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カルト宗教と反宗教無神論・反天皇反民族反日本的左派系過激派の最終目的は似ているが、似ていないのは信者・同調者、献金者・寄進者を集め無差別テロリスト・自爆テロリストを生み出せるかどうかである。
そこが、宗教とイデオロギーの違いである。
ただし、人類史的なホロコーストを起こすのは宗教ではなくイデオロギーである。
その証拠が、ナチス・ドイツのヒトラーであり、ソ連(ロシア)のレーニン、トロツキー、スターリンであり、中国共産党の毛沢東であった。宗教には彼らのような人殺しを好み血に飢えた大虐殺魔は存在しない。
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2022年9月15日 MicrosoftNews AERA dot.「青山学院大の宗教部長が語る「カルト」と「健全な宗教」の違いとは
© AERA dot. 提供 青山学院大学宗教部長の塩谷直也さん(撮影/國府田英之)
安倍晋三元首相の銃撃死亡事件で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に焦点が当たり、再び「カルト宗教」が注目を集めている。「信教の自由」が認められているこの日本で、健全な宗教とカルトと呼ばれる宗教や危険な宗教との違いはどこにあるのか。キリスト教の牧師を経て、現在は青山学院大で宗教部長を務める塩谷直也さん(法学部教授)に見解を聞いた。
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――日本国憲法の19、20条では「思想・良心の自由」「信教の自由」が保証されています。
塩谷さん:「イワシの頭も信心から」ということわざがあります。信仰心が深いと、どのようなものでも尊く思えてしまうという意味ですね。同じように、信じる対象が非合理であっても、それ自体になんら問題はありません。
――その自由がある中で、健全な宗教と危険な宗教との違いはどこにあるのでしょうか。青山学院大は、ホームページで旧統一教会などを名指しして勧誘被害にあわないように注意喚起しています。
塩谷さん:明らかな人権侵害をしているかどうか、だと考えます。最も分かりやすいのが「結婚の自由」の侵害でしょう。旧統一教会の合同結婚式など、その最たる例と言えます。また、正体を隠しての勧誘もそうです。宗教だと名乗らず、サークルやボランティア、今注目されているSDGsなど、入り口を魅力的に偽装して、興味を持って入ってきたターゲットと人間関係を作り上げていく。輪の中に入り込み、もう引くことができないという状況を作ってから宗教色を出し始め、取り込んでいきます。このやり方は明らかな自己決定権の侵害に当たり、詐欺と同じ行為です。
――AERA dot.の取材でも、いわゆる「カルト宗教」がSDGsやボランティア、サークルなどに偽装して勧誘する手口が明らかになっています。ただ、一般的にはカルトとされていない大きな宗教団体の信者にも、素性を名乗らずに勧誘している人はいます。
塩谷さん:正体隠しの勧誘は、あってはなりません。健全な団体なら、最初に何者かを名乗りますよね。宗教に限らず、当たり前のコミュニケーションのあり方です。現代における宗教は、きっちり名乗ったうえで、勧誘したとしても相手の選択権を尊重し、さらに入退会を自由にする。そうした透明性が大切だと思います。もちろん、例えば友人に、「ちょっと話を聞いてよ」などと言って、後から自分の信仰について話す信者がいる可能性は否定できません。ただ、相手の選択権は奪ってはいけない。嫌だ、興味がない、とはっきり言える権利は守る。それが健全な宗教のあり方です。
――危険な宗教の特徴として「マインドコントロール」が指摘されていますが、神を信じることとマインドコントロールは何が違うのでしょうか。
塩谷さん:健全な宗教は、その人の考える力を奪いません。むしろ、その力を与え、考えることを放棄させないのです。逆に、マインドコントロールなどによって考える力を奪うのが危険な宗教のやり口です。ここはまったく違います。キリスト教で言えば、健全なキリスト教は「聖書の神様はこう言っているけど、あなたはどう思いますか?」という問いかけがあります。神と対話し続ける、いわば「悩む力を与える」のです。
