🎑45)─3─「英語はできたほうがいい」と思う親の残念な盲点。早期英語教育に反対するワケ。~No.111No.110 

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 非民族的えせ多様性至上主義が、数万年前からの多様性豊かな民族言語である日本国語を劣化・退化させて滅ぼそうとしている。
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 2023年3月17日 MicrosoftStartニュース 東洋経済オンライン「「英語はできたほうがいい」と思う親の残念な盲点 人気講師「関正生」が早期英語教育に反対するワケ
 関 正生
 英語の人気講師・関正生氏が早期英語教育に反対する理由とは?(写真:ふじよ/PIXTA
 © 東洋経済オンライン
 何十年も前から「子どものうちは言語の吸収が速いから」という理由で早期英語教育が勧められていますが、「英語の前にもっと磨いたほうがいいものがある」と反対するのが、オンライン予備校「スタディサプリ」の人気講師である関正生氏です。その理由について関氏が解説します。
 ※本稿は『早期教育に惑わされない! 子どものサバイバル英語勉強術』から一部抜粋・再構成したものです。
 「英語はできたほうがいい」という呪縛
 改めて言うまでもないことですが、「英語をペラペラ話せる=仕事ができる」わけではありません。ところが早期英語教育になると、この大前提を忘れたような行動をとる保護者は少なくありません。
 ここでよくある反論は「いや、そんなことはわかってる。でも“英語もできたほうがいい”に決まってるでしょ」というものです。
 確かにそのとおりです。でも「〇〇もできたほうがいい」という考えには注意が必要です。その言葉はすべてに当てはまり際限がないからです。ピアノでも水泳でもそろばんでも書道でも合気道でもダンスでも「できたほうがいい」となり、非常に「人の行動を惑わせる」言葉なのです。
 以前、教育熱心なお母さま方にインタビューする機会があり、そのときに「ゲームができないと友だちの輪に入れないから、ゲームもうまいほうがいい。親として手伝ってあげたいけど、私はゲームがわからないし……」と真顔で相談されて困ったことがあります。
 確かに「ゲームもできたほうがいい」ですし、それが親子のコミュニケーションの道具になるならお勧めしますが、そうでないなら無理に時間を割く必要などないはずですよね。
 「英語もできたほうがいい」という前に、「もっと大事なもの」にしっかりと取り組んでこそ英語の力が活きるわけです。「もっと大事なもの」が何かは各自の価値観で千差万別です。
 世間には「10 年後は未知の世界だから英語を!」という論調がありますが、僕に言わせれば「10年後は未知の世界だから、英語の前にもっと大事なものを磨き上げよう!」なのです。
 僕は英語を教える仕事を30年近くやってきましたが、ここ数年の世間の激変ぶりからこんなことを言い出したわけではありません。19歳で初めて塾で教えたときから同じ考えです。その授業を受けた生徒の中で、「英語にとらわれずに」、いや「英語にとらわれなったからこそ」自分が満足できる人生を歩んでいる人を紹介してみたいと思います。
 小5から通った英語塾を1年でやめてしまったSさん
 1人目はSさんという女性で、小5から英語塾に通ったものの、単調な暗記とゲームばかりの内容に魅力を感じず、1年でやめてしまったそうです。
 他の科目は塾に通い続け、公立高校から国立大学に現役合格(僕が教えていたのは高校3年時)。就職は第一希望の超有名外資系企業に採用されました。そこでの仕事はすべて英語ですが、大学に入ってからほとんど英語に触れなかった彼女のTOEICテストは700点台でした。
 世間的には立派な数字ですが、大学生がトップの外資系企業を受けるにはだいぶ低い点数です(今や大学生であってもトップ層は、800点は当たり前で、900点オーバーも珍しくありません)。
 しかし彼女は難なく内定を勝ち取りました。ちなみに、その企業を一緒に受けた彼女の友人はTOEICテスト970点だったものの、書類の一次審査で落選だったそうです。
 内定後に、その企業のアメリカ人役員から「優秀な人材であるなら、英語は後からいくらでも訓練できる」と言われたとのことです。事実、入社前のトレーニングと、実際に働きながら英語を学び、海外赴任も経験して、今は外国人の部下も抱えて順調にキャリアを築いているとのことです。
