関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
低賃金もブラック化も全ての元凶は、人口激減による若者の減少である。
アニメ・漫画文化を支え発展させるのは、金持ちの老人ではなく、金のない若者である。
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日本のアニメのキャラクターは、日本人らしく見えるても日本人ではなく、人種や民族で区別できない無色である。
もし、日本人らしく描いたら、日本人の実写映画同様に外国では受けない。
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「アニメ・マンガは低俗である」としか理解しない受験エリート官僚によって、アニメ・マンガ文化は衰退し、クールジャパンは失敗する。
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テレビ業界や映画会社は、経費削減として制作費を節約したい為に、失敗する確率が高く、金のかかるアニメは作りたくはないのが、本音である。
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関川夏央「手塚マンガの主人公の顔は、物語がどれほどリアルであろうと、おおむね無国籍だった。眼は相対的に大きく、虹彩(こうさい)は明るくえがかれていた。白人と日本人を区別するてだては髪の色と強調された鼻の高さだけだった。
手塚の明るい物語は戦後間もない時期の日本の子どもたちを大いに勇気づけた。同時に手塚の主人公たちは無国籍であることによって、民主と正義の象徴である白人よりも自分は醜く生まれついたのではないかという不安と不快、すなわち現代世界で日本人として生きることへの底知れない孤独感からも子供たちを救ったのである」(『知識的大衆諸君、これもマンガだ』)
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増村保造「私は情緒を嫌う。何故なら、日本映画に於ける情緒は抑圧であり、調和であり、諦めであり、哀しみであり、敗北であり、逃走だからである」
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2016年12月号 ウェッジ「拡大する〝韓流〟との差
チグハグな投資戦略 業界が求める支援の〝最適化〟
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『日本企業の円滑な海外展開を可能とするため、海外事業への投資の呼び水としてリスクマネーを供給することで、漫画やアニメなどのコンテンツ、ファッション、食、伝統工芸など、日本特有の商材やノウハウを官民一体となって海外に売り込んでいく』役割を担うのが、2013年設置の官民ファンド『海外需要開拓支援機構』、通称『クールジャパン機構』である。
クールジャパンのコンセプトには合理性があるが、クールジャパン機構の出資戦略、実績を振り返ると、大きな疑問符がつく。
日本が誇るカルチャーが根付くための長期的な投資を行っていき、未来の利益を生み出すことを期待する。そのために公的な資金が必要だとしたら、異を唱える積極的な理由はない。
クールジャパン機構への疑問の声は2つに大別される。1つは、日本が誇る文化を輸出するために、どれほど実効性のある投資が行われているのか。もう1つは組織そのものの運用だ。
たとえば、ラーメン店……
特定のブランドにだけ投資するというのもスジが悪い。……
たとえば、本格進出前に出店地域における反応を観るためのポップアップ店舗を出せる貸店舗やフードコートの経営に乗り出せず、チャレンジしやすくなり、海外投資家への訴求機会も増える。その上で、日本食や日本語、日本カルチャーに興味ある人材を集めた料理学校を設立・経営するなど、日本食を中心としたコミュニティを醸成しつつ、事業として成立させる方法方法はいくつも考えられるだろう。
改善点多き映像コンテンツ事業
映像コンテンツ事業に対する投資も不可解だ。
クールジャパンに関連した予算では、クールジャパン機構以外にもコンテンツ海外展開等促進事業補助金(J−LOP)、『地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業費補助金(J−LOP+)』という精度がある。12年以降、これまでに282億円が交付され、コンテンツを海外展開する際のローカライズ(字幕翻訳など)やプロモーションに対して、最大半額まで補助する制度だ。