一方、危険な宗教団体はどうですか。抱えている悩みや苦しみに対し、ご先祖の問題が今のあなたに影響を与えているなど根拠のない答えを示したり、世界の終わりがやってくると明言し、恐怖心でその人の心を支配しますよね。閉ざされた世界を作り、そこには「カリスマ」が必ずいて、「正しいことをしているのに迫害されている」などとありもしない話で被害者意識を作り上げる。そこにハマってしまうと、考える力を宗教に預けるようになり、その人の頭は、鋼鉄のヘルメットが覆っているような状態になってしまい、やがてそのヘルメットによって「組織の教え」以外の考えをすべて跳ね返し、否定するようになります。考える力を奪うということは、きわめて犯罪的な行為だと思います。
――信仰の薄い人から見れば「そんなバカな」ということを本気で信じていますよね。
塩谷さん:私がかつて関わった、20歳で旧統一教会に入り40代で脱会した女性は「体は40代になったけど、精神は20歳のままなんですよね」と話していました。カルト宗教が、その人の考える力を奪い続けたという表れですよね。信仰とは、その人が主体的に何を信じるかであって、信じ込ませることではないのです。
――なぜ、カルトや危険な宗教にはまってしまう人が後を絶たないのでしょうか。
塩谷さん:危険な宗教の特徴として、二分法を用いるという点があります。この世界を「正しい世界」と「間違った世界」だったり、「善人」と「悪人」に分ける。性格が真面目で「正しい人」や「善人」でありたい人、正解を求めてしまいがちな人は狙われやすい。カルトはその人の不安をいかにも理解したように装って安心させ、取り込んでいく。そして自分は「正しいことをやっている」と信じさせて、今度は勧誘する側に取り込む。そうなると彼ら・彼女らは一生懸命勧誘(伝道活動)を始めます。基本、真面目な人が多いからです。
――とはいえ、赤の他人に近い人が話すことを、疑いもせずに「正解」「正しい」と思ってしまうものでしょうか。
塩谷さん:勧誘・接触の中で、個人情報を吸い取っているから、それが可能になるのです。何回か集会に行くうちに突然「偉い先生」が現れる。そして今の状況や心理状態をズバリ言い当てるので、「ご先祖が~」などという荒唐無稽な話でも、悩みや苦しみを抱えている人にはストンと落ちてしまうのです。また、危険な宗教の中には「この世の終わり」をしばしば持ち出す団体がありますが、それは信者が人生を諦めて献金してくれるから。お金を集めたいから言っているだけなのです。組織の上に行くと、そうした集金システムが見えてくる。そこではっと気が付いて脱会できるかどうかが鍵です。
――旧統一教会は身を滅ぼすような高額の献金が問題視されています。ただ、寄付や献金は健全な宗教でもあります。どう違うのですか。
塩谷さん:おっしゃるように、どの宗教も寄付や献金はあります。何が違うのかを分かりやすく例えると、大学の卒業生が大学に寄付をするとしたら、「その学校に通ったことへの感謝」「学校が好きだから」といった前向きな気持ちがあると思います。健全な宗教への寄付や献金も、それと似ています。
一方で危険な宗教団体は、恐怖心や不安をあおってその人の考える力を奪い、その不安の解消のために多額の献金や物品の購入を迫ります。健全な宗教の愛は「無償の愛」ですが、危険な宗教は「見返りを求める愛」なのです。お金を出してこれを買えば、あなたも家族も、ご先祖も救われると。教えが本物なら、「押し売り」は必要ありません。偽物だから、なんだかんだと理屈をつけて押し売りするしかないのです。
――そもそも「ご先祖が~」などという教えは、キリスト教に基づくものなのでしょうか。先祖を気にするのは日本独特の文化のようにも思えるのですが。
塩谷さん:聖書の教えからは完全に逸脱しています。一神教であるキリスト教は「一人一人を神様が作った」という考え方です。その人に起こることはその人だけのもので、それは罪であっても、その人だけのもの。「ご先祖が~」と語ること自体が、あり得ないことです。旧統一教会の教義書である『原理講論』と聖書はまったく別物だということは知ってほしいと思います。集金目的のために、ご先祖を大切にするという日本人の心情を、巧妙に利用しているだけなのです。
――これだけ世間から批判を受けて問題視されても、危険な宗教団体がなくならないのはなぜでしょうか。