 教え子ではないのですがもう1名紹介させてください。僕が中学生のときに通っていた塾の先生と今も親交がありまして、その先生の息子さんであるK君です。小中(公立)は野球に明け暮れ、野球漬けの毎日で勉強量は普通の小中学生よりはるかに少なく、初めて塾に通ったのが中3の夏になってからです。もちろん英語の先取り学習などいっさいやっていません(僕はその証人でもあります)。
 中3から大学受験までは勉強に時間を割いて、北海道大学(医学部)に現役合格、現在5年生で、USMLEアメリカ医師免許試験)のStep1に合格を果たした段階です(先日、海外実習に必要な自己PRの英文を読ませてもらいましたが、そちらも採用が決まったそうです)。早期英語教育をいっさい受けていないどころか、中3の初めまで学校の教科書でしか英文を見たことのなかった彼が、アメリカで医師になりつつあるのです。
 以上、2名だけを紹介させていただきましたが、他にも英語を使いこなしている教え子はものすごくたくさんいます。許されるならそれだけで1冊の本にしたいくらいです。
 成田空港のチェックインカウンターで僕の前にいた外国人に流暢な英語で説明をしていた航空会社のスタッフが、偶然教え子のMさんだったこともあります。彼女も高3当初はごく普通の高校生の英語力でしたが、必死に受験勉強をして大学に合格して、その後、英語力に磨きをかけた1人です。
 紹介した人たちの3つの共通点
 今回紹介した人たちの共通点として、「特別な英語教育を受けていない」「勉強・受験において一度は何かしらの挫折を経験している(特には触れませんでしたが)」「親はほとんど(僕から見たらまったく)手を貸していない」ということを僕自身が知っていることから紹介させていただきました。それぞれの望む道に進み、その中で見事に英語を使いこなしていると言えるでしょう。
 この子たちが、もし英語を最優先していたら、今の姿はないだろうと僕は確信しています。もちろん「早期英語教育がいけない」ということではありませんが、こういった人たちがいくらでもいるということを紹介することは、今の「とにかく早いうちから英語を」という風潮の中で、きっとみなさんの参考になると思います。
 「早くから英語をやらなくてもうまくいく」と聞いた後に、「じゃあ何をすれば?」「でも英語は何かやっておきたい」という気持ちになると思います。ただ、英語そのものの話はもう少しだけ待ってください。保護者の方に、いや、保護者だからこそできる(教師・講師にはできない)ことがあるからです。まずはそれをここでお話ししていきます。
●英語を「一番」にしない
 英語が本当に必要になったとき、その必要性が他のことを上回れば、自分から英語に取り組むはずです。というか、取り組まざるをえないのです。一番わかりやすい例が受験です。受験科目で必要であれば英語を勉強するに決まっていますよね。
 でも小学生の段階では、中学受験の科目に英語があることはまだ少なく(増えてはいますが)、多くの人にとっては数年先の高校受験で初めて英語が受験科目になります。また、受験で必要とはいえ、嫌々取り組むのは避けたいですよね。
 そこで保護者の方に意識してほしいのが「英語を一番に置かない」という考え方です。「とにかく英語」と考えるのではなく、「英語よりも大事なものがある」ことを強く意識してください。
 例えばお子さんが「お医者さんになりたい」と言ったとき、えてして保護者は「医学部なら今のうちに勉強を」と焦ってしまうのですが、まずは「医師になりたい」という気持ちを大切にしてください。その気持ちが強ければ、黙っていても英語に取り組みます。過去、医学部に受かった僕の生徒たちは例外なく全員がそうでした。
●「好きなこと」を探す
 「〇〇になりたい」とまでいかなくても、「〇〇が好き」「〇〇をしているときが楽しい」というものがあれば十分です。もしそれも見つからないなら、そのときは保護者の出番です。一緒に探したり、提案したりするのです。
 ただしここで最大限に注意してほしいことがあります。お子さんの言葉を字面通り受け取るのはよくないです。例えば「算数が好き」といっても、必ずしも算数、その先にある数学の世界観が好きとは限らず、パズル感覚で解く快感だったり、どんどんドリルを進める感覚が好きだったりということもあるからです。
 極論すれば、「お医者さんになりたい」という子は、本当に医療に興味があるのではなく、「カッコいい医者に憧れているから」とか「そのように言えば周りの大人が褒めてくれるから」ということだってありうるのです(僕はこの話を予備校の医学部クラスでするのですが、当たりすぎてみんな苦笑いしますし、「確かに」と考え直す受験生は少なくありません)。
