🎃2)─3─日本でカルト教団が生まれる背景に“日本人の宗教嫌い”が理由。~No.6 

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 2022年9月22日 MicrosoftNews SPA!カルト教団が生まれる背景に“日本人の宗教嫌い”。その理由は/僧侶・釈徹宗
 安倍元首相の銃撃事件で、旧統一教会の問題が表沙汰になり、同時に、家族がカルト的な性質をもつ宗教団体に入信してしまう問題も前景化した。そこで、カルト教団に巻き込まれない心がけや、家族がハマってしまった時の対処法を、宗教学者で僧侶の釈徹宗氏に聞いた。
 釈徹宗氏© 日刊SPA! 釈徹宗
◆家の宗教から個の宗教へ
――旧統一教会が最初に社会問題になったのは約30〜40年程前。この時代は日本の宗教を取り巻く環境は、どのような状況だったのですか?
 釈徹宗氏(以下、釈):日本の宗教状況の特徴として、どの家庭もいずれかの寺の檀家に入る寺請制度があり、「家の宗教」という考え方が、江戸時代に確立されました。これはヨーロッパに見られる、地域ごとに所属の教会がきまっている制度にも似ています。
 宗教は、地域共同体を確立するための結節点として、機能していたんです。今なお、うっすらとではありますが、続いていますね。
――今でも日本人は、無宗教を自称しながらも、家族が亡くなった時などは檀家になっているお寺に葬式を頼むのが「家の宗教」の名残の一つですね。
 釈:それが大きく変化したのが、ここ30〜40年です。核家族化が進むことで、家の宗教という概念が崩れ、ひとりひとりの信仰に基づいた「個人の宗教」が立ち上がってきます。
 家の宗教と個人の宗教のすき間、精神の空白地帯に、旧統一教会なども入り込んだ面はあるかもしれませんね。
カルト教団に騙されない宗教リテラシー
――現在、日本人の多くは「無宗教」を自称し、宗教に普段触れない生活が中心ですが、こうした状況はカルト教団の罠に付け込まれやすい部分なのでしょうか。
 釈:特定の教団を信仰していないという意味で言っている人が多いと思いますが、宗教的要素は人間の営みの中に必ず入っているものなので「宗教と関係ない」とは、誰も言い切れないんです。
 宗教全体と特定の団体の信仰を混同している人は、気をつけたほうがいいですね。日本人はこのことに無自覚な人が多いと思います。
――無自覚だと、どのように危険なのでしょうか。
 釈:宗教などの神秘的なものには魅力がありますが、副作用があることを知っておかないといけません。テレビなどで、スピリチュアルや心霊や占いなどを取り扱っていますが、不特定多数の人に神秘を煽るような、オカルト的なコンテンツ作りは注意が必要だと思います。
 副作用を意識せずに触れ続けていると、それに引っ張られる考え方になってしまうんですよ。
――単なる偶然でも、「霊の仕業だ!」などと勘違いする心の癖がつきそうですね。
 釈:カルト教団もそのことをよく知っていて、心霊ブームが起きるとそれに引っ掛けて罠を作ったりします。十数年前のスピリチュアルブームの時も、スピリチュアルの名の下に悪質なマインドコントロール事件や財産トラブルなどがありました。まあ、そういうのはいつの世にもあるのですが。
 この辺りは、伝統宗教をきちんと勉強すれば、気づくことができるようになります。宗教的要素は人間の営みに欠かせませんが、取扱注意であることは間違いありません。だから、宗教リテラシーが必要なんです。
――取扱注意だから触らないようにしているのが日本人ですね。宗教リテラシーを養うには、やはり勉強が必要ですか?
 釈:まずは自分の身の回りの観察です。家の近くの神社に改めて出かけたり、遊びとして出かけたお祭りがお寺の縁日なら、どんな意味があるのかを調べてみたりすることから始めると、日本人の宗教文化が見えてきて、自分の立ち位置も見えてくると思いますよ。
――そう考えると、宗教が身近にあるのに、日本人はその宗教性をスルーして暮らしていることに気がつけますね。
 釈:ゲームやアニメにも宗教的な要素がたくさん入っています。例えば、男女のストーリーに「生まれ変わり」という考え方が入っていたり、仏教やギリシャ神話が使われていたりするわけです。
◆日本人が知っておくべき宗教の“救いと毒”
 © 日刊SPA!
――宗教リテラシーが高まると、今回の問題に関してはどのように見えてくるのですか?