塩谷さん:被害者意識が植えつけられているので、批判を「迫害」ととらえ、結束がより強固になります。今の旧統一教会もそうした状況でしょう。安倍元首相の国葬も、旧統一教会に勢いを与えると思います。「国葬されるほどの人と、私たちは関係していた。やはり私たちは正しかったんだ」と。抜本的な解決策はありません。山上徹也容疑者がその一人ですが、困窮する二世、三世をどう救っていくのか。それを考えなければならない時期が来ていると感じています。(構成/AERA dot.編集部・國府田英之)
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9月16日 YAHOO!JAPANニュース集「かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点
「法の華」のシンボル・天声大門の解体(2001年10月、静岡県富士市 写真:毎日新聞社/アフロ)
旧統一教会をめぐる問題はいまなお議論されており、同教団に対する宗教法人の解散命令を要望する声もある。実際、過去に社会的な問題を起こしたことで裁判所から解散命令が出された団体はある。オウム真理教と明覚寺だ。また、法の華三法行にも検討されていた。オウムを除く2団体はどんな組織で、なぜ解散命令が出されたり、検討されたりしたのか。当時の関係者に尋ねた。(ジャーナリスト・森健/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
4泊5日の「生きざま修行」
1990年代に出された福永法源による本より(撮影:森健)
あの時のことは振り返りたくないのが正直なところです──。埼玉県に住む吉田登美子さん(75・仮名)は小さな声で言う。言葉を選んで語るのは、かつて「法の華三法行(さんぽうぎょう)」という宗教団体に多額のお金を注ぎ込んでしまったときのことだ。
「総額で言うと、800万円くらいです。当時子どものためにためていた定期預金も解約して、(教団に)入れました。そのせいで夫や子どもたちと大変もめました……」
きっかけは1994年半ば、書店で見つけた本だった。福永法源という人物が書いた本には、天行力でどんな病気でも治ると書かれていた。その当時、吉田さんは毛髪が抜ける症状に悩んでいた。本に挟まれていたハガキを送ると、すぐに教団から電話がかかってきた。
指定された施設に行くと、天仕(てんじ)という出家信者に部屋に通され、足の裏を見せるように言われた。部屋の足裏診断士の女性は、吉田さんの足の裏を数分間眺めると、修行をつめば毛髪の減少など簡単に治ると断言した。だが、続けて「もっと重要な問題がある」と強い調子で言われた。
「先祖に悪い霊があり、それがあなたの人生に影響を及ぼしていると。また、このまま放っておくと、2人の子どもや夫もがんなどの病気になると言われたのです。恐ろしくなりました」
その日は8万円あまりを支払った。だが、数週間後に設定された修行は、そんな額ではすまなかった。静岡県富士市の教団本部で4泊5日、225万円。さすがに高いと吉田さんは思ったが、「いまやらなければどんどん悪くなる、死ぬ可能性も高い」と迫られ、応じてしまった。
数週間後、4泊5日の「生きざま修行」に参加した。道場には数百人の参加者がいた。吉田さんは、あれはつらかったけれど充実感もあったと振り返った。
「修行中は『健康にあふれた毎日です』など、大声で言い続けます。水も飲めません。気を抜くと、天仕が来て大声で叱られる。頭がボーッとして、倒れました。最後の一昼夜は眠れませんでした」
ところが、極限まで追い込まれた状況で、最後に教祖の福永法源から励まされると、「ものすごく解放された」気持ちになったという。涙を流し、充実した気持ちが溢れた。この体験が強く残り、2回目、3回目の修行にも参加した。
かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点
吉田家が紛糾したのは、4回目の修行に入金したあとだった。積み立て型定期預金500万円を吉田さんが引き出していたことに夫が気づき、吉田さんを問い詰めた。預金は、大学進学を控える長男の学費のためにためてきたものだった。夫、長女、長男も呆れ、吉田さんと大喧嘩となった。だが、その時の吉田さんには大学よりもはるかに大事だと思えたという。