……
国際的なコンテンツ取引の場で、日本カルチャーを発信する日本パビリオンを設けて映画、コミック、アニメを中心としたテレビ番組などに接する機会を増やすというもので、各業界での〝日本の取り組み〟にも注目が集まる。
15年には5月カンヌ映画祭、7月パリ・ジャパンエキスポ、8月台湾漫画博覧会、9月東京(イベント未定)、10月カンヌ・MIPCOMの5つのイベント出展が計画・予算化されていた。
ところが7月のジャパンエキスポに出展後、プロジェクトの活動は急速に萎み、以降のプロモーション活動がなくなってしまう。
総額予算2億円超、J−LOPから1億円以上を拠出したとされるカンヌ映画祭のジャパンパビリオンの事業計画なども不明瞭。明確な理由が明らかにされないままプロジェクトそのものが清算された。
さらに今年、日本アニメ輸出の最前線であり、国際的なテレビ番組取引では最大規模を誇るカンヌ・MIPCOMで、日本が主賓国をつとめる絶好の機会であったが、クールジャパン予算はほとんど拠出されていない。総務省や放送局を中心にした『放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)』で1億円ほどの予算を捻出し、手弁当で盛り上げていた。
では、なんの取り組みも行っていないのかと言えば、クールジャパン機構としてコンテンツ事業への投資は行っている。
海外でマンガやアニメなどのクリエイター育成事業を展開する『カドカワ・コンテンツ・アカデミー』に最大4億5,000万円出資、さらには有料多チャンネル事業を提供するスカパーJSATとのジョイントで、総合エンタテインメント・チャンネル『WAKUAKU JAPAN』に出資、日本発のコンテンツを衛星放送で届けるインフラへの投資を行った。『正規版日本アニメの海外向け動画配信およぶEC』を行うため、バンダイナムコホールディングス等との共同事業にも出資した。
ただし、これらはいずれもクールジャパン機構の株主として参加している企業に対して実施された事業投資でしかない。クールジャパン機構に参加する企業が、海外事業の負担を軽くするため、まっ先に承認した事業と言われても反論はできないだろう。
かつて日本アニメが海外で勢いを失った背景には、ネットを通じた非正規映像(海賊版)の配信があった。ファンがすぐに自主的に字幕を製作して流通させてしまうから。原作コミックとそのアニメ化作品の海外展開を支援するのであれば、翻訳予算を捻出するだけでなく、タイムラグなしにローカライズする組織だった取り組みが必要になる。
そうした意味では15年2月に発表された、クールジャパン機構がイマジカ・ロボット、住友商事と共同で実施したSDI Mediaの買収は評価できる。同社は映像作品を80以上の言語に翻訳する業界最大手の映像ローカライズ事業者だ。しかし、それでも放送業界などの現場からはクールジャパンに対する評価の声はほとんど聞こえてこない。
実感としても過去の実績としても、日本民間放送連盟の斎藤信吾ライツコンテンツ部長は『日本の映像コンテンツを海外で定着させるために、何かの支援を受けた記憶はない』と断言している。
また、アニメの海外セールスは、12年の59億円から、14年には117億円にまで急増したが、実は途中からアニメ関連グッズやライセンス商品の売り上げも合算した数字に切り替えたというカラクリがある。
アニメ以外のコンテンツに対する取り組みの甘さを指摘する声もある。たとえば韓国が、韓流ドラマでアジアを席捲したことはご存じの方も多いだろう。最大の成功例はベトナムで、直接の因果関係は不明だが、ドラマの放送増に合わせてベトナムにおける韓国製品の売り上げが急増し、タダ同然で放送されていた韓流ドラマは、日本製ドラマよりも高い放映権で取引されるようになっているという。その動きはアジア以外にも拡がり始めた。
『マニア向け』化する日本アニメ
韓国のドラマ輸出は14年に300億円を突破。正式な数字は出ていないが、昨年はさらに伸びているという。為替変動はあるものの、10年実績の164億円からおおよそ2倍に成長したのは、子供向け番組であるアニメ以外にも目を向けて地道に韓流コンテンツの販売助成を行ってきたからだ。日本がこれまで取り組んでこなかった。中東や南米といった地域への販売を強化したことも大きい。
前出の民放連・斎藤氏は『日本ドラマの良さを感じてもらうには、まず日本という国を理解してもらう必要がある。しかし、すべてのバイヤーに日本を理解してもらうのは不可能』と、日本発のドラマが海外で売れない現状について話したが、実はインターネット配信の普及がその壁を壊そうとしている。
