♨8)─1─世界遺産登録。熊野古道伊勢路は古神道における信仰の道。~No.21No.22No.23 

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 2024年10月25日 MicrosoftStartニュース さんたつby散歩の達人「祝・世界遺産登録20周年。伊勢神宮熊野三山をつなぐ聖なる道、熊野古道伊勢路をゆく
 熊野古道が2004年7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されてから20年。2024年はメモリアルイヤーとして、「熊野古道伊勢路」を体感するさまざまなイベントやツアーが用意されている。
 熊野市駅の周辺では、松本峠鬼ヶ城七里御浜、花の窟神社と、世界遺産の構成資産を含む見どころが多い。
 © さんたつby散歩の達人
 紀伊半島東側を歩き、よみがえりの聖地を目指す
 熊野は古来、聖域として人々のあつい信仰に支えられてきた。京都・奈良の都から南の山々は熊野三千六百峰といわれ、遥かに連なる様は、永遠の浄土を思わせた。そして山々のさらに向こうで広がる海原は、黒潮が流れる太平洋。そこもまた死者の魂が帰っていく場所とされた。
 熊野古道は、この熊野と高野山、伊勢、吉野大峯といった異なる宗教の聖地を結ぶ巡礼の道のこと。東海道中山道といった一本の道を指すものではなく、京都・大阪から紀伊半島の西側を行く道や、奈良県の吉野からダイレクトに南下していくつも山を越えて熊野を目指す道などがある。いわば、聖地を結ぶネットワークのような道だ。
 このうち、伊勢神宮熊野三山熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)を結ぶ、紀伊半島の東側を行く道を伊勢路という。
 古からの巡礼者の石畳「馬越峠
 熊野古道伊勢路のなかでも、最も美しい石畳と尾鷲ヒノキ林が広がる峠道、馬越峠(まごせとうげ)。どっしりとした石が積み重なる石畳が長い年月にわたりしっかりと道を守ってきた。夜泣き地蔵など史跡も多い。
 熊野古道伊勢路のなかでも、最も美しい石畳と尾鷲ヒノキ林が広がる峠道、馬越峠(まごせとうげ)。どっしりとした石が積み重なる石畳が長い年月にわたりしっかりと道を守ってきた。夜泣き地蔵など史跡も多い。
 © さんたつby散歩の達人
 弾痕があるお地蔵様がお出迎え「松本峠
 馬越峠と並ぶ伊勢路の名所。日中は木もれ日が差す明るい峠で、比較的距離が短く初心者でも安心。妖怪と間違えられて鉄砲傷を付けられたお地蔵様が出迎えてくれる。
馬越峠と並ぶ伊勢路の名所。日中は木もれ日が差す明るい峠で、比較的距離が短く初心者でも安心。妖怪と間違えられて鉄砲傷を付けられたお地蔵様が出迎えてくれる。
 © さんたつby散歩の達人
 かつては、伊勢と熊野を表裏一体とする信仰があった。伊勢は表の顕国(うつしくに)。当時の都から真東の日の昇る地で、太陽の神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る神宮がある。熊野は裏の幽国(かくれくに)。熊野にある日本最古の神社といわれる花の窟(いわや)神社は、天照大御神の母・伊弉冉尊(いざなみのみこと)が葬られた地とされる。
 黄泉(よみ)につながるという熊野は、平安時代に仏教の浄土思想と結びつく。熊野に行って戻ってくるということは、生まれ変わること。そう信じられるようになり、よみがえりの聖地として崇められてきた。
 黄泉につながるという熊野を象徴する巨岩「花の窟神社」
 「日本書紀」にも記されている日本最古の神社といわれており、伊弉冉尊の御陵とされる花の窟(いわや)神社。ご神体は45mもの巨岩で圧巻の迫力。
日本書紀」にも記されている日本最古の神社といわれており、伊弉冉尊の御陵とされる花の窟(いわや)神社。ご神体は45mもの巨岩で圧巻の迫力。
 © さんたつby散歩の達人
 熊野に至る道は平坦ではない。例えば紀勢本線も全線が開通したのは昭和34年(1959)。紀伊半島をぐるりと鉄道が結ぶまで、紀勢本線の最初の区間が開通してから70年近い年月が必要だった。
 熊野詣(もうで)では、険しい峠を越えて道を行く、その行為自体が修行であり祈りであり、今後の自分の人生と来世への功徳に通じるといわれている。
 ダイナミックな奇勝「鬼ヶ城
 熊野灘の荒波に削られた、異様で威容な断崖絶壁。岩に沿って1.2㎞ほどの遊歩道が整備されている。松本峠に近い鬼ヶ城(おにがじょう)には、その奇岩を見るために多くの巡礼者が立ち寄った。
 熊野灘の荒波に削られた、異様で威容な断崖絶壁。岩に沿って1.2㎞ほどの遊歩道が整備されている。松本峠に近い鬼ヶ城(おにがじょう)には、その奇岩を見るために多くの巡礼者が立ち寄った。
 © さんたつby散歩の達人
 「浜街道」と呼ばれる渚の古道「七里御浜
 七里御浜(しちりみはま)は鬼ヶ城の南、熊野市から紀宝町に至る、約22㎞続く日本で一番長い砂礫海岸。伊勢路のなかで「浜街道」とも呼ばれる海辺の道となる。アカウミガメが上陸する地としても知られる。
 七里御浜(しちりみはま)は鬼ヶ城の南、熊野市から紀宝町に至る、約22㎞続く日本で一番長い砂礫海岸。伊勢路のなかで「浜街道」とも呼ばれる海辺の道となる。アカウミガメが上陸する地としても知られる。
 © さんたつby散歩の達人
 海、山、崖……信仰の道に待ち受けるめくるめく奇勝の展開
 伊勢から熊野に至る約170㎞の伊勢路も、やはり困難な道のり。だが海際ぎりぎりまで山や崖が迫る地では、それだけに風景のめくるめく展開が待っている。
 古(いにしえ)の人々が整えた石畳が敷かれた山深い道を過ぎ、見晴らしが開けた峠から見下ろす海辺の眺めや、頑張った自分を癒やしてくれる温泉、行く先々の地域の人との出会い──。そうした体験は、たとえたった一日の一部の古道歩きだったとしても、きっと自分の心身に何かをもたらしてくれるはずだ。
 熊野古道伊勢路へ行くには?
 三重県の南部地域は冬でもめったに雪が積もることがなく、秋の紅葉シーズンはもちろんのこと、空気の澄んだ冬の古道歩きもおすすめ。
 各旅行会社では熊野古道20周年を記念したツアーを順次発売中! 記念すべき今年こそ、熊野古道伊勢路に出かけてみよう。
 詳細はこちら
 協力=三重県 写真=東紀州地域振興公社、三重県観光連盟、PIXTA
 『旅の手帖』2024年11月号より
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