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・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
中国や韓国・北朝鮮では、政・官・党による国主導は多くの面で成功する。
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2024年5月27日17:58 YAHOO!JAPANニュース SmartFLASH「岸田首相「アニメ・ゲームを基幹産業に」ワンパターン政策によぎる不安…思い出される「クールジャパン機構」累積損失356億円の地獄絵図
インドネシアで開催された「クールジャパン」の祭典(2012年、写真:AP/アフロ)
政府が新たな「クールジャパン戦略」を計画している。岸田文雄首相が本部長を務める「知的財産戦略本部」が、2019年以来、5年ぶりとなる新たな「クールジャパン戦略」を6月に発表する。
【写真】レアすぎる!稲田大臣のゴスロリ姿
「クールジャパン戦略は、世界から『クール(かっこいい)』と評されている日本の『食』『アニメ』『ポップカルチャー』『ゲーム』などのブランド力を高め、日本ファンの外国人を増やして、日本発のソフトパワーを強化することです。
2010年6月に経済産業省が『クールジャパン室』を設置してクールジャパン戦略を国策にすることを決めました。その後、2012年に稲田朋美議員が初代大臣(クールジャパン戦略担当大臣)に任命され、現在は高市早苗内閣府特命大臣が舵取りしています」(経済担当記者)
6月からの新戦略について、5月25日、読売新聞が原案を報道。
「記事によると、2022年、アニメなどコンテンツ産業の海外展開は過去最高の4.7兆円になったそう。これは鉄鋼産業の5.1兆円に肩を並べます。
そのため、政府はアニメやゲームなどをクールジャパンの『基幹産業』として、海外展開をさらに推進するため、若手クリエイターやアーティストらを支援していくことになりました。
クールジャパン戦略には、農林水産物の輸出先の多角化なども含まれます。これは、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出で、中国やロシアが日本産水産物を全面禁輸していることから、あらたに取り組む課題となりました」(週刊誌記者)
このことが報じられると、SNSではさまざまな意見が寄せられた。Xでは、
《もう万策つきました!最後の一手でクールジャパン推します!ってことかなぁ》
《クールジャパン、そもそも自分でクールとか言っているやつはクールか?という疑問があり》
《「農林水産物の輸出先を多角化する事」がなぜ「クールジャパン」なのか小一時間問い詰めたい》
などのコメントに加え、これまでもクールジャパン戦略に多額の予算がつぎ込まれてきた経緯から、
《クールジャパンまだやってんのか。もうやめろ。税金無駄に使うな。これまでに実施した案件の費用対効果の確認はしたのか?》
など、批判的な意見も多い。
「2023年10月31日の参議院予算委員会でも、そのことが議論になりました。蓮舫議員が質問に立ち、発足から10年たった2022年決算での投資額、累積損益を当時の経済産業大臣だった西村康稔氏に質しました。
西村氏は『投資実績が161億円、累積損益がマイナス356億円』と答弁しましたが、これは計画を3回見直した結果の金額です。つまり何度見直しても、費用対効果が見込めなかったということですから、今後も赤字垂れ流しの “地獄絵図” となりかねません。
西村氏は『成果が上がらない場合に統合するか廃止する』との考えも示し、『まさにラストチャンス』と答弁しています。6月の新プランは、まさに最後の試金石となるはずです」(政治担当記者)
ワンパターン政策でさらに赤字が出たら、すなわちそれは国民負担となることを忘れてもらっては困る――。
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5月25日05:00 読売新聞オンライン「「クールジャパン」を基幹産業に…政府戦略原案、アニメ・ゲームの海外展開支援
政府の知的財産戦略本部(本部長・岸田首相)が6月にまとめる新たな「クールジャパン戦略」の原案が明らかになった。アニメやゲームなどクールジャパン関連分野を「基幹産業」と位置づけ、海外展開を推進する方針を明記した。農林水産物の輸出などでは、中国への依存から脱却を図る方針も盛り込んだ。
「クールジャパン戦略」の改定は2019年以来、5年ぶり。原案では、新型コロナウイルス禍が収束し、インバウンド(訪日外国人客)が増加する一方、米中対立など国際情勢が厳しさを増していることに触れ、「クールジャパンをリブート(再起動)すべき時期が到来した」と強調した。
アニメなどのコンテンツ産業の海外展開は22年に過去最高の4・7兆円に上り、鉄鋼産業(5・1兆円)に匹敵する規模に成長している。若手クリエイターやアーティストらの海外展開に向けた活動を「複数年にわたって弾力的かつ継続的に支援する」と記した。
また、日本文化や学術関連の資料をデジタル化することは、新たな価値の創造にもつながるとして、26年度以降の戦略を策定する方針も示した。
このほか、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を受けた中国やロシアによる日本産水産物の輸入禁止措置も課題に挙げ、農林水産物の輸出先の多角化や新規開拓に取り組むとしている。インバウンドについても、「一部の国・地域に過度に依存することを避ける」とした。
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天皇や公家には朝廷文化があった。
幕府や大名には武士文化があった。
百姓・町人・職人・非人・穢多には庶民文化があった。
戦前のエリートやインテリには国民文化があった。
戦後日本、1990年以降の超エリート層と言われる超難関校出の高学歴な政治的エリートと進歩的インテリ達、エセ保守とリベラル左派には文化の素養がない、日本の民族文化・庶民文化を無価値とし 朝廷文化・武士文化そして国民文化を犯罪的だとして嫌悪している。
彼らが持つ教養とは、ここ100年以内の西洋的グローバル文化であって数万年前の旧石器時代・縄文時代から受け継いできた民族的な伝統・文化・歴史そして宗教ではない、それ故に日本のアニメ・ゲームなど若年層オタク財産を世界市場に売り出すというクールジャパン事業は必ず失敗する。
現代日本のメディアや教育には、文化がない。
財界の関心は、建物などの箱物であって生きた文化ではなく、クールジャパン機構の予算であった。失敗し巨額赤字を出しても気にせず、反省もしない。
現代の資産家・富裕層は、昔のお大尽さん・金持ちとは違う。
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2024年5月30日19:31 YAHOO!JAPANニュース 日テレNEWS NNN「日本のアニメ・マンガ「コンテンツ輸出」右肩上がりも… 人手不足の現場は?