テレビ番組はバイヤーが買い付け、各国の放送枠に編入してはじめて各国の視聴者へとつながっていく。かつて、日本のアニメは良質かつ安価な子ども番組として世界中で放送されたが、大人向けアニメの増加などもあって、新たに買い付けられる日本アニメは減り、一部のマニア向けコンテンツにとどまっている。
しかしネット配信ならば、放送枠という制約はなくなり、大人向けアニメも日本のドラマも、コンテンツの質とプロモーションで勝負できるようになるだろう。もちろん、ローカライズの速度も上げていく必要がある。
クールジャパン機構の狙いが、日本文化を浸透させ、映像を通じて日本製品のイメージ向上を図り、海外進出する日本企業の収支バランスをプラスに傾けることであれば、まずはこうした〝コンテンツが各国視聴者へとつながる経路〟の変化を見直し、包括的な支援体制を見直すことだ」
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『好き』に支えられる弱き製作現場 伊藤悟
これでいいのかクールジャパン
不可解な投資、疲弊する現場
『自称クールの時点でクールじゃない』などと揶揄されて久しいクールジャパン。表現の揚げ足取りは本質的な問題ではないが、看過できない問題があるのもまた事実だ。
『官民ファンドであるクールジャパン機構の投資先はおかしい。株主の事業への投資や、自力で海外進出する体力のある企業への投資が目立つ』
タリーズコーヒージャパンを設立し、参議院議員も務めた松田公太氏は指摘する。たしかにクールジャパン機構の投資案件を見ると、三越伊勢丹ホールディングス、バンダイナムコホールディングス、電通など、同機構の株主事業への投資が目に付く。また、数百億円の売上高を誇る『築地銀だこ』を運営するホットランド、『一風堂』の力の源ホールディングスなどにも投資している。
『クールジャパン機構がやるべきは、海外に自力で出る経営体力はないものの、海外で通用しそうなお店の海外進出を手助けすることだ。利権化しているように見える』と憤る。
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コンテンツを生み出すクリエイターをもう少し資金面で支えるべきという指摘も多い。コンテンツこそが日本のイメージを向上させ、日本製品の購入やインバウンド増加につなげるなど、国にとって様々な利益を生み出す原動力だからだ。
『私は貧乏への耐性と家族のサポートがあったから映画監督を続けることができました。東宝、東映、松竹などでなく、独立系でやっていくには、人生を棒に振る覚悟がないとできません』
発言の主は、今年5月に行われた第69回カンヌ国際映画祭の『ある視点』部門で審査委員賞を受賞した『淵に立つ』(佐野忠信氏主演)を制作した深田晃司監督である。……
『好きでやっているのだからいいのでは?嫌いならやめればいい』という意見もあるだろう。だが、『映画好きで貧乏への耐性があり、金銭的に恵まれている人しか映画をつくれないなると、制作者が限られ、多様性が大いに失われます』と深田監督は嘆く。
若き才能の参入妨げる劣悪な労働環境
『好き』で支えられているのは映画だけではない。2013年に第265回スピリッツ賞で、最高評価の『スピリッツ賞』を受賞した漫画家の今野涼氏は『駆け出しのころに経験するアシスタントは、1日15時間の拘束で日給7,000円ということがザラにありかす。コンビニのバイトのほうが稼げます』と話す。『私自身は、たまたま他より労働条件の良いところで職にありつくことができたので、漫画家を続けることができましたが、そうでなければスピリッツ賞受賞はあり得ませんでした』というコメントは前出の深田監督とかぶる。
もし映画やマンガの製作現場の労働環境が今よりもう少し良いものであれば、才能溢れる人材が集まり、世界を席巻するコンテンツがいくつか誕生していたかもしれない。
『国はすぐにお金になりそうなことばかりしている。コンテンツクリエイターを本気で育てているようには見えないし、楽なことをしている印象だ』と内閣府が主催する『クールジャパン拠点構築検討会』の関係者は話す。
クールジャパン戦略は経産省、外務省、農水省など各省庁横断のプロジェクトだ。司令塔の役割を担う内閣府・知的財産戦略推進事務局の北神裕企画官はこうした指摘に対して、『アーティストの留学支援など、次世代のコンテンツクリエイター育成も手掛けている。様々な批判があるのは承知しているが、経済成長に寄与するよう戦略を推進していきたい』と話す。