「がんになったら終わり。命あっての物種です。だから、私は家族を助けるつもりで法の華に入れていたんです」
夫や子どもたちには詐欺にしか思えなかった。吉田さんは3人に責められ、また、多くの金を注ぎ込んでしまったことの自責の念で、その後数年間、心身のバランスを崩してしまったという。
解散命令前に破産した法の華
客寄せのため、福永法源の本は無料で配られていたことがある(撮影:森健)
法の華三法行が宗教法人として静岡県から認証されたのは1987年。福永だけが聞くという「天声」や、相手の足の裏から人生や悩みを読み解くという「足裏診断」などの方法で活動を始めた。町中では広告のチラシを配り、書籍も販売。福永自身も積極的にメディアに出て悩む人たちの心を捉えた。教団に連絡してきた相手には、がんなどの病気のおそれを迫るなどして、高額な支払いに追い込んでいた。
釜井英法弁護士(撮影:森健)
前述の「修行」のほか、「右脳塾」が380万円以上、福永法源の手形の額縁(解脱法納)で1000万円……。1996年秋、東京の弁護士が中心になって「法の華被害110番」を実施すると、被害は全国に広がっていることが判明。法の華被害対策弁護団が結成された。1996年末から、法の華への返還請求の民事訴訟が全国各地で起きた。
同弁護団の事務局長だった釜井英法弁護士は、被害者1人につき平均500万円ほどの被害があったと振り返る。
「率直に言って、彼らは宗教とはほど遠い団体でした。『足裏診断』は『足裏を見たら、まず『このままだとガンになるよ!』など第一声を吐いてびっくりさせる』というようなマニュアルができていた。お金だけが目的で、教義らしきものもない。心理的に追い込まれてお金を払った人たちは、病気も治らないし、何も変わらない。後で気づいて訴訟に乗り出すことになったのです」
民事訴訟の原告は全国9地裁で約1200人まで増え、損害賠償の請求額は総額約69億円にのぼった。ただし、警察庁によると、実際の被害者数は約2万2千人(教団発表の信者数は10万人)で、被害総額は950億円とされるなど莫大だった。刑事事件にも発展した。1999年12月、警視庁と静岡県警は東京や静岡など教団施設を強制捜査。2000年5月以降、教祖の福永ほか幹部陣が詐欺容疑で逮捕された。その直前の4月には、福岡地裁で初の民事の判決がなされ、原告側の全面勝利となった。
こうした民事・刑事の訴訟を受け、文化庁では2000年9月の宗教法人審議会で、法の華への解散命令が議論になった。同審議会で宗務課長は、1999年12月の強制捜査やその後の15人の起訴に言及し、公判の状況を見極めながら、<できるだけ速やかに法務省等関係機関との協議を引き続き進めていきたい>と述べている。
だが、実際には解散命令請求には至らなかった。なぜか。請求を出す前に、教団そのものが破産してしまったからだ。釜井弁護士が言う。
「債権者であるわれわれ弁護団は、(民事裁判後に)損害賠償請求額を確保しなければいけない。一方、法の華側がこちらの請求額を支払えるか疑わしい状況も見えてきた。そこで、東京地裁に法の華の破産申し立てをしたのです。同時に、預貯金、不動産などの保全処分をし、法の華に売却させないようにした。その結果、債務超過になるとわかり、裁判所は2001年3月29日、法の華に対して破産宣告を下した。破産宣告は宗教法人法43条2項3号により宗教法人の解散事由になっているため、文化庁が解散命令請求を出す前に、法の華は解散に至ったのです」
重要なのは、この一連の裁判で教義などの宗教性についてはまったく問題になっていないことだという。
「裁判で問うていたのは、『病気が治る』や『足裏診断』など弱みに乗じて、高額のお金を騙し取る詐欺行為であったこと。そこにはマニュアルがあるなど組織的な活動もあった。何を信じるかという、憲法で保障する『信教の自由』に触れるような論点はありませんでした」
解散命令の要件は
宗教法人法第81条は解散命令について(撮影:森健)
宗教法人法81条1項は解散命令について記している。一つでも該当する要件があると認められたときは、所轄庁や検察官などによる請求、もしくは職権で解散を命じることができる。その要件で重要なのが1号だ。
<法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと>