日本が誇るアニメやマンガなどのコンテンツ産業。しかし、ある“危機的な状況”が指摘されています。その状況を改善するため、政府が打ち出そうとしている対策とは?
29日、東京・渋谷区の「Nintendo TOKYO」には、たくさんの海外観光客があふれていました。そのお目当ては、世界でも大人気の日本のゲームのグッズです。
イギリスからの観光客
「任天堂グッズを集めているんだ。40個は持っているよ! ここだけで2万円は使ったね」
アメリカからの観光客
「予算は…ふっとびました。ほとんどお金残っていない」
「(2週間で)30万円つかったよ」
使うお金も高額です。
今や、観光の目的にもなる日本のゲームやアニメ、映画などの「コンテンツ産業」。輸出額は右肩上がりで、2022年に過去最高の約4兆7000億円にまで成長しています。
4月に開かれた「新しい資本主義実現会議」では、政府が初めて「コンテンツ産業」のさらなる成長を目指して、クリエイターによる海外展開などの支援の検討や、取引についての実態調査の実施などの論点を示しました。
その会議には、アカデミー賞を受賞した山崎貴監督らも参加。次のような問題点を指摘しました。
「ゴジラ-1.0」など監督 山崎貴監督(先月・官邸)
「日本のコンテンツ産業、映画とかそういうものに対しての支援自体がまだ整備されていない部分がある」
◇
では、制作現場の実態はどうなっているのか? 約40年、人気アニメ作品を制作してきたスタジオを訪ねました。
株式会社たくらんけ 動画監督(東京・練馬区)
「描きやすいように、紙は動かしていっちゃって…」
キャラクターを動かすための画は、1枚ずつ手描きで描いています。
一般的に30分のアニメで描く枚数は、約4000枚から6000枚。デジタル化が進んでも、このいわゆる「手描き」の工程は変わりません。
日本アニメの人気と売り上げは順調に拡大して、この10年で製作されるアニメの本数は1.5倍に。作る本数は増えても…
株式会社たくらんけ 近藤康彦プロデューサー
「労働環境だとか、給料の問題とか、いろんな問題が複雑に絡み合って、若い人たちが(業界に)入っていきづらい状態になっている」
人手不足は続いているといいます。「長時間労働」や「低賃金」など、いわゆるブラックな環境のイメージも広がっているというアニメ制作の現場。
業界団体は、待遇改善のため、制作現場に売り上げが還元されるよう訴えています。
日本アニメフィルム文化連盟 福宮あやの事務局長
「日本のアニメの関連市場規模は3兆円あると言われている。それに対して制作現場におりてくるお金が3000億円弱。10分の1以下しか入ってきていない」
そのほかにも、人手不足解消のため、クリエイターを育てるスキル検定の仕組みを作っているということです。
政府は、6月半ばにまとめる経済財政運営の指針、いわゆる「骨太の方針」にも、コンテンツ産業の支援を反映させたい考えです。
世界で愛される日本のコンテンツ。さらなる成長のための方策が、いま求められています。
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2022年11月28日 YAHOO!JAPANニュース「クールジャパン機構失敗の考察…日本のアニメも漫画も、何も知らない「官」の傲慢
古谷経衡作家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長
・破滅に向かうクールジャパン機構
11月22日付の朝日新聞で『失速したクールジャパン 政府肝入りファンドに「最後通告」』という記事が出た。要約すると第二次安倍政権の肝いりとして2013年から官民ファンドとして設立されたクールジャパン機構(以下CJ機構)が21年末の段階で累積309億円という巨額の赤字を垂れ流しており、財務省が23年度中にも機構の統廃合を検討しているようである。
予想された結果である。私は2018年、CJ機構が東南アジアにおける事業計画の一大拠点として開店させたマレーシア・クアラルンプールの「ISETAN The Japan Store」を視察した。クールジャパンを謳っておきながら、店内には「スターウォーズ」「ディズニー」の商品が氾濫し、「日本産コンテンツ」は無いに等しかった。
食品フロアはむごいものだった。日本からマレーシアに輸入された農産品が、現地の市場価格を無視した異様な値付けがなされ、当然誰も買わないので放置されている。ファッションフロアも閑古鳥が鳴く。世界各地に進出しているユニクロ等のノウハウを無視し、「日本製品は優秀で高いブランド力を持つから工夫しなくとも売れる」という独善的な発想のもとに馬鹿高い値付けを行っているので、まるでフロアは失敗した遊園地のように客が誰もいない。同年6月、「ISETAN The Japan Store」の株式をCJ機構が手放して事実上撤退したのだが、この模様を私は『海外で見た酷すぎるクールジャパンの実態~マレーシア編~』として発表すると、膨大な反響があり取材が殺到した。
しかしなぜCJ機構はこれほどまで徹底的な失敗したのだろうか。端的にいえば、CJ機構は日本のコンテンツや農産品、ファッションを海外に売り出すと放言しておきながら、自国のことを何も知らず、進出先の商圏における競合企業等について市場調査を何もしなかったからである。敵を知らず己を知らず…放漫、慢心、傲慢、無思慮、そして無知。あらゆる冠詞をつけても足りないが、このような堕落をCJ機構は「日本は凄いのだ。ブランド力のある日本製品は無条件に海外に受け入れられるのだ」と糊塗して正当化した。CJ機構は失敗の総本山であり、完全に市場感覚が欠落した腐敗の集合体である。