東京芸術大学の長谷川祐子教授は『フランスやドイツ、英国などはクリエイターにお金が回るような仕組みが整備されています。コンテンツで稼ぐには、コンテンツに深みを出し、海外へ展開するキュレーターを育てることも必要です。キュレーターが評価と資金を引っ張ってくるからです。経済成長に結びつけるのであれば、こうした観点も必要です』と話す。
世界に通用するコンテンツを使って、国のイメージを上げ、経済成長に結びつける。この理念を否定する人はいないだろう。資金用途などの細かな戦略を見直していけば、クールジャパン戦略が功を奏する日も近づくのではなかろうか。
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地方で広がる〝何でもあり〟 木下斉
『クールジャパン』×『地方創生』危険なマジックワードの掛け算
各地で進む『クールジャパン』の名を借りた地方創生事業。
そこには、税金を浪費する市場価値のないコンテンツの姿がある──。
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民間にできることは民間にまかせればいい 山本一郎
最優先の国家プロジェクトはクリエイターの救済と海賊版対策
質の高いコンテンツを生み出すには、産業に優秀な人材が集まり、彼らに利益が還元される仕組みが必要だ。
低賃金長時間労働をしいられているクールジャパンの未来を担う人材を、救う政策が求められている。
遡れば2010年、折しも日本は『冬のソナタ』の大ヒットとともに〝韓流ブーム〟に沸き上がるころ。その隣国韓国の政策面での文化事業の成功を模して、日本も負けじと文化輸出を掲げた『クールジャパン』構想を国家戦略として立ち上げるに至った。翌11年には、知的財産戦略本部が『クールジャパン推進に関するアクションプラン』を取りまとめた。
その内容は、『クール・ジャパン関連産業の市場規模を約4兆5,000億円(09年)から17兆円(20年)とすることを目指す』という、実に野心的なプロジェクトであったが、あれから7年ほど経過し、当初見込んだいた『クールジャパン』とは程遠い、悩ましい状態が続いている。
関係者から喝采を浴びた大物漫画原作者の提言
13年4月、これといって具体的な成果の上がらないクールジャパン戦略において、業界や関係者が大きく状況が動くのではないかと見込んだ『事件』が、推進会議のポップカルチャーに関する分科会にて発生した。講談社と所縁の深い、大物漫画原作者の樹林伸氏がこの分科会でクールジャパンを取り巻く業界構造について鋭く論じたからだ。
樹林氏は、クールジャパンの根幹は日本文化をいかに売るこむだけではなく、産業構造としてコンテンツを『育てる入口を作るということがまずすごく大事だ』と定義づけたうえで『現実の世界に落とし込んでいく』ことで発信地として機能されることの大事さを提言。それとともに、クリエイターの『労働環境の悪さみたいなものをなんとか解決できないか』という業界構造にメスを入れることを提言した。これこそ、デスマーチありき、低賃金長時間労働を宿命づけられるクリエイター、プログラマー、デザイナーや漫画原作者にアニメーターといった、日本の誇るべきクールジャパンを支える若者たちの窮状をどうにか救えないだろうか、という内容だ。まさに政府が本腰でクールジャパンに取り込む場合に何よりも優先されるべき課題だったのである。
というのも、日本をコンテンツ産業はある種のブラック企業の集積ともいえる劣悪な作業環境と、どうしても絵が好き、アニメが作りたい、ゲームにかかわりたいと願う若者の体力と技術を低賃金ではき出させ、それを積み重ねて企業に利益をもたらす業界構造が悪癖として定着してしまっている。
クールジャパンの代表格であるアニメ産業においては、平均賃金は年収333万円(アニメーション制作者実態調査報告書2015)だが、アニメーターの動画を担う人々の平均年収は何と111万円。仕上げという工程は195万円、原画マンは281万円。この低賃金よりも驚くのは労働時間の長さだ。アニメに携わる従業員の平均労働時間は月262時間。350時間以上(普通のサラリーマンなら、月に約200時間も残業していることになる!)と回答した者は15%以上に及ぶ。
このような過酷な労働環境で、持続的な産業として成り立つはずがない。同様に、ゲーム産業や漫画・出版産業などもアニメ産業に次ぐ悲惨な労働環境におかれている。しかも、コンテンツ製作の現場の海外シフトやデジタル化でCG製作の環境も満足に用意できない制作スタジオは、海外との競争に晒されてパソコンさえ従業員が自前で調達してくるという状況に陥る。
