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2025年11月6日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「だからトランプ大統領も天皇陛下にメロメロに…日本の皇室が世界から尊敬される「本当の理由」
皇居・御所でトランプ米大統領と会見される天皇陛下=2025年10月27日 - 写真=ロイター/共同通信社
天皇陛下は10月27日、約6年ぶりにアメリカのトランプ大統領と会見された。ヤフーニュースで皇室関連のコメンテーターを務める、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「トランプ氏のような傲慢で予測不可能な権力者さえも惹きつける皇室という存在は、日本の強みであり独自性である」という――。
【写真】トランプ氏を接遇される皇后雅子さま
■「天皇に会えるのが楽しみだ!」
トランプ大統領は、10月27日の来日にあたって、みずからのソーシャルメディアに、次のようにポストしている。
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Landing in Japan now. Looking forward to seeing the Emperor!
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「いま日本に着いた。天皇に会うのが楽しみだ!」と訳せるように、トランプ大統領の興奮を示している。その日の朝、「トランプ氏、皇室に憧れ 強い権威欲、懐柔利用も」と題した共同通信配信の記事が、いわゆる「ヤフトピ」(Yahoo!ニューストピックス)に掲載され、話題を集めた。
記事は、2019年5月の国賓として来日した際、天皇、皇后両陛下との宮中晩餐会でのあいさつで「丁重なるご招待を決して忘れることはない」と発言した点について、「殊勝な態度に終始した」と結んでいる。
トランプ氏のような傲慢で予測不可能な権力者さえも惹きつける皇室、その魅力は、どこにあるのだろうか。
■「皇室はなぜ世界で尊敬されるのか」
毎日新聞客員編集委員の西川恵氏は、2019年の『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)のなかで、「皇室と外国の友好親善活動を広く『皇室外交』ととらえ」た上で考察している。
たとえば、アラブ王室との関係からは、「だれに対しても等しく平等に接遇することを旨とする皇室は、アラブの国々にとって日本そのものを象徴している」という。また、スペイン王室とは、昭和天皇の皇太子時代の欧州歴訪(1921年)、つまり、戦前から関係が続いている点に着目している。
どちらも、単に「王室」と「皇室」という類似する存在だから「友好親善活動」=「皇室外交」を行ってきたのではない。世界に28ある君主国は、「交流を通して『君主とはどうあるべきか』『国民とどう向き合ったらいいのか』『両国関係発展にために自分たちは何ができるのか』といったことを互いに学び合っている」(同書第五章)のである。
このプロセスにおいて、皇室は、その歴史の長さや、国民からの広い支持、精神性の高さ(同書第一章)といった点について、人間同士の血の通ったかかわりがあったからこそ、「世界で尊敬される」というのが、西川氏の主旨だろう。
ただ、これだけでは、あのトランプ氏が「殊勝な態度に終始」するまでには至らないのではないか。そこにはどんな背景があるのか。
■なぜ「世界の目」が気になるのか
トランプ氏による天皇や皇室への尊敬を解剖する前に、「皇室はなぜ世界で尊敬されるのか」との疑問を、私たち日本人が抱く理由を見なければならない。なぜなら、この疑問そのものが、くりかえし、かつ、しばしば考えられてきたからである。
歴史家・評論家の八幡和郎氏は、〈「世界でたった1人のエンペラーだから」ではない…天皇陛下が世界中から尊敬される3つの理由〉と題した記事(プレジデントオンライン、2023年1月2日午前8時配信)のなかで、「3つの理由」を次のようにまとめている。