例えば日本のアニメ、漫画等に引き寄せて分析を行っていこう。前述の「ISETAN The Japan Store」のとんでもない体たらくが示すように、CJ機構は日本のアニメ、漫画を売っていくと謳っておきながら、実際に日本国内に於いてどのようなアニメや漫画が人気であり、海外に於いてどのような具体的な作品が受けているのか、という知識を持たない。「ISETAN The Japan Store」の店舗構成が、CJ機構の無知の全てを物語っている。
・敵を知らず己を知らず
ふつう、セールスマンは他人に商品を勧めるとき、自らが商品を使ってみて商品知識を深め、セールスポイントを探っていく。コンテンツも同じで、まず観てみて読んでみて感動するから他人に進めようという熱量が生まれる。つまりセールスマンは、商売人であると同時にその商品の熱心なユーザーでなければならない。自分の会社が造った自動車に一度も乗らないのに、どうやって他者にその製品の良さを宣伝できるのか。商売人として当たり前のイロハをCJ機構は無視している。
表面的には日本のアニメ、漫画は世界中でファンを獲得している、とする。これは概ね事実だが、CJ機構の構成員が自国のアニメを観ず、漫画も読んでいる形跡がない。もしこの手のカルチャーに少しでも造詣があるのであれば、80年代から90年代~ゼロ年代前半にかけて日本アニメの国際的評価が飛躍的に高まる切っ掛けになった「ジャパニメーション」と呼ばれる作品群を重点配置するのが自然である。
それは大友克洋の『AKIRA』を筆頭として、北米における日本アニメの市場的橋頭保になった押井守の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、日本アニメとして史上初めてカンヌ国際映画祭で上映された『イノセンス』、或いは山賀博之の『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(この作品の製作の為に設立されたのがGAINAXで、ここからのちのエヴァンゲリオンが誕生する)、または国際的な評価が高い今敏の『東京ゴッドファーザーズ』や筒井康隆原作の『パプリカ』など、ないしはその関連作品群である。大友、押井、今らの偉大な日本アニメ界の巨匠のことを何も知らない。手塚ですら極めて怪しい。観ている・読んでいる形跡がない。
実はこの問題はCJ機構だけではない。私が知る限り日本における政治家のほとんどすべてがそうである。日本のアニメ、漫画は世界中でファンを獲得している~、クールジャパンこそが日本における数少ない輸出コンテンツだ~、成長戦略の中核である―云々。猫も杓子も政治家はこのようにいう。しかし彼らは、自らが称揚するこういった日本のカルチャーにまったく触れている形跡がない。
・クールジャパンという割にアニメ、漫画に無知・無関心
国際アニメフェア2012(写真:Kaku Kurita/アフロ)
日本のアニメ、漫画と言ったコンテンツは日本が有する数少ない輸出コンテンツであると政治家の多くはおしなべて述べるが、では具体的になどういった作品が人気であり、具体的にどのような作品がどういった文化圏で受容されているかの各論になるとまるで答えられない。大体彼らは『ワンピース』と『鬼滅の刃』、『ドラゴンボール』『ドラえもん』などと答える。間違いではないが雑な回答である。
ジャンプ作品であれば『NARUTO』『BLEACH』『デスノート』あたりを即答できない時点で大味のカルチャーにしか触れていない人なんだと一発で分かる。『幽遊白書』は知っていても『ハンター×ハンター』は読んでいない。「トンパがムカつく」と言っても最初のハンター試験編すらうろ覚えなので会話にならない。
『レベルE』については存在すら知らない。『進撃の巨人』がジャンプで連載された作品であると思っている場合もあるから手が付けられない。『ドラえもん』を挙げるのなら、同時にF先生の「大長編」で好きな作品を最低でも三つ挙げなければならない。その回答は『鉄人兵団』『宇宙小戦争』『雲の王国』が望ましいがそれ以外でもよい。しかし「大長編」といっても意味することろが分からないから会話が進まない。「SF短編集」に話が及ぶことなど夢のまた夢の話である。
では回答として頻出する『ドラゴンボール』ならば実際に読んでいるのかというと、その形跡もない。「18号可愛い」と言っても、18号のことを知らない。知らないので会話が成立しない。単に国民的な作品だからという理由で『ドラゴンボール』と言っているだけで、実際に読んでいるわけではない。辛うじてかわぐちかいじ氏の『沈黙の艦隊』や『ジパング』は読んだ、という人もいる。政治的な作品だから読んでいる政治家は多い。しかし『太陽の黙示録』は読んでいない。こっちの方が防災の観点から重要だと思うが読んでいない。要するに「漫画読み」としての最低限度の作法がなっていない。