その結果、皮肉なことにコンテンツ産業の若返りを叫ぶ。もちろん、魅力的な産業であるため若者が集まりやすいという利点もある一方、30代で身体を壊す制作者が続出してしまうのが特徴だ。樹林氏が、制作の現場を見る者として、若者の使い捨てを平然と行う産業構造に政府の会議で正面から異を唱えたことは多くの制作者や業界人の喝采を浴びた。が、この分科会は、たった2回の会合を行って何ら議論が成熟することも結論が取り上げられることもなく閉幕してしまう。
実のところ、この日本のクールジャパンを取り巻く環境は、企業自体がクリエイターをブラックな環境に置くことを前提に成り立っている側面がある。多くの若者の投稿動画で賑わうサービスを傘下子会社に持つ大手出版社では、日本のコンテンツの足腰ともいえるライトノベルの執筆者や、その販売まで担う編集者を一斉解雇し、その一部を、別の子会社の人材派遣会社で再雇用する形でコストダウンを図った。経営合理化の一環としては優れた手腕とも言えるが、長い目でコンテンツ産業を見た場合、どうしても人材を使い捨てているように見える。
逆に言えば、これらの編集者やクリエイターが例えばギルドを作って適切な報酬の支払いや労働環境の整備を求めたり、労働組合を結成するというような『社会的な智恵』を持たないことを良として、文字通り低賃金長時間労働を行われたうえで成果を出せる人間だけ正社員に留め置く前提で、売れない作品という上澄みだけをうまくすくい上げ、企業に利益を集中させている手段とも見える。
国家戦略としてコンテンツ輸出を強化するのであれば、これらの劣悪な環境に置かれているクリエイターに対し、政府はフリーランスになってしまってもせめて健康診断は受けられるように、または、弱い立場につけこまれて長時間労働を強いられることのなように、制度的な枠組みを作ることが求められている。
なぜならば、クールジャパン機構の下でいま使われている資金のほとんどが、民間でもできるようなことをわざわざ半官半民のファンドを作り、不必要な規制の仕事をやった挙げ句、投資回収もおぼつかないような投資を繰り返してしまっている。『日本コンテンツ海外進出支援』の名目で大手企業のヒモ付き案件が中心にならざるを得ないからだ。
もちろん、悪意があって失敗しているわけではないだろうが、海外にどのような需要があるかは民間が一番よく知っている。また、もしも海外で成功の目があるコンテンツを抱えているならば、わざわざ官民ファンドに頼らずとも民間は自前の資金で投資を行って、知的財産や収入を管理するだろう。結局、高収入を生みようのないイベントか、大手が自前でやるにはリスクの大きい二線級のコンテンツくらいしか手掛けさせてもらえない。
政府は産業の持続性やその産業に携わる人々の幸せや健康、所得、権利を守るための仕組みを用意することを念頭に置くべきなのである。例えば、アメリカのようにフリーランスのための労働組合の機能拡充や、フランス流の社会保障制度の検討も必要だろう。
何より取り組むべきが、海外で膨大に作られる日本をコンテンツに対する壮大なパクリ問題、海賊版問題である。これこそが、クールジャパンとして日本の知的財産を世界に売っていくためにまず守られなければならない代物のはずだ。
経済産業省には『政府模倣品・海賊版対策総合窓口』が設けられているが、中国では日本のゲームコンテンツのデッドコピーが大量にサービスされている。また、日本のコンテンツ事業者が中国でビジネスを行おうと思っても認可が下りず、下手をすると日中合弁企業という体裁にやられてコンテンツやそれを支える技術そのものが流出してしまうといった事態に事欠かない。
加えて、海賊版対策を行う『偽造品の取締の防止に関する協定』(ACTA)の取り扱いは外務省になっている。しかし、12年に欧州(EU)議会がこのACTAの条約批准を否決し、事実上頓挫してしまって以降、多国間外交での合意で海賊版対策を行う道は、しばらくの間、閉ざされた。アメリカのように、個別企業が政府を後押しして世界貿易機関(WTO)に提訴させるなどしてプレッシャーをかけつつ現地政府の対策を促すしかなくなっている。日本企業も個別に不利な裁判を起こし、中国司法の下で善意に期待するしかない、という状態だ。これで本当にクールジャパンと言えるだろうか。