 釈:まず、宗教が社会とは別の価値基準で「救い」をもたらしていることがわかってきます。
 例えば、社会の一般的な価値では「今、笑っている者」「今、富める者」が幸せですよね。しかし、イエス・キリストは「今泣いているものが幸せである」と、全く逆の価値観を提示しました。浄土真宗の宗祖親鸞が「悪人こそが救われる」と言っているのも同様です。
――社会でうまくいかない人や、社会との価値観が合わない人にとっては救いになりますね。
 釈:これは、非社会性や脱社会性という考え方で宗教ならではの志向です。ただ、社会の価値とバッティングする危うさもあります。一方、旧統一教会などカルト的な性質を持っている教団がやっているのは、脱社会性じゃなくて反社会性を持った集団行動です。これも見分ける必要があります。
――宗教にあるのは、脱社会的な「思想」や「哲学」であるのに対し、旧統一教会などは反社会的な「手段」であることを切り分けて考えるのは重要ですね。
 釈:反社会的な手段で搾取する教団は、結局、金や権力を求めているので、社会の価値観にどっぷり浸かっているとも言えますね。「信仰」や「思想」は、信教の自由に含まれますが、反社会的な「手段」かどうかを切り分けて議論しなくてはいけませんね。
◆家族がカルトにハマったら
――それでも、カルト教団にハマってしまった人がいたら、周囲はどのように救えばよいのでしょうか。
 釈:多くの場合、家族の力が必要となります。しかし、マインドコントロールを解くのは専門家でなければ困難です。そういう教団は、脱会の動きへの対応も教え込みますからね。また、本人の信仰を無理やりに変更させていいのか、という問題もあります。
 それと家族がはまっていて、そこから抜け出せない人もいます。いわゆるカルト二世問題です。こちらもサポートが必要です。
――では、どのようにしたら良いのでしょう。
 釈:まずは被害者の会などへ相談されるのが良いかと思います。同じ問題を抱えた人たちが協力し合って、そこに訴訟やディプログラミング(マインドコントロールを解くメソッド)の専門家が関わり、場合によってはメディアの力を借りるなどの方策があります。
◆日本の政教分離は特殊
 © 日刊SPA!
――今回の件で、政治家と旧統一教会との関係がいくつも取り沙汰された時「知らなかった」と釈明する議員がかなり多くいました。
 釈:日本の政治家の、宗教への見識のなさに愕然としています。宗教を甘く見てますし、宗教リテラシーも身についていないのではないでしょうか。そもそも宗教というのは取り扱い注意案件なんですよ。畏敬の態度と心が重要です。単に宗教を利用しようとして、甘く見ていると、ひどい目に遭います。
――「政教分離」の原則にも反していますね。
 釈:実は「政教分離」の運用は、国によってかなり異なっていて、日本は結構特殊なんです。
――どのように特殊なんですか?
 釈:今の日本の政教分離は、第二次世界大戦後につくられました。その際の重要な論点は、「国家神道対策」だったんです。GHQが「日本がこれほど暴走してしまった原因には、国家神道が政治や教育に強く影響していたからである」と考えたんです。
 そこで、教育や政治はもちろん、公の場から国家神道を徹底的に排除します。それだけではなく、宗教すべてを極端に排除したんです。
 世界で初めて政教分離を始めたのはアメリカなのですが、アメリカでは宗教的な要素を完全に排除したりはしません。政教分離は“separate of Government and church”で、「政治と宗教」ではなく「政治と教会」です。この場合の教会とは、特定の教派や教団ということです。ドイツでは、むしろ国がきちんと宗教リテラシーについて教育する義務があるそうです。
創価学会が政治の表舞台に出てきたワケ
――極端な政教分離が進められていながら、なぜ、公明党創価学会など、政治と関係する宗教団体が現れるようになったのですか?
 釈:それはある意味カウンターですね。極度に排除されてきた宗教的要素に対して、「公的機関がお祭りや慰霊をするのは政教分離に違反しない」という主張が出てくるわけです。特に、宗教右派と呼ばれる勢力が、保守的な政治家を応援する動きがあります。
 公明党創価学会は、それとは別の動きですね。ここは、かつての言論出版妨害事件から双方の立てつけを変えてきました。今なお、議論の余地があるのですが。しかし、信仰を持った人が政治活動をしてはいけないわけではありません。
――強烈な排除があったから、揺り戻しのように宗教が公の場に入り込み、バランス感覚を失っている状態ですね。
 釈:そうです。そこに旧統一教会が入り込んできた面があります。宗教に関する内容を、極端に教えないので日本人にはその耐性がない。諸外国では、当然のように宗教を教えています。特定の教団を教えるのではなくて、宗教の全体像を教えるんです。
――宗教全体をマッピングして俯瞰するような教育ということでしょうか?
 釈:はい。それをやらないと、宗教が本来的にもつ毒の部分を避けるのが難しいと思います。また、カルト教団やマインドコントロールについても教える必要があるんじゃないでしょうか。
 とにかく、グローバル化が進む現代では、多様な宗教を知っておかないと、差別や排除が起きやすくなりますね。日本はこれから外国の人々を大幅に受け入れる方向へと舵を切ったのですから。カルト教団の問題に対しても、多様な人々の受け入れにおいても、宗教リテラシーを高めるという課題は喫緊のものです。
 日本人の多くは「宗教」というだけで遠ざけてしまう現状。しかし、そうしたマインドが、カルト教団を育ててきた一因にもなっているようだ。まずは、私たちひとりひとりが宗教リテラシーを高めていく必要がある。
 取材・文/Mr.tsubaking
 【Mr.tsubaking】
 Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞう野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。」
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