文化庁がメディア芸術祭をやって素晴らしい作品を毎年選出しているのに、『プラネテス』も『ヴィンランドサガ』も『ヒストリエ』も『シドニアの騎士』も知らない。将棋が趣味ですと言っているにもかかわらず『3月のライオン』を知らない。アフタヌーンの四季賞、といってもまったく分からない。アフタヌーンが雑誌であること自体知らない。
『未来少年コナン』のことを話しても、青山剛昌氏のコナンの方だと思い込んでいる。欧州で迫害にあってきた人々のことですね、などと平気でとぼける。私が言っているのはジプシーではなく「ジムシー」である。何も知らないのであればクールジャパンが~、などと言うべきではないが、とりあえずそれを言うことが時流でありクールだ、と考えている。
ゲームはどうだろう。『スーパーマリオ』『ストリートファイター』『鉄拳』『ポケモン』あたりを挙げられるのならまだマシな方である。『ファイナルファンタジー』の7と10の区別がついていないことなどザラである。FFの文脈の中で「ティーダ」といっても、日産のティーダのことだと思っている。そもそもRPGをプレイしたことがないのではないか。私たちの世代は例えば『ドラゴンクエスト3』に熱狂したが、そういった原体験を彼らは持たないのだろう。つまりセールスマンはその商品の熱心なユーザーでなければならない、という基本原則をまるで踏まえていないのである。
アニメ・漫画・ゲームは「子供向けのもの」という蔑視でもあるのだろうか。しかし子供向けに収まらないからこそこういった作品が海外で受けているのだが、自家撞着的である。『モンスタハンター』ぐらいはプレイ、ないしはプレイ動画くらい観てから海外に乗り出すべきだが、モンハンとは何かということを知らない。時間が無いからプレイ動画を見る余裕がない、というのは言い訳にならない。それこそユーチューブの機能で倍速、三倍速等の機能があるから、早送りで見ればゲームシステムの基本構造は理解できるがそれもしない。彼らの中でゲームのハードは「ゲームボーイ」、良くて「セガサターン」で止まっている。知識が更新されておらず、とにかくカルチャーに触れていない。触れていないのにクールジャパンだ、と無理やりに喧伝して予算を付けるからCJ機構の悲劇が始まったのだ
・投資に失敗しても自分の財布は痛くありません。だって他人のカネだから。…的CJ機構の傲慢
CJ機構と吉本興業が組んだCJ機構の出資案件、「COOL JAPAN PARK OSAKA」(写真:アフロ)
私はかつて、当時自民党クールジャパン戦略推進特命委員会委員長の山本一太氏に某番組で共演した際に、アニメの話になったことがある。山本氏は後に群馬県知事になるが、流石に委員長だけあって稲田朋美氏よりは遥にアニメの知識があった。山本氏は「私はサブカルが好きで、攻殻機動隊とかが特に好き」と語った。お、なかなか本格派なのかなと私は思った。
しかし「攻殻機動隊の何のシリーズが好きですか」という質問に山本氏は「テレビ版の…」とだけ言って正確に応えられなかった。劇場アニメとしての攻殻機動隊は95年の押井版『GHOST IN THE SHELL』、2004年の続編『イノセンス』、黄瀬和哉版『攻殻機動隊 ARISE』等からなるが、テレビシリーズは神山健治監督の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLE』(02年)、『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』(04年)等があり、どれを指してテレビ版と言ったのは曖昧である。私はオタクではないが、士郎正宗氏の原作から全てを通読し、劇場・テレビ両方のアニメ版も視聴済みであり、ふつう攻殻機動隊についての一般的見解としてこのような答え方はしない。山本氏は政治家の中ではアニメに相当明るい方だが、それでもこの程度なのである。
要するに彼らは、日本人であり日本社会で生きながら、漫画やアニメと言ったコンテンツ自体に触れていない。「若い人のカルチャーは良く分からない」という理屈も理由になっていない。そもそも日本におけるアニメ・漫画コンテンツの主力購買層は日本社会全体の高齢化もあって年齢層が上昇している。クリエイターも長年活躍されている人が大勢いて、70歳、80歳の巨匠も珍しくはない。要するに彼らはクールジャパン~と言っておきながら、その中核をなすアニメ・漫画を観るのも読むのも億劫だし、ゲームをプレイする意欲もないし、そもそも関心がないのである。
関心がないのならCJ機構など作るべきではないが、「成長戦略が~」という掛け声のもと無理やり予算を付けると事業としては動き出してしまう。もう止まらない。破滅に向けて一直線に坂道を転がっていく。
政治家もCJ機構の中の人も全部そうなのである。カルチャーのことをまるで知らないのに、カルチャーの分野で投資行動をする。だから失敗する。悪い意味で最初から失敗が約束されていたのがCJ機構なのだ。こんなバカげたことがあるだろうか。株式投資をするにあたって、財務諸表を読めないとか、チャートの読み方を知らない、PBRという単語の意味が分からない、という人は居ないはずだ。何故かと言えば、そのような無知のまま投資を行えば必ず失敗するし、その失敗は直接的に自分の財布を痛めるからである。
CJ機構は官民ファンドであるが、実際には税金を原資とした政府出資の方が多く、つまりは「他人のカネ」だからこのような感覚がない。リスクへの抵抗感がなく、失敗しても自分の財布は痛まない、という意識の上に胡坐をかいているので、土台儲からない滅茶苦茶な案件を「有望」と判定して出資してはすべて失敗して巨大な赤字を垂れ流し続けているのである。