それは、「日本という国そのものに対する評価」、「日本の皇室、あるいは歴代の天皇が文化的にも、道徳的にも評価されてきた」こと、そして、「上皇陛下が国内のみにならず海外にも頻繁に出かけられ、各国の人々とも海外の王室ともストイックに交流を深められたこと」の3つである。
■疑問の示し方がなぜか「受け身」
また、著述家で元国連職員の谷本真由美氏は、昨年(2024年)に天皇皇后両陛下が国賓としてイギリスを訪問した際のパレードを見たときに、多様な国や地域の人たちが、「生の天皇皇后両陛下」に感激している様子を目の当たりにしたという(〈中国でも愛子さまと雅子さまは大人気…「日本の皇室」が世界中から尊敬される本当の理由〉プレジデントオンライン、2024年12月17日午前9時配信)。
その理由について、「そもそも世界には『王室が現存している国』なんて限られているからです」と述べている。
八幡氏も谷本氏も「なぜ、私たち(日本人)は、天皇(皇室)を尊敬するのか」を問うてはいない。「なぜ、天皇陛下(皇室)が世界中から尊敬されるのか」と受け身の形で、その疑問を示し、そして要因を考察している。
ここにこそ、トランプ氏をも魅了する天皇や皇室の秘訣が隠されているのではないか。
■背景に「象徴」という地位の曖昧さ
ここでは憲法論議に加わるつもりは全くない。とはいえ、天皇と皇室について、あらためて確かめておかなくてはならない。言うまでもなく、日本国憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とされている。
乱暴に言えば、それ以上でも以下でもなく、「世界中から尊敬されて」いようがいまいが、「日本国民の総意」には、関係がない。天皇の地位は、日本国民が決めれば良いだけであって、外からどう見られているかは、考慮する必要がない。
にもかかわらず、というか、だからこそ、「世界中から尊敬されて」いるかどうかが気になって仕方がないのではないか。自国民だけで決めるしかないがゆえに、他の人たちがどう考えているかを判断材料にせずにはいられないのではないか。
それは、まずもってこの「象徴」という地位のあいまいさから来るのだろう。「天皇」の地位を「象徴」と定めているのは、いまの日本国憲法しかない。「天皇」が日本にしかいないからであり、加えて、たとえ、似たような存在がいたとしても「象徴」とは呼んでいないからである。
■「元首であるというふうに言っても差し支えない」
憲法論議では、この「象徴」とは何か、が話題になる。たとえば「元首」かどうか、という論点である。大日本帝国憲法(いわゆる明治憲法)では、天皇は「元首」だと明記されていたが、もとより、この「元首」が何を指すのかもあいまいであり、決めにくい。実際、2001年6月6日の参議院憲法調査会で内閣法制局第一部長の阪田雅裕氏は、次のように答弁している。
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「今日では、実質的な国家統治の大権を持たれなくても国家におけるいわゆるヘッドの地位にある者を元首と見るなどのそういう見解もあるわけでありまして、このような定義によりますならば、天皇は国の象徴であり、さらにごく一部ではございますが外交関係において国を代表する面を持っておられるわけでありますから、現行憲法のもとにおきましてもそういうような考え方をもとにして元首であるというふうに言っても差し支えない」というのが政府の考え方であるということであります
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「元首である」わけでもなく、「元首ではない」わけでもない。「言っても差し支えない」というのは、官僚答弁だけではすまない。融通無碍であり、なんでもありかのような印象を持たせるのではないか。
まさにこのあいまいさにこそ、天皇や皇室が「世界中から尊敬されて」いるかどうかが気になる原因がある。はっきりしていないからである。「象徴」だと言われても、具体的に何をあらわしているのか、ピンとこない。さりとて「元首」かどうかもはっきりしない。
そんな宙ぶらりんというか、明記されているのに、その内実をつかみにくい存在だからこそ、国外からの視線をもとに、私たちの評価を決めるほかなくなっているのではないか。
■「不思議」だからこその魅力