この要件が最初に適用されたのが、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教だ。1996年1月に最高裁で解散命令が確定。同年3月に東京地裁が教団に破産を宣告した。
ただ、このオウム事件と同時期、信者を騙して高額なお金を集めていた団体が複数あった。その一つが法の華であり、もう一つが明覚寺(みょうかくじ)だ。明覚寺には2002年1月、オウムに続いて解散命令が出された。
「水子の霊」で女性狙った明覚寺
明覚寺の以前に詐欺商法が繰り返された茨城県の本覚寺(撮影:金井茂)
明覚寺の霊視商法被害者弁護団で事務局長だった瀬戸和宏弁護士が言う。
「宗教は本来、人を幸せにするべきものだと思います。しかし、明覚寺がやっていたことは、ひたすら人を脅かし、お金を巻き上げ、人を不幸にさせることでした。民事だけでなく、詐欺の刑事事件でも立件され、幹部らは実刑判決となりました」
明覚寺事件には前段がある。本覚寺という名での事件だ。
教団トップの男は1982年にコンドームの訪問販売の会社を起こしたのち、1986年に真言宗醍醐派で僧籍を取得。翌年、茨城県に本覚寺を設立すると、同派から独立。首都圏各地のビルで霊視商法を展開しはじめた。1991年頃から首都圏の消費者センターに多数の苦情が寄せられるようになり、1992年に弁護団が結成。不法行為を理由に損害賠償請求訴訟が提起されていった。
1995年までの第5次訴訟で、被害額の96%の賠償を受ける和解が成立した。にもかかわらず、問題は一向に減らなかった。なぜなら別の名称の寺院が1992年以降につくられ、そちらで全国展開されていたからだ。そんな寺の一つが、和歌山県の明覚寺だった。
これはいまの旧統一教会の名称変更問題とも関連すると瀬戸氏は指摘する。
「1992年頃、週刊誌や新聞が追及キャンペーンを張り、本覚寺の名称は知られるようになりました。そこで、教団は新しい名の寺を複数つくり、そちらで活動していった。本覚寺から命源寺、そして明覚寺、あるいは満願寺。折り込みチラシも運命鑑定など表記を変えた。名称変更があると、それまでの問題とは別物だと誤解してしまうのです」
活動の内容は、法の華と非常に似ている。
<あらゆる悩みを解決します><霊障による苦しみや悩みを霊視によって原因を究明します>などと記した新聞の折り込み広告などで宣伝。問い合わせてきた人を「寺」と称するビルの一室などに勧誘し、やってくると「教師」という名の霊能者とされる人物が“霊視”を行い、「水子の祟り」「先祖霊の祟り」などと脅かす。その上で、供養しなければ「子どもが自殺する」「夫が交通事故に遭う」「結婚できない」など不幸を並べたて、供養に多額のお金を支払わせた。その額は少ない人で60万円、多い人では数千万円に及んでいた。
明覚寺は女性を多くターゲットにしていた。それは水子や先祖という話でつけこみやすかったからだと瀬戸氏は言う。
「先祖を何代も遡れば、誰だって水子もいるし、悪い病気や死もある。当たり前の話です。けれど、暗い部屋で逃げられないような状況で『お金と子どもとどちらが大切か』といった迫り方をされ、多くの人が支払いに追い込まれていた。これには組織的なマニュアルがありました」
事態は警察の摘発で動いた。1995年10月、愛知県警が詐欺の疑いで名古屋の満願寺の住職を逮捕。さらに、翌年には教団トップらも詐欺の疑いで逮捕され、実刑判決を受けた。民事でも1999年4月、和解金11億円を支払うことで、明覚寺側は被害者と和解した。
明覚寺に地裁が解散命令
瀬戸氏は、宗教であろうがなかろうが、社会通念から見て許容する範囲を逸脱した行為があれば違法だと言う。
「裁判では、お金を収奪するのにマニュアルがあるなど組織的な活動があったことやその金額の多寡にも焦点が当てられていました。宗教への寄付の要請はあると思いますが、その要請がいくら高くてもいいとはならないでしょう。社会通念から逸脱していた活動だったので、明覚寺は違法性が認定されたのです」
こうした経緯を経て、文化庁によって明覚寺に対する和歌山地裁への解散命令請求が出されたのは1999年12月。実際に地裁が解散命令を出したのは約2年後のことだった。
違法とされた統一教会の勧誘
文化庁(写真:西村尚己/アフロ)
2019年6月に施行された改正消費者契約法では、「不安をあおったり、霊感などを持ち出されたりした霊感商法的な契約や取引は取り消すことができる」という条件が第4条で付け加えられた。