・興味がないのならクールジャパンに関与するべきではない
投資するためには敵(競合)を知り、己の実力を知らなければならないが、そもそもそういった感覚がないので、日本のカルチャーが~、サブカルが~、クールジャパンが~と掛け声を繰り返すだけで、たった1クールのアニメすら観る努力をしていない。1クールは原則13話からなる。『太陽の牙ダグラム』よりずっと手軽に見ることができる。OPとEDをカットすれば正味5時間で終わる。『風と共に去りぬ』(約4時間弱)を観ることができる体力があるのなら簡単な筈だ。だが観ない。興味が無いからだ。
政治家や高級官僚に対して『ポプテピピック』を楽しめるようになれ、とは言わない。『ソードアート・オンライン』を見なくてもいい。原作も読まなくていい。シリカちゃんが何なのかわからなくてもいい。『カウボーイビバップ』を『天国の扉』に至るまでルドビコ療法的に「渡辺信一郎の傑作だ!」などと叫んで強制したりしない。古典的なスペースオペラが好きなら『コブラ』を1話だけ見てくれればいい。ヤマトも『愛の戦士たち』だけを見ればよい。『2199』まで見る必要な無い。「ミノフスキー粒子」が何のことなのか知らなくてよい。ジオンに兵があってもなくてもどっちでもいいだろう。無理しなくていい。
しかし政治家が文化事業にかかわる、と公言して国策として予算を付けるのであれば、最低でも『四畳半神話大系』くらい観ておけ、と誰かが言うべきではないか。もちろん投資行動を実際に行うCJ機構の中の人は必須だ。何故それをしないのだろう。興味が無いからだ。まるでカルチャーに対し無関心だからである。このような堕落・怠惰・傲慢・無知が煮詰まったのがCJ機構であり、つまりCJ機構の失敗の本質とはすべてここにあるのである。
日本の農産品は高付加価値だ、と信じ込んでありえない値付けをして展示し、誰も買わないので産廃処理される。既に日本のファストファッションが膨大な試行錯誤を行って現地の市場を開拓しているのにそれを無視し、「日本ブランドであれば現地の消費者も歓心を持つ」と傲慢に錯覚して誰も買わない服やアクセサリーを展示していく。『ZARA』や『H&M』は高いデザイン性のわりには廉価な価格帯や企業の宣伝が受けたのであって、その国の政府が予算を付けた結果、世界的なファストブランドになったわけではない。そもそも、或る特定の文化的コンテンツは完成度が高ければ自然に海外にファンを獲得するものであり、政府が旗を振る必要があるのか。
それよりも、日本のテレビやネットで放映されたアニメがものの数分後には中華圏のネット動画に違法アップロードされる事実の方が、政府として真っ先に取り組むべきことではないのか。コンテンツは国家がごり押ししなくても強いファンを形成する。
・あらゆる世界的コンテンツに政府の支援は無い
SW「EP3」の公開時の熱狂(写真:ロイター/アフロ)
ジョージ・ルーカスの『スターウォーズ』や、ジェームス・キャメロンの『タイタニック』や『アバター』は、アメリカ政府が予算を付けて海外に普及させた結果、歴史的な興行収入を生んだのだろうか。まったく違っており米政府は1ドルも使っていない。逆に村上春樹氏の作品が海外で根強いファンを獲得したのは文化庁や文部科学省の努力の結果なのか。黒澤明監督が世界中でリスペクトされているのは政府の努力の結果なのか。勿論そんな事実は一切ない。
日本のアニメや漫画もゲームも、あらゆるコンテンツは自由競争の中、その完成度が高いがゆえに世界中のファンを魅了した結果、自然に受容されたものであり、日本政府の力ではない。後から政府が成長戦略が~と乗っかる形でCJ機構を作っただけで、そんなことをしなくとも日本産コンテンツは十分に強いはずだしこれからも強いだろう。
政治家やCJ機構の中の人は、自分が全く知らない分野に、一切首を突っ込むべきではない。まして税金を使ってファンドを作り赤字を垂れ流すなど言語道断で、CJ機構など最初から造らなければよかったのである。放っておけばよい。無駄に構わなければ、このような悲劇は起こらなかった。公金の無駄遣いを今後どう総括するというのだろうか。許されざる失敗だが、もう取り返しがつかない。
海外で日本アニメ、漫画、ゲーム等のファンがこれだけ増えた。今後もし、政治家や政府がクールジャパンが~、と旗を振るなら、最低でも海外のファンの質問に対して、基礎的な知識を前提に答えられるだけの素養を絶対に必要とする。
「惣流・アスカ・ラングレー」と「式波・アスカ・ラングレー」の違いがその眼帯の有無を以っても鑑別できないのなら、もうそんな政治家や官僚はクールジャパンを語る資格がないので『白蛇伝』からやり直してほしい。『白蛇伝』を観てもそのアニメ史的意義が分からないのなら、カルチャーについて関与するのをやめ、ひたすら民間の創作活動を邪魔しない方向で放任してほしい。
こんな雑なカルチャーへの認識で「クールジャパン!」「日本スゴイ!」と言うのだからお話にならない。大衆受けを狙って宮崎駿監督が~、スタジオジブリが~、と言うのなら『シュナの旅』と『On Your Mark』は最低限度押さえて置くべきだ。が、そもそも漫画版の『ナウシカ』すら通読していないのである。日本の政治家にもかかわらず、日本のカルチャーについて自身がまるで無知というのは恥ずかしいことだ。