こうした理路、すなわち、「日本国民の総意に基く」にもかかわらず、「世界中から尊敬されて」いる理由を探りたがる私たちの理屈が、トランプ大統領を魅惑しているのである。言うまでもなく、そんなところまで彼が知っているはずも、調べているはずもない。
だが、日本人たち自身が、天皇や皇室へのストレートな尊敬を表明する機会は、そう多くはない。たしかに、直接、敬意を示してる人たちやメディアもあるとはいえ、トランプ氏の目や耳に入るほどに大っぴらとは言いがたいのではないか。
「日本国民」が尊敬している姿は、目立たない。それどころか、日本人たちが「尊敬される」理由を探っているほどである。だから、天皇や皇室は、トランプ氏のみならず、日本の外にいる人たちにとっては、より一層、不思議というか、不可思議な魅力を放つ。日本人たちが尊敬しているのに、「尊敬されている」訳を知りたがる、そんな存在であるからこそ、そこには解き明かしきれない神秘があるに違いない、そうトランプ氏は思うのではないか。
■英国王室との決定的な違い
かたやトランプ氏は、英国王室に対しては、より実質を求めるというか、プラグマティックな態度に終始している。たとえば今年3月には、英国の大衆紙The Sunの「英国国王による国賓訪問時のドナルド・トランプへの『秘密のオファー』」との記事を引用して、「国王を愛している。とてもいい感じだ!」とポストしている。
もちろん、天皇が政治的機能を有しない点は考慮しなければならないが、それでも、トランプ氏が今回の訪日で天皇とMLBロサンジェルス・ドジャースの大谷翔平選手について、天皇陛下と語りあった様子とは、大きく異なる。記者団に向かって、陛下について「グレート・マン(偉大な人物だ)」とアピールする場面もあった、と朝日新聞は報じているように(「天皇陛下がトランプ大統領と会見、6年ぶり 大谷翔平選手も話題に」朝日新聞、2025年10月27日19時01分配信)、その尊崇の念を隠していない。
■トランプは「失礼」か?
他方で、こうしたトランプ氏の振る舞いが「失礼」かどうかもネットで話題になっている。この「グレート・マン」と称えた際に、人差し指で天皇陛下を指した動作が物議を醸している、とJCASTニュースは報じた(〈トランプ大統領、天皇陛下会見での「振る舞い」に賛否 「敬意を払ってくれている」の声の一方…「指差しはあかん」〉JCASTニュース、2025年10月28日13時45分配信)。
このようにトランプ大統領の態度を気にする背景は、ここまで述べてきた、天皇や皇室のあいまいな位置づけ、そしてそれに対する、私たちの思いに通じる。自分たちの「象徴」である以上、「失礼」な態度をとられれば、侮辱されているように感じるのだが、他方で、そもそも「失礼」なのかどうかを断言しづらい。
トランプ氏と天皇陛下は、すでに6年前から親交を深めてきたのだ、とする立場をとれば、アメリカ流のフランクさとして受け入れられるかもしれない。あるいは、トランプ氏個人の性格をもとに、当然だと、あきらめられるかもしれない。
けれども、先に述べたように、私たちは、天皇や皇室への「世界」の見方が気になって仕方がない。トランプ氏が天皇を愛していようがいまいが、実際の政治の現場にはそれほど影響しない。それだけにかえって、彼が私たちの「象徴」についてどう思っているのかを考えてしまう。
まさしくこのコラム自体が、その最たるものにほかならない。
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鈴木 洋仁(すずき・ひろひと)
神戸学院大学現代社会学部 准教授
1980年東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。京都大学総合人間学部卒業後、関西テレビ放送、ドワンゴ、国際交流基金、東京大学等を経て現職。専門は、歴史社会学。著書に『「元号」と戦後日本』(青土社)、『「平成」論』(青弓社)、『「三代目」スタディーズ 世代と系図から読む近代日本』(青弓社)など。共著(分担執筆)として、『運動としての大衆文化:協働・ファン・文化工作』(大塚英志編、水声社)、『「明治日本と革命中国」の思想史 近代東アジアにおける「知」とナショナリズムの相互還流』(楊際開、伊東貴之編著、ミネルヴァ書房)などがある。
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