⏳6)ー1ー出生数80万人割れで、いよいよ到来する「大学淘汰」時代。~No.14  

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 2023年3月6日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「出生数80万人割れで、いよいよ到来する「大学淘汰」時代 政府は「もうすべての大学を守らない」
 磯山 友幸
 想定より11年も早く
 ついに出生数が80万人を割り込んだ。厚生労働省が2月28日に発表した人口動態統計の速報値によると、2022年の国内の出生数は前年比5.1%減の79万9728人となった。
 by Gettyimages
 © 現代ビジネス
 もちろん80万人という絶対数も問題なのだが、それ以上に大きいのは出生数減少のスピードだ。現在20歳の人たちは約120万人、小学校1年生はざっと100万人いる。この間、14年ほどかけて20万人減ってきたわけだ。ところがその後の6年で80万人を割った。同じ20万人減るのにわずか6年しかかからなかったのだ。厚労省は人口の将来推計をしてきたが、出生数80万人割れは、その想定より11年も早く訪れた。
 「我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています」
 岸田文雄首相は1月の施政方針演説の中でこう述べ、80万人割れに対して強い危機感を示した。まさしく、社会機能が大きく損なわれる危険性に直面している。
 その影響が真っ先に現れるのが「子ども関連市場」である。わずか6年でマーケット規模が20%も縮小するわけだから、経営が成り立たなくなる事業者も出てくるだろう。売り上げが20%減っても黒字を維持できる企業などそうそうない。
 だが、そうした物販などは、対象層を拡大したり、輸出に活路を見出すことができる。ところがそう簡単に身動きができない業種がある。「学校」だ。校舎などの設備を持って、教職員などの人員を抱えているため、固定費が大きい。人口減少は売り上げの減少に直結しかねず、何も手を打たなければ経営が立ち行かなくなる。前述の通り、小学校入学者は現在の100万人から80万人にこの6年の間に減っていくので、まずは小学校がその影響を受けるのは確実だ。
 ちなみに小学校に上がる前の幼稚園ではすでに経営破綻するところが出始めている。都市部ではまだまだ保育所認定こども園などの不足が続いているものの、人口減少が著しい地方では廃業する幼稚園も少なくない。私立幼稚園数だけを見れば2018年度の6538園から2022年度には6152園へと6%減った。
 小学校もすでに効率では統廃合が始まっているものの、私立小学校数は変わっていない。これまで都市部を中心に「公立離れ」が進み、結果的に私立小学校の入学者は増えてきた。今後も公立小学校のシェアをどれだけ食っていけるかが私立小学校の存亡に関わってくるだろう。
 収入源の学生が激減
 そんな中で注目されるのが、大学である。2022年度の大学数は807。うち私立大学は620にのぼる。実は大学の数自体はまだ増え続けている。短期大学が4年制大学になったり、専門学校が大学に衣替えするケースが続いている。
 一方で、大学入学に当たる18歳の人口は112万人ほど。12年ほどかけて100万人までジワジワと減っていく。その後は前述の通り80万人割れに向けて急減が始まるわけだ。つまり、この10年でそれぞれの大学がどんな手を打つかで、生き残れるところと、淘汰されるところに分かれると見ていい。
 現在、大学が経営破綻に追い込まれていない最大の理由は、文部科学省による定員管理の厳格運用がなされているためだ。定められた定員を一定比率オーバーすると、大学助成金を減らす措置を厳格化したため、人気のある上位校の入学者が抑えられ、結果的に下位校の定員充足率が上がる状況が続いている。
 つまり、脱落するところを出さない“護送船団方式”が取られているのだ。かつて、日本の金融機関政策が護送船団だと批判されたが、これは最も弱いところを助けることを基準とする。今や、大学がそうした政策の対象になっているのだ。
 だが、これから20%以上も市場規模が小さくなる中で、大学はどう収入源である学生を確保していくのか。
 人口が減っても大学進学率が高まれば大学は学生集めに苦労しない、という見方もある。2022年度の大学進学者数は63万5156人。18歳人口が112万人なので、大学進学率は56.6%だ。過去最高を更新しているとはいえ、まだまだ伸びる余地があるという見方もある。最も、現在の入学者を維持したとして、人口が80万人になった場合、大学進学率は79%に跳ね上がる。一方で、専門学校が、専門職大学などの形で、大学化する流れは今後も続きそうで、現存の大学が定員を確保できるという話ではない。
 政府の明確な意図
 また、政府の大学を巡る政策も変わりつつある。
 2022年9月に政府の教育未来創造会議がまとめた提言の工程表にはこんな記述がある。
 「成長分野への再編等を通じて当該分野における定員増を図る一方で、教育の質や学生確保の見通しが十分ではない大学や学部等の定員増に関する設置認可審査の厳格化を図るなど、少子化を見据えた大学全体としての規模を抑制する仕組みの整備を行う」
 明確に、複数大学の連携や統合などを支援する一方、大学全体の規模を抑制するとしているのだ。東京工業大学東京医科歯科大学の統合が発表されるなど、すでに国公立大学では統合の動きが強まっているが、これは政府の明確な意図の下に動いている。さらに「私学助成について、学部等に応じた配分・単価の見直しや、定員未充足大学に対する私学助成の減額率の引き上げ、不交付の厳格化について、見直し策の具体化を行う」としている。
 つまり、私学でも学生を集められない大学には助成金の支給を減らすとしているのだ。
 また、「学校法人における自主的な経営改善を一層推進するとともに、経営改善に向けた指導を強化し、著しく経営困難な学校法人には撤退を含む早期の経営判断を促す指導を徹底する」とも書かれている。すべての大学を守るのではなく、学生を集められない経営力の弱い大学は淘汰していく、と言っているわけだ。
 大学の場合、キャンパスや教室設備などの整備が不可欠で、ある意味「装置産業」とも言える。大学が経営改革をしようとする場合、そう簡単に規模の縮小ができない。また、教職員にも経営感覚が乏しく、改革に抵抗する教員も多い。また、カリキュラムの変更や教員配置の見直しをするにしても数年がかかるほか、学部学科を新設しようと思えば最低4、5年の時間が必要になる。図体が大きく簡単には方向転換できないマンモスなのである。
 そんなマンモスは日本の人口減少と共に滅んでいくのか。それとも本学的な競争が始まることで、それに打ち勝って世界と伍する大学が生まれてくるのか。今後、様々な動きが出てくることになりそうだ。
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