政治家になるのには最低限度のイロハ的な要素があるが、クールジャパンを謳う場合には何故か最低限度の知識も、文化的マナーも必要が無いとされている。カルチャーを一等低く見て、馬鹿にしているからかもしれない。非常におかしいことで異常だ。何も知らないのにカルチャーで儲けようと思うべきではない。そういった官製ファンドなど無用の長物であり、これを教訓に二度と類似組織を作るべきではなく、アニメも漫画もゲームも、政府は放っておいて二度と介入しないでいただきたい。(了)
古谷経衡
作家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長
1982年北海道札幌市生まれ。作家/文筆家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長。一般社団法人 日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。テレビ・ラジオ出演など多数。主な著書に『シニア右翼―日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(中央公論新社)、『愛国商売』(小学館)、『日本型リア充の研究』(自由国民社)、『女政治家の通信簿』(小学館)、『日本を蝕む極論の正体』(新潮社)、『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり』(晶文社)、『欲望のすすめ』(ベスト新書)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)等多数。
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2022年2月11日 ゴールドオンライン トップ
「無駄な規制をやめる、税金を下げる」と日本は元気になる!
「クールジャパン」は死屍累々…なぜ国の主導だと失敗するのか
渡瀬 裕哉
「クールジャパン」は死屍累々…なぜ国の主導だと失敗するのか
「クールジャパン」は日本の文化やポップカルチャーなど、外国人がクールととらえる日本の魅力を発信し、日本の経済成長につなげるブランド戦略です。アベノミクスの柱、成長戦略のひとつでしたが、明らかに失敗しているといいます。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制))やめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。
「クールジャパン」に政府の口出しは無用!
ここでは文化やスポーツの規制を廃止するとより発展して経済成長もできるというお話をしています。ところで、いったい「文化」とは何でしょうか。そして、それはどのように発展していくものなのでしょうか。
難しいテーマを投げかけてしまいましたが、ひとつ例を挙げてみましょう。
読者の皆さんは「巫女の日」をご存じでしょうか。3月5日、インターネット上では絵師さんや有志の人たちによって、巫女さんを題材にしたイラストやコスプレをした画像が発表されています。3(み)5(こ)の語呂合わせで巫女の日です。
特に政府が「巫女の日を作ってください」と音頭を取ったのではなく、自然にそうなったというような記念日です。他には5月(May/めい)10日(ど)で「メイドの日」というのもあって、色々な人がイベントなどを楽しんでいます。
巫女さんは、お正月の初詣などのときに神社で見かける存在です。実は、現在のような巫女さんも、政府との関係から生まれたものです。この場合は、明治維新後に政府が行った宗教政策による統制です。
巫女さんの歴史は古く、『日本書紀』にも神霊と人の間をつなぐ巫覡(ぶげき)の記述があり、当時は男性、女性の両方の例があると伝わっています。時代ごとにその態様は様々ですが、各地で民衆の間に立ち混じり託宣をする巫女は、江戸時代には世直し一揆の要因になるとして、禁圧の対象にもなりました。
明治6年(1873)、政府に新しく作られた教部省は、「梓巫市子並憑祈祷狐下ケ等ノ所業禁止ノ件」という省達を出しました。いわゆる「巫女禁断令」です。当時は、そこここに占い師のような巫女さんがたくさんいたのです。
明治新政府は、江戸時代後期の大火や飢饉で爆発的に増えたまま廃社となっているような社寺を整理します。どのような政府の施策にも功罪はありますが、ことに明治初期の宗教政策においては、長く続いてきた土着の祭礼や貴重な仏像仏具が失われたり、社寺を核とした地域共同体を壊してしまったりしたので、後々に批判されることとなっています。
こうした中、巫女さんにも神社で神職に仕え、支える役割を担ってもらうような政府統制が加えられてしまいました。
現在の巫女さんの存在は、最初に紹介した「巫女の日」のように、広く親しまれる日本文化の担い手となっています。政府統制から離れた巫女さんたちは、かつて民衆の中に混ざって存在し続けた歴史に近い姿のようにも見え、文化は雑多な中から生まれてくるものだなと改めて感じさせられます。
一方、文化に対する国家統制として、明らかな失敗をしているものがあります。「クールジャパン」です。