 お子さんのなりたいもの・好きなもののきっかけをしっかり汲み取り、なぜそう思うのか、どう目指すのか、を理解することが大切です。そしてその過程で英語をやる必要性を「こじつける」のが保護者の役割です。「こじつける」といっても難しいことはなく、「だったら、ここで英語ができたほうがいいよね」と言うタイミングをうかがうだけです。
●我慢強さ・粘り強さを身につける
 語学を続けるには忍耐力が必要です。というより、何をするにせよ「我慢強さ・粘り強さ」を身につけることは一生の財産になります。小学生のときに無理に英語を詰め込んだところで、「我慢強さ・粘り強さ」を持った子には、いずれ必ず追い抜かれます。ならばまずは英語よりも、そういった力をつけることを優先したほうが結局は英語もうまくいきます。
 前項で紹介した2名はこの点において非常に優れていました。子どもの頃に好きなことに没頭した結果だと思います。Sさんは恐竜(公園を掘って化石を探したそうです)、K君は野球(定期試験前日に終日遠征試合)に没頭していました。
●英語をやる気になったときのお膳立て
 せっかくやる気になっても、英語の教材との相性が悪いと挫折します。小学生用の教材は子ども扱いするものばかりで、高学年にもなるとそれを嫌う子は少なくありません。もしお子さんが背伸びしたように見える場合、「どうせそんな難しいのは続かないでしょ」と言って、やる気の芽を摘まないようにしてください(このセリフは書店でよく耳にします)。
 また、英語の勉強を始めたときに、英語を使いたくなる「場」と「ネタ」を提供するのも保護者の大事な役割です。間違っても引っ込み思案なお子さんに外国人と話をさせようとか、英語劇をやらせようとはしないでください。「読む」のが好きな子もたくさんいるはずです。
●憧れを見せる
 僕自身は小さいころ、英字新聞を読む姿に憧れました。コンビニで売っているので、たまに買ってみるのもいいでしょう。小学生にはまったく読めませんが、それでいいのです。
 また、単純に英語を使っている保護者の姿が、お子さんの心に響くこともあります。昨今のリモートワークの浸透により、今まで一体どんな仕事をしているのかわからなかった自分の親が、家で、流暢に英語でミーティングをしている姿は相当なインパクトがあるでしょう。
 余談ですが、乳幼児にとっては、自分の親が意味不明な言葉(英語)を話して笑ったりする姿が奇異に映るらしく、泣き出してしまったという話を知人から聞きましたが、小学生ならそんな心配はいらないでしょう。
●正論ときれいごとを避ける
 いくらどんな正論・きれいごとを言ったところで、子どもには響きません。また、どこかで保護者側の「英語を話せるようになってほしい」という思いを感じ取ってしまい、多くの子はそれに反発するものです。
 中には反発せず、言うことを聞く子もいるのですが、それはそれでよくありません。医学部を目指す高校生と話をするうちに、「いや、本当は小説家になりたかったんだけど、親のプレッシャーが……」と漏らす子はそれなりに多いのです。
 正論としてよくあるのが「これからの国際化社会では英語が必須」といったものです。みなさんが中学生だった数十年前にも同じことが言われていたはずですが、真面目な人を除いてあまり心には響かなかったのではないでしょうか(少なくとも僕にはまったく響きませんでした)。
 また、どこかから借りてきた言葉も絶対にNGです。「英語ができれば10億人と話せて友だちになれる」といった類いのものも、キャッチコピーならいいかもしれませんが、子どもの心に刺さることはありません(今はオンラインゲームで数人とつながるほうが魅力的に思えるのです)。少なくとも、保護者がどこかから借りてきた言葉を発したところで、直感的に子どもは見抜きます。普段の言動とズレがあるからです。
 それに、そもそもそんなことは保護者自身が本当に願っていることではないでしょう。わざわざ英語を勉強したことの一番の見返りが「友だちができること」だとご自身が信じていないのであれば、お子さんにも響きません。そして(悪気はないとは言え結局は)嘘をついたみなさんの言葉は信用されなくなり、英語も親の言葉も一緒に嫌われてしまうのです。
 ここでお伝えしたことをすべて行う必要はないので、何か1つでも取り組めることからトライしてみてください。
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