🏯23)─1─日本剣道の目的は勝ち負けではなく人生の向上である。打って反省、打たれて感謝。~No.42No.43 

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 2022年5月15日 MicrosoftNews Forbes JAPAN「打って反省、打たれて感謝 若手剣士に学ぶ人生を向上させるヒント
 佐藤 まり子
 海外剣士たちは剣道を「自己研鑽」と捉え、自己向上のために取り組んでいるのです。私を含め、その真剣さに心を打たれる日本人は少なくありません。
 © Forbes JAPAN 提供 打って反省、打たれて感謝 若手剣士に学ぶ人生を向上させるヒント
 剣道や柔道など、ヨーロッパでは武道がとても人気です。何が彼らをそんなに惹きつけるのか不思議に思い「なぜ剣道をしているのか?」と尋ねると、「To improve my life(人生を向上させるため)」と返ってくることがあります。
 「私生活を正す」と断言する若手トップ剣士
 全日本剣道連盟は、剣道の理念に「人間形成」を掲げ、剣道の普及とは「稽古や試合を通じて、武士の精神を多くの人々に伝えること」と記しています。
 2019年の関東学生剣道優勝大会で優勝した、当時筑波大学3年生の星子啓太選手に今後の展望を聞いた際、彼は「結果に甘んじず、私生活を正していきたいです」と語りました。まだ20歳そこそこの学生が浮かれもせずに礼儀正しく、「私生活を正す」と断言した姿に衝撃を受けました。
 そこで、トップ剣士が受けてきた教育のなかに、海外剣士たちが魅力に感じる点があるのでは? と考え、全日本選手権で優勝経験を持つ松﨑賢士郎選手と星子選手に「恩師の教えで印象に残っていること」を聞きました。
 星子選手が在籍していた九州学院では、普段の生活態度が試合などの「本番」に直結すると指導されているそうです。試合で良いパフォーマンスを発揮するために、食事、睡眠に気を配ること。そして、授業は試合と同じくらい大切な「本番」だから絶対に居眠りはせずにきちんと聴くこと。
 同様の教えは、松﨑選手の出身高校である島原高校にもあるようです。
 「島原高校は寮生活でした。初めて親元を離れての寮生活では、何でも自分でしなければなりません。恩師からは『優秀な選手の条件は自立していること』と教えられてきました。また、私の母校は『文武両道』を掲げていたため、剣道と同じくらい勉強も努力しました。やるもやらないも自分次第。日々の生活を含めて、どれだけ努力するかが自立につながると私は考えています」と松﨑選手は言います。
 一瞬で勝負が決まるからこそ生まれる集中力
 子供の頃に自閉症と診断されたオランダの剣道愛好家の女性は、自分に合うスポーツを探し、武道に到達。「剣道を始めてから人生が変わった、集中力がついた」と語ります。
 「小さい頃、人の話も聞かずに走り回っているような子供でした」という星子選手も、「剣道を始めてから、集中してじっとしていることが苦ではなくなりました」と振り返ります。
 「特に剣道は、打つか打たれるかの世界です。集中しないと打たれます。また、恩