とはいえ、クールジャパンの掲げる旗は日本の国家戦略に見合うことは間違いない。日本はほかの国とは全く異なる、営々続く日本文化をバックボーンにしている。これを守り、世界に知らしめて日本のプレステージを引き上げていく戦略が間違いであるはずがない。ただし、方法論は修正が必要だ。日本文化を守り、政策者や『これを作りたい』と願う若者に寄り添う政策にすることが求められている」
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人口激減によって国内市場は減少する為に、資源がなく自給自足できない日本は、資源を海外から購入して日本製品を国際市場で売らなければ生きていけない。
それは、アニメ・漫画も日本映画も同様であるが、中国の様な巨額の製作費を投入できない為に限られた製作費内で創意工夫の智恵を絞って対抗するしかない。
もし智恵がなければ、中国資本から多額の製作費を貰ってアニメ・漫画や映画を製作するしかない。
人口激減は、国内市場の縮小と同時に投資資産・製作費の減少を意味している。
現実に、経営悪化し資金繰りに苦しくなった日本企業は、銀行からの追加投資が断られ、やむなく中国資本の融資にすがり、中国企業の傘下に組み込まれつつある。
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2017年2月18日 産経ニュース「【美術オモシロ再発見(上)】絵巻物は平安のアニメーション 「デジタル復元師」が案内する美術の世界
「平治物語絵巻 六波羅合戦巻」より
デジタルによる画像修正技術で日本美術の制作当時の色彩を再現。プリントアウトしたものを表具し、実際に触れるなどすることで、かつてそうされていたであろう鑑賞方法を体験する「賞道」を提唱する“デジタル復元師”、小林泰三さん(50)が、産経ニュースに特別寄稿。触れて初めて分かる日本美術本来の魅力を、3回にわたって伝える。まずは平安時代の絵巻物。手に持って開いてみて初めて分かる、絵巻物本来の魅力とは…!
イタリアの「ルパン三世」
イタリアを旅行したとき、ホテルのベッドに横たわりリラックスしてテレビをつけたら、日本製アニメーション「ルパン三世」が放送されていた。ルパンは危機一髪の場面で、相棒の次元大介に助けられる。そこでルパンが「グラッチェ(ありがとう)!」。ビシッと決まったこの一言にしびれた。
ずいぶん以前に作られたアニメながら、イタリア語に吹き替えても違和感はなかった。おそらく、イタリアでも広く受け入れられているのだろう。昨今はクールジャパンの代表として世界中で認められている日本アニメの質の高さを、改めて認識したことがある。
ダイナミックな動き、そしてコミカルなハメのはずし方…。それは昔のディズニー映画の緻密すぎる動きとは根本的に違っている。リアルな動きをスムーズに見せるよりも、オーバーに見せることを大切にしてつい目を離せなくしてしまう手法は、実は日本人の得意とするところだ。
絵巻物はアニメのルーツ
それが一番良く分かるのが、古い絵巻物。日本を代表するアニメーター、高畑勲氏も「十二世紀のアニメーション」という著書の中で、絵巻物をアニメのルーツとする見解を発表、それは多くの支持を得ている。
例えば国宝「伴大納言絵詞(ばんだいなごんえことば)」には、こんなひとコマがある。
《大通りで2人の子供がケンカをしている。すると家から、一方の父親が飛び出してきて、自分のこどもをかばいながら、相手の子供を蹴り飛ばす》
今なら問題となるような描写だが、蹴られたほうの子供の姿といったら、絶妙な反り具合が現実離れしていて、とてもアニメチック。先に挙げた「ルパン三世」の登場人物たちの、リアルさよりもダイナミックさを優先させる動きと共通するものがある。
本来なら触るべき
絵巻物がおもしろいのは、ロール状になっていることだ。つまり、両手で絵巻物を持ち紙面を広げたら、左手で新しい場面を繰り出しながら右手で巻き取ると、広げた紙面が動き出すように見えてくる。
絵巻物は、この手の動きを考えたうえで描かれているので、かつてはそうしていたように、触ってみないと意味がない(多くの博物館では、絵巻物を長く伸ばし、壁一面に張って展示している!)。
私がコンピューター上で復元した合戦絵巻をプリントアウトし、くるくるロールにして作った「にわか絵巻物」で実験してみる。
復元した絵巻「平治物語絵巻 六波羅合戦巻」では、たくさんの騎馬兵たちが、左手へ突進していくようすが描かれている。それを動かしていくと、風をはらんでたなびく赤い旗が次々と目に入ってくる。
画面を動かしながら、たなびく旗を目で追うことで、軍勢の突進と躍動感が伝わってくる。そのまま、赤い旗を追いながら紙面を動かしていくと、やがて赤い旗は途切れ、もっとも印象的なシーンが現れる…。