平成19年(2007)、第一次安倍内閣は「感性価値創造イニシアティブ」を策定し、産業における日本特有の価値観を「作り手の感性やこだわりに由来し、生活者の感性に訴えかけるもの」と位置付けて、日本ブランドの価値を高めようという政策を始めます。
これを背景に、平成22年(2010)、民主党政権が経済産業省に「クールジャパン海外戦略室」を設置、これを拡大する形で本格的に始動したのは平成24四年(2012)のことです。内閣府の知的財産戦略推進事務局には、クールジャパン戦略の要点が次のように掲げられています。
◎クールジャパンとは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」。
◎「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」などに限らず、世界の関心の変化を反映して無限に拡大していく可能性を秘め、様々な分野が対象となり得る。
◎世界の「共感」を得ることを通じ、日本のブランド力を高めるとともに、日本への愛情を有する外国人(日本ファン)を増やすことで、日本のソフトパワーを強化する。
内閣府 知的財産戦略推進事務局 クールジャパン戦略(令和元年9月)
https://www.cao.go.jp/cool_japan/about/about.html
簡単にいうと、クールジャパンは「外国人がクールととらえる日本の魅力」であり、クールジャパン戦略は「クールジャパンの発信、海外展開、インバウンド振興によって世界の成長を取り込み、日本の経済成長を実現する」ものです。
税金に群がっただけの最悪の仕組みだった
少し考えればすぐに分かることですが、この取組みは実際には役所の人がやって来て「我が国の文化は、これが面白いのです」と伝えれば、それを面白いと思わねばならない、という話です。
政府が「これが我が国の素晴らしい文化だ」と認定して展開すれば、これまで知らなかった人に知ってもらうことはできるかも知れません。しかし、それは人々の中から自発的に出てきた文化が世界に向けて広がることとは別の話です。
政府が音頭をとって事業を展開したクールジャパンがどのような経過をたどっているのか、政治・外交ジャーナリストの原野城治氏が次のように問題点を指摘しています。
<日本の文化を海外に紹介し、マンガ・アニメ、食、ファッションなどの輸出を支援すると官民ファンドの産業革新機構が投資した事業が成果ゼロのまま次々に打ち切られ、その株式が民間企業に極めて廉価で売却されている。
中には20億円以上の「全損」案件もあり、税金の無駄遣いがはなはだしい。特に、2013年11月に鳴り物入りで設立された「海外需要開拓支援機構」(クールジャパン機構、東京都港区)のいくつもの投資事業案件が苦戦続きとなっている。(中略)
ブランド戦略である「クールジャパン」の戦略的コンセプトはイメージ先行で、コアが判然としない>
漫画やアニメは、はっきりいえば今まで青少年の健全育成の問題などで、政府は問題視していたぐらいのものです。子供の頃に「漫画やアニメなんか見るな」と言われて育った人も多いでしょう。
ところが、どうもお金になるらしいと目を付けて、政府が海外展開するための予算を付けたら、大失敗したという話です。
投資主体となった産業革新機構は、平成21年(2009)に設立された投資ファンドです。政府出資が9割、残りは民間(企業26社・2個人)が少し出資しています。政府保証で借り入れが可能なので、最大で2兆円を超える投資能力があるとされています。
そこに色々な人たちが群がってみんなでお金を使うという、最悪の仕組みです。今回は漫画やアニメなどのポップカルチャーが食い物にされたというのが、クールジャパンの顛末です。
海外にこうしたコンテンツを持っていくとき、大抵は展示会ビジネスのような形をとります。当たり前の話ですが、漫画やアニメを見るときは、展示会で見るというよりも作品そのものを見ます。
それだけでもクールジャパンは無意味の代名詞のようになっていますし、逆に政府が「これが日本の漫画です」と認定するような話になってしまうと、そこに入る作品と入らない作品の基準や線引きが起こってきます。大勢の読者・視聴者が良いと思っても、政府に認定されていないものというレッテルが貼られる、それほど面白くはないけれども政府認定を受け予算が付く、こうした線引きは産業自体を腐らせる力となってしまいます。
これが民間なら、読まれない・見られないものなら市場から撤退します。失敗したらやめて、新しいものを作ります。色々な形で事業失敗の責任を取らされることもあるでしょう。政府のやっている事業は、市場なら失敗しているようなものにも予算が付き続けて責任を取る人がいなくなることが問題なのです。こういうことを続けていると新しいものも生まれないので、文化が潰れてしまいます。
アニメ産業は2兆5000億円の市場規模
政府がわざわざこんなことをしなくても、令和2年(2020)のアニメ産業は2兆5000億円もの市場規模を誇ります。政府が育ててきたのではなく、見た人が「面白い」と思うからです。
筆者が国際会議に出席したとき、懇親会時にギターを持ったネパール人の参加者から「今から『NARUTO』の主題歌を歌うから、それが正しいかどうか判定しろ」と言われて、こちらが日本人だというだけで審査員役にされてしまう状況になったことがあります。