だが、霊感商法に対する判例は、法の華やオウム、明覚寺などより早くに出ている。1994年5月27日に福岡地裁で言い渡された統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の判決だ。判決は統一教会への献金勧誘行為は<社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱する勧誘行為であり、違法である>と断じている。
では、法の華や明覚寺はなぜ解散を検討されたのか。
解散命令が検討された1999~2000年当時、文化庁宗務課長だった戸渡速志・国立大学協会事務局長は、両団体の活動が宗教活動を装ったただの金集めだったことが大きいと振り返る。
オウム真理教(写真:ロイター/アフロ)
「たとえば、願をかけて、お賽銭を出すのは日常的にあることです。でも、例えば、掛け軸に800万円、祈祷に1000万円という多額のお金を自発的に出すでしょうか。両団体の被害者は、団体のマニュアルでそう仕向けられていただけです。そこに違法性を見たからこそ、警察の捜査が入ったのだと思います」
両団体の解散命令請求について、新旧さまざまな法人の代表者が参加する宗教法人審議会でも異論はなかったという。
「みなさん、法の華と明覚寺については宗教法人法81条第1項第1号に違反しているという認識があったのだと思います。解散命令請求にまで至ったのは、民事だけではなく、刑事事件として捜査機関によって違法性の事実認定がなされていたことが大きかったと思います」
では、かつて旧統一教会が問題になったとき解散命令が請求されなかったのはなぜなのか。戸渡氏は自身が宗務課にいたときには議題に上らなかったとしたうえで、やはり刑事事件の有無が関係するのではないかと言う。
「いったん公的に認証された宗教法人に対して、国(裁判所)が解散を命じ、法人格を奪うことは簡単なことではありません。私が(宗務課に)いた頃はオウムの事件後で宗教法人に対して厳しい空気があり、それが影響したのも確か。それ以前は、文化庁の解散命令請求はなかった。もしいま解散を論じるとすれば、違法性のある行為をどれだけ認定できるかになるのではないかと思います」
法の華と統一教会の共通点
(photoAC)
法の華と争った前出の釜井弁護士は、過去に霊感商法などで多くの被害が認定されてきた旧統一教会が解散命令を請求されなかったのは違和感を拭えないと言う。法の華も旧統一教会も執拗な勧誘と高価な宗教グッズの販売などで、多数の「信者」に多額の経済的被害とそれに伴う精神的損害を与えたという点では同様だった。また、法の華の当時の東京の本部拠点は、渋谷の旧統一教会のすぐ近くに設置していたほどだった。
「その法の華では幹部が実刑になり、解散にまで至った。なのに、旧統一教会は長く立件されず、生き残ってきた。これは、政治の力が働いたから以外には考えにくいです」
旧統一教会には2009年に警視庁の捜査が入り、印鑑販売をしていた関連会社などで幹部数人が実刑判決となった。裁判では<相当高度な組織性が認められる継続的犯行>と認定されたが、同会への解散命令請求にまでは至らなかった。
いま再び、旧統一教会に対して解散命令を求める声が上がっており、消費者庁では河野太郎消費者担当大臣のもと、霊感商法への新たな対策が講じられようとしている。今度はどこまで迫るのか。議論の行く末を国民が見守っている。
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森健(もり・けん) ジャーナリスト。
1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、総合誌の専属記者などを経て独立。『「つなみ」の子どもたち』で2012年に第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『小倉昌男 祈りと経営』で2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞、2017年に第48回大宅壮一ノンフィクション賞、ビジネス書大賞2017審査員特別賞受賞」
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