ここは、あまりにも残忍なシーンなので、言葉だけの解説にしよう。
首のない武将がいる。その首を持った武将は、背中に乗っているが、今まさにその武将も馬乗りになっている別の武将に、首を切られようとしている。さらにさらに、背後から長刀を振りかざす歩兵が…。
「驕(おご)れる者久しからず」。今勝ち誇っている者も、次には命がないという、平安時代末期を象徴する場面なのだ。
この絵巻物の作者は、このシーンを見てもらいたいために、印象的な赤い旗をうまく使ったと思えば、そのアニメ感覚に驚いてしまう。
どうだろう。中世のアニメーターは現代のアニメーターと比べても、かなりスゴ腕ではないだろうか。(デジタル復元師 小林泰三)
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伴大納言絵詞 応天門の変(866年)を題材にした平安時代末期の絵巻物。「源氏物語絵巻」「信貴山縁起絵巻」「鳥獣戯画」と並ぶ四大絵巻物の1つ。国宝。
平治物語絵巻 平治の乱(1159年)を描いた絵巻物。国宝。
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こばやし・たいぞう 美術史学者。昭和41年生まれ。学習院大卒。大手印刷会社でデジタル修復技術による美術品の色彩復元などを手がける。「カラーでよみがえる東京」(NHK)で東京の100年間の記録映像、画像のカラー化を担当。同番組は第63回菊池寛賞(2015年)に。“デジタル復元師”を名乗る。著書に「日本の国宝、最初はこんな色だった」(光文社新書)、「誤解だらけの日本美術 デジタル復元が解き明かす『わびさび』」(同)ほか。
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津堅信之「日本のアニメは欧米のそれとは違って手描き感を大切にし、子ども向けではない複雑な物語や心理描写があり、キャラクターの演技では『間』を演出するなど、いかにも日本の伝統に根ざした工夫がおおくあります。それはシニアでも楽しめることを意味します」
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2017年8月12日号 週刊現代「事情通 『クジパーティー』を開き、『ワインディナー券』を引けば、デートを強要する──そんなセクハラを繰り返していた官民ファンドのクールジャパン機構に、労組が結成され、近く団体交渉が行わたる。セクハラ役員には、経産省キャリア官僚出身者もいたというから呆れる。
アニメや和食などの日本文化を海外に発信する『クールジャパン』は、国家戦略に沿うものだが、問題は、それをなぜ経産省が主導し、傘下ファンドの産業革新機構などを使って事業化しなければならないか、である。クールジャパン機構のセクハラ騒動と同じ頃、官製映画会社の『ANEW』が京都のベンチャー企業に3,400万円で売却された。産業革新機構が出資し、『ハリウッド市場をターゲットとする』という触れ込みだったが、手がけた7作品は、いずれも成功せず、約20億円もの累積赤字を抱えて処理せざるをえなかった。
クールジャパンの名のもとに行われる失敗の数々は、官僚ビジネスの限界を示している。リスクを取らない役人主導の出資や投資は、しょせん腰掛けで真剣味を欠く。日本茶カフェ、ジャパンフードタウン、アニメの動画配信になぜ役人が絡むのか。彼らのいい加減さが、セクハラや失敗の封印につながっている」
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2018年3月6日 産経ニュース「【経済インサイド】日本のアニメ産業“ブラック化”で衰退の危機! このままでは中韓に…
経済産業省がアニメ産業の生産性革命に乗り出した。海外に比べ、デジタル化に遅れた日本の制作工程をIT化するため、描画ソフトの共通規格を設ける。非効率的なアニメ制作の現場は“ブラック化”しており、アニメーターの待遇改善が大きな課題となっているからだ。動画作成に大量の人手がかかる労働集約的な産業構造を変化させ、アニメーターの待遇を改善できなければ、日本のアニメ業界は衰退し、作画技術を伸ばす中国や韓国などに“お家芸”のお株を奪われかねない。
2月20日、経産省の地下2階の講堂に約100人のアニメ業界の関係者が集まり、「アニメのデジタル制作導入ガイド報告会」が開かれた。大手制作会社のIT化の取り組み事例などが報告され、アニメーターの間で主流となっている5つの制作ソフトのデータ規格を統一することを確認。2月末に、共通規格の仕様を定めた最終報告書をまとめ、経産省に提出する予定だ。
