」(2013)で厭戦と使命のアンビバレントに苛まれる主人公像や、「アルキメデスの大戦」(2019)で習熟を得たCGIの海域表現など、自身が培ってきた方法論と技術的な達成の基に今作は成り立っている。そういう意味で異例ずくめのゴジラは、「山崎戦記映画」の理想的な着地を遂げたと断じて過言ではない。
なにより監督がキャリアを通じて取り組んできた「家族の物語」として、このゴジラ映画はホットな集大成にあたるだろう。これは広い層に支持を得てきた大衆作家ならではの、誇るべき到達点だ。しかも最初の「ゴジラ」(1954)が特殊効果の世界的なレベルに至ったように、ハリウッドに真っ向から挑んで引けをとらない、VFXのハイクオリティにも息を呑む。次のゴジラ映画に挑む者よ、飛び超えるべきバーはより高く掲げられたと覚悟するがいい。
(尾崎一男)
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