💖39)─2─日本人はほかの国の人に比べて「他人を“信頼”する」のが苦手。〜No.164 

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 2023年2月3日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「日本人、じつは「他人を“信頼”する」のが、ほかの国の人に比べてめっぽう苦手だった…!
 田中 世紀 の意見 
 「日本人は集団主義だ」「日本の会社は個人主義的でなく、お互いに助け合う雰囲気がある」
 〔PHOTO〕iStock
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 こうしたイメージを持っている人は少なくないかもしれません。
 小泉八雲の筆名で知られる作家、ラフカディオ・ハーンも、明治時代の日本社会を見て、この国の人々には「相手をすぐに思いやる察しのよさ」があるという言葉を書き残しています。
 しかし、本当にそうなのでしょうか?
 日本人は「人を信頼する」ことをどう考えているのか、オランダのフローニンゲン大学の助教授である田中世紀さんの著書『やさしくない国ニッポンの政治経済学 日本人は困っている人を助けないのか』を抜粋、編集してお送りします。
 幻想としての「思いやりの国ニッポン」
 ラフカディオ・ハーンの言うように明治期の日本が思いやりに溢れていて、他人の幸福が自分の幸福につながると考えている社会だったのだとしたら、どうして今日の日本は「思いやりのない」社会になってしまったのだろうか。
 考えられる一つの仮説は、実はハーンの見ていた「思いやりの国ニッポン」は幻想だった、というものだろう。何らかの要因のせいで明治期の日本人は他人を思いやる「ふり」をしていたのであり、今の日本人と本質的には変わりはない、という主張である。荒唐無稽な仮説のように聞こえるかもしれないが、これにはそれなりのロジックと経験的証拠がある。
 この仮説の基本的なロジックは、社会心理学者である山岸俊男の『安心社会から信頼社会へ』に依拠している。まずは山岸らの研究グループの主張の元になっている日米比較調査を紹介しよう。その調査によれば、「たいていの人は信頼できると思いますか、それとも用心することにこしたことはないと思いますか?」という質問に「たいていの人は信頼できる」と答えたのは、日本では26%、アメリカでは47%だった。
 同調査には「他人を助ける」ということに直接的に関係している質問として、「たいていの人は、他人の役に立とうとしていると思いますか、それとも、自分のことだけに気をくばっていると思いますか?」というものもあるが、それに対して「他人の役に立とうとしている」と答えたのは、アメリカでは47%だったのに対して、日本では19%だった。
 「信頼」とは何か
 多様な人種、民族で構成され、人種差別が根深いアメリカでは、他者への信頼が低く、所得の再分配についての合意形成がしにくい、という研究結果が多く存在する。そのアメリカ人よりも日本人のほうが他者を信頼しないというのは、にわかには信じがたいが、山岸らの研究グループは、同調査だけではなく、さまざまなデータを使って、日本はお互いを信頼しない社会だと主張する——なぜだろうか?
 山岸によれば、社会には相手の本当の意図についての情報(例えば、相手が嘘をついているかどうかについての情報)が不足している状態が存在する。これを「社会的不確実性が存在している状態」(同書、五九頁)という。
 そこで「信頼」という概念が出てくる。信頼は、社会的不確実性が存在しているにもかかわらず、相手の人間性ゆえに(相手をよい人だと思うから)、また相手との関係性において、相手が自分に対してそんなにひどいことはしないだろう、と考えることである。
 その上で、日本人が他人を信頼して(いるように見えて)、他人と協力するのは、例えば江戸時代の制度で言えば五人組など、ルールから逸脱することに対する相互監視と制裁という社会を支える制度があるからである。言い換えれば、相手が自分を騙したり、自分に対して悪いことをしないだろうという考えを、相互監視と制裁の社会制度が担保しているのである。
 逆に、相互監視と制裁がない状態では、日本人は日本人同士で信頼し合えない。また、相互監視と制裁の社会制度がない状態では、多くの日本人は助け合いを促す社会的圧力がないため、先述の日米比較調査の結果のとおり「たいていの人は、他人の役に立とうとしておらず、自分のことだけに気を配っている」という考えをもつことになる。
 きわめて個人主義的だと見られるアメリカ人に対して、日本人は集団主義に基づいて行動する、と言われることがある。しかし、ここでも山岸の主張からすれば、日本人は自発的に集団主義的に行動しているわけではない。むしろ、集団主義を担保する社会制度が存在しないところでは、日本人はアメリカ人以上に個人主義的に行動するのだという。
 これは複数の既存研究を検討した高野陽太郎と纓坂英子による「集団主義の日本人と個人主義アメリカ人」という通説には確たる証拠がないという分析とも整合的である。
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