正直いって正確さは分かりませんでしたが、彼は楽しそうでした。海外の人たちも、官制の展示会から取り入れたのではなく自分で作品を見て「面白い」と思うから、紹介が紹介を呼んで広がるのです。世界に広がっている日本のアニメ文化は「民」が作ってきたものなのです。
政府が口を出さなくても、文化は勝手に広がっていきます。税金を使って予算を付けなくても、面白いものは市場で勝手に売れます。そして、何がこれから人気となって売れるのかは、誰も正確には予測できないのです。
政府は不確かなものに予算を付けることができないので、昔から続いているシリーズもののようなコンテンツだけを海外に宣伝したりします。すると、今度は若いクリエイターがこれまでにないような作品を海外に打ち出すことができなくなったり、やりにくくなったりします。これでは逆効果です。
では、政府による文化政策がまったく無意味なのかというと、そうではありません。政府にしかできない仕事があるのです。国家の意思として、「日本国がこうした価値観をもって海外に発信することで、国際社会でどのようなイメージになりたいか」を打ち出すことです。
たとえば、諫山創さんの『進撃の巨人』は、電子版も含め約180か国・地域で1億部超えの累計発行部数となっている世界的な人気作品です。アニメシリーズもヨーロッパやアメリカを中心に人気を博し、シリーズの公開時にはアニメ視聴サイトがアクセス集中でダウンするほどの現象も起きています。ところが、中国のように作品の放送を禁止している国もあります。
そういう規制を行う国々に対して、「我が国は表現の自由があり、全世界の表現の自由を促進するのだ」というメッセージを出すというのなら、まだ政府の文化政策として意味があるかも知れません。
クールジャパンの失敗は、単に外国人受けしているからという理由でアニメやゲーム、ファッションなど、市場で評価されているものを何となく並べて、「ほら、日本はすごい国でしょう」と言っているに過ぎないこと、そういう無意味なことに税金を注ぎ込んでいることにあります。
単に市場でウケているから海外に持っていきましょう、程度のことなら、民間でも十分できることなので政府が行う必要性はありません。すでに輸出されているコンテンツ、しかも市場で売れているものに対して「政府が認めてあげる」など、単なる便乗です。せっかく面白かったものも、陳腐にしてしまいかねません。
表現方法はポップカルチャーでも、センスの良い作品には哲学や政治思想が背景にあるものです。そうした作品が海外に打ち出され、国や人種の枠を超えて世界に受け入れられていくことに対して政府が介入すること自体、自由な思想への介入そのものです。政府として何を扱うか、あるいは何を扱わないかが決められることになるからです。
最近は、青少年を保護するためという名目で、政府は色々な規制もしようとします。自分の子供に何を見せ、何を見せないかは家庭の問題です。家庭生活の一部なのですから、政府が立ち入ることではありません。
すでに市場で成功しているものに対して、政府が優劣を付けるような愚かな政策を行わない限り、新しい芽はどんどん出てきます。クールジャパンは、政府が手出し口出ししないことで、もっとクールになるのです。
渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員
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2023年10月31日 朝日新聞デジタル記事「巨額赤字のクールジャパン機構 首相「経営改善求めること必要」
相原亮
参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=2023年10月31日午前9時8分、国会内、上田幸一撮影
巨額の累積赤字が問題視されている官民ファンド「クールジャパン機構」(海外需要開拓支援機構)について、岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、「官民ファンドのありようとして、国民の税金にも関わる問題。しっかりと経営改善なども求めていくことも必要だ」と述べた。
機構は安倍政権下の2013年、政府と民間の共同出資で設立された。アニメや和食など日本文化の海外展開支援が目的。政府が1156億円、電通グループやパソナグループ、フジ・メディア・ホールディングスなど民間24社が107億円を出資している(今年8月末時点)。
しかし、多くの投資が失敗し、22年度末の累積赤字は356億円に上る。経済産業省は昨年11月に示した改善計画で、ファンドの設置期限となる33年度の累積損益の見通しについて、黒字額を148億円から10億円に引き下げている。
立憲民主党の蓮舫氏は「まさかのV字回復で、あと11年で黒字が10億円出るのか」と質問。これに対し、西村康稔経産相は「投資先の管理、資金の回収など、相当強化している」と述べた上で、「計画にきちんと沿っているかどうかも見極めながら、成果が上がらない場合には統合するか廃止するか考えないといけない。ラストチャンスということでしっかり取り組みたい」と答弁した。(相原亮)
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