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2022年9月26日 MicrosoftNews AERA dot.「旧統一教会に対する「解散請求」にそそり立つ壁 なぜ反社会的な団体を解散できないのか?
9月16日、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が都内で集会を開いた(撮影/米倉昭仁)© AERA dot. 提供 9月16日、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が都内で集会を開いた(撮影/米倉昭仁)
9月16日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による被害の救済と根絶に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が東京都内で集会を開催し、問題解決に向けた声明を発表した。旧統一教会に家庭を破壊され、恨みを募らせた山上徹也容疑者が安倍晋三元首相を射殺してから2カ月以上が経過。オンラインを含めた集会には弁護士や牧師、僧侶、報道関係者のほか、約20人の国会議員が参加した。声明には教団への解散請求を含めたさまざまな対策が盛り込まれたが、課題も浮き彫りになった。
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「旧統一教会の解散を実現しなければならない。それが無理であれば、教団の活動を規制するガイドラインをつくって政令で明示するなど、実現可能な何らかの結果を出さなければならない。そのためには今の状況のなかでできることを最大限にやる。今日集まった弁護士は全員、同じ気持ちだと思います」
こう語ったのは全国弁連の代表世話人である山口広弁護士。ときに声を荒らげながら、「時間的な余裕はない」と、焦りをにじませた。
世間では旧統一教会に対する強い批判の声が上がっている。だが、世論は移ろいやすい。30年前もそうだった。
■“嵐”が過ぎ去るのを待っている
1992年、韓国で行われた統一教会の合同結婚式に桜田淳子らが参加したことが大きな話題となった。しかし、高額な献金や信教の自由の侵害など、問題の本質に目が向けられることはほとんどなく、以後、「空白の30年」が続いた。
「旧統一教会は今、ひたすら身をかがめて嵐が過ぎ去るのを待っていますよ。教団とつながりの深い自民党もそうでしょう。残念ながら、今回の騒ぎも30年前と同様に半年もすれば終わると思います。そうしたらまた元に戻る。私たちの活動は焼け石に水ですよ」
脱会信者らの支援活動を続けてきた竹迫之(たけさこ・いたる)牧師は、以前の取材で、そう苦々しく語っていた。
いまも「彼ら(旧統一教会信者)との関係を悪化させたくない」と、筆者に語る議員もいる。旧統一教会と一部政治家は持ちつ持たれつの便利な存在なのだ。
■解散請求に不可欠な調査
宗教法人法では、法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為などがあった場合、裁判所は所轄庁などの請求を受け、解散を命令できる。
全国弁連はこの解散請求を旧統一教会対策の本丸と位置づける。
「長年にわたりこれほど経済的、精神的に被害を生じさせてきた団体に対して『解散できない』というのは明らかにおかしい。それは広く国民のみなさまにおいてもご賛同いただけるものと考えております」
と、井筒大介弁護士は訴える。
一方、川井康雄弁護士は解散請求について「現時点の材料で認められると、安易に考えているわけではない」と言う。
いったい欠けているのは、何か?
旧統一教会が宗教法人であることを隠した伝道活動の違法性が認められているが、「そのような活動が全国47都道府県で行われているという裏づけが必要です」(川井弁護士)。
さらに重要なのは資金の流れの解明という。
「旧統一教会が毎年提出している財産目録や収支計算書が本当に実際の献金どおりに記載されているのか。そこに虚偽があれば宗教法人として罰則が科せられます。さらに関連会社などにおける事業収益で脱税が行われていないか、お金の流れを明らかにすることが大切です」(同)
だが、当然のことながら、弁護士には捜査権がない。国が調査に乗り出さなければ証拠は集まらない。
さらに山口弁護士は別なハードルを挙げる。
「旧統一教会に対して解散請求を不用意に行えば宗教界は総反発するでしょう。解散請求は決して宗教界全体におよぶものではなく、霊感商法的な行き過ぎた活動に対するものですと、きちんと説明して、ご理解いただく努力が必要だと思います」
■現実的な消費者庁との連携
宗教法人の所轄庁は文部科学大臣である。しかし、これまでの経験から「文科省を動かすのは極めて難しい」と山口弁護士は実感する。解散請求に向けて時間を費やしている間に国民の関心が薄れてしまえば、国は動かないだろう。そのため、全国弁連内部ではさまざまな議論が飛び交っているという。
そんななか、山口弁護士が期待を寄せるのは、消費者庁のフットワークの良さだ。実際、同庁では「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が開かれている。この検討会について川井弁護士は「議論は非常にありがたいことです」と述べ、消費者保護の観点から全国弁連内部で主に三つの法令について議論していることを明かした。消費者契約法(消契法)または特定商取引法(特商法)の改正、もしくは新法の立ち上げである。
ただ、いずれの案にしても旧統一教会の霊感商法をどのように法律のなかに盛り込むかが大きな課題となる。
旧統一教会は正体を隠して伝道を行い、相手を知らず知らずのうちに教義を疑わない“かたい信者”にしたところで高額な物品を売りつける。集会の会場に展示された『天聖経』は430万円。『聖本』にいたっては3千万円。代金は「献金」として教団に渡される。商取引ではないので領収書は発行されない。さらに信者には被害者であるという意識もない。
「このような献金被害を消契法あるいは特商法で規定するのは本当に難しい。新法をつくるとしてもどういう規定にするのか。旧統一教会が組織的に被害者の信教の自由を奪い、財産権を侵害していることは明らかですから、私は解散請求で対応することが一番いいと思っています」(川井弁護士)
■日本はカルトの吹きだまり
一方、阿部克臣弁護士は「消契法や特商法を使いやすいように改正すれば、さまざまなカルトと戦う『武器』が増える」と、メリットを挙げ、こう続けた。
「いま、日本は世界中から有象無象のカルトが集まる、まるでカルトの吹きだまりのような状況になっている」
日本脱カルト協会の代表理事を務めた故・高橋紳吾さんによると、1970年代、欧州では日本と同様、旧統一教会の活動が猛威を振るった。その後、EC(ヨーロッパ共同体)や加盟諸国は次々とカルト対策を打ち出し、旧統一教会はほぼ撤退した。
「一方、日本は1995年にオウム真理教による無差別殺人事件という甚大な被害を経験した国であるにもかかわらず、カルトについての抜本的な解決策を見いだせないまま今日にいたっています。旧統一教会による被害も根絶されないままです」(阿部弁護士)
なぜ、日本ではカルト対策がほとんど打ち出されてこなかったのか。前述の山口弁護士は、こう説明する。
「神道と結びついた戦前の宗教行政の反省に立って、行政が宗教界に干渉することはよくないこととされてきました。しかしながら、旧統一教会による多大な被害が長年続いてきた現実があります。さらにこれまで細々と看板を掲げてきたさまざまなカルトの“メシア”たちがウェブ社会になってからインターネットを通じて信者を増やしている。それをめぐるトラブルの相談が最近とても増えています。本当にこの機会に宗教行政を根本から問い直さなければダメだと思います」
■カルト問題は宗教問題か
ちなみに、カルト対策の先進国、フランスの反セクト(カルト)法は教義の内容には踏み込まない。個々の教団の活動によって生じた被害のみを問題としてとらえる。カルト問題は宗教問題ではない、という姿勢を明確にしている。
「反セクト法を日本に直輸入するわけにはいきませんが、示唆に富むものだと感じています」(山口弁護士)
安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけにして30年ぶりに浮上した旧統一教会問題。5年後、10年後、結局何も変わらなかった、としてはならない。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)」
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