アニメは基本的に、「原画」と呼ぶ絵の間に「動画」と呼ばれる中間の絵を大量に差し挟むことで、動いているようにみせる。動画作成にはフリーランスや新人などのアニメーターが参加。多重下請け構造の中、作画の品質を管理する作画監督からの指示は原画担当者や動画担当者などに順々に下ろされていく。その指示は、経産省担当者が「『髪の隙間から見える耳が重要だ』という人もいる」と打ち明けるように、作画監督ごとの細かいこだわりがある。
こうした細々した指示による制作工程は指示書を添付したカット袋という紙袋を使って管理されている。監督から指示を受けた原画担当者が印刷した原画を袋に入れ、動画担当者に渡す。動画担当者は監督の指示をもとに動画を作成し、実物を袋に入れて監督に差し戻すという具合だ。「制作会社がアニメーターを直接訪問して動画を回収している」というアナログ手法が残っている。作画ソフトごとに異なっていたデータ規格を統一することで、パソコン上でやりとりできるようにし、生産性の効率化につなげる。
日本のアニメは「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」をはじめとしたスタジオジブリの作品のほか、マンガを原作にしたものなど、海外での人気が根強い。各国で開催されるイベントには数十万人が訪れており、平成28年に公開されたアニメ映画「君の名は」の世界興行収入が3億5500万ドル(約380億円)に達するなど、ビジネスチャンスが広がっている。
日本動画協会によると、消費額を推定した「アニメ産業」市場は28年に2兆円の大台を突破。一方、全国に約600社あるアニメ制作会社の売上合計を推計した「アニメ業界」の市場規模は約2300億円にとどまる。経産省は「アニメは芸術品と同じで、人気作品にしか値段がつかず、無名のアニメーターにお金が回らないのが一因」と指摘する。「品質を重視する職人かたぎのアニメ業界とは対極的かもしれないが、効率化を支援し、少しでももうける産業にしていきたい」という。
日本アニメは独自に進化した2次元の表現方法に強みを持つ。動画を細かくつなげば滑らかな動きになり、省略すれば、一瞬で大きく動いたようにみえて、スピード感が強調される。こうしたノウハウは職人の世界の中でアナログ手法で積み上げられ、守られてきた。一方、欧米のアニメで主流になっている3D(3次元)CG(コンピューターグラフィックス)のプログラマーがゲーム業界などからも引き合いがあることで、好待遇で迎えられるのに対し、日本のアニメーターは閉じられた業界で疲弊している。
日本のアニメ業界はテレビ局の制作費削減などのあおりを受けて、さらに苦境に立たされている。人手がかかる動画作成を中国や韓国に外注することでアニメ制作を続けている。
この結果、動画作成に携わった中国、韓国のアニメーターはめきめきと技術を向上させている。アニメの制作現場を見直し、生産効率とアニメーターの待遇改善が急務だ。(経済本部 高木克聡)」
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現代の金持ち・資産家は、利益の一部を地域に還元し、優秀な子供・才能ある若者・優れた創作者(クリエーター)を金銭的支援した昔のお大尽様・豪農・豪商とは違う。
昔も世襲による貧富の格差は存在したが、現代のような資産家と貧困者の間での対立関係は少なかった。
現代社会に比べて、昔の方がはるかに社会は安定し、庶民の間の文化度や教養度も高かった。
現代の金持ち・資産家は、西洋流高学歴学校出身という箔を持っていても、昔のお大尽様のような高度な教養や成熟した文化を微塵も持ってはいない。
昔のお大尽様は日本民族日本人の教養や文化を残したが、現代の金持ち・資産家は人類共通の介護技術を残す。
一部の現代の金持ち・資産家は、日本に留まっても未来・将来はないとして、充ち足りた老後を送るべく多額な私的資産を持って外国に移住する。
それは、船ネズミが、沈没する船からいち早く逃げ出す姿に似ている。
人口激減という絶望を前にして、先が読める日本人は日本から逃げ出す。
それは、日本民族日本人の歴史が始まって以来の現象であるが、人類史・大陸史・世界史では当たり前の光景で珍しくもない。
危険を察知して逃げるのが、人間はおろか全ての動物に備わった生存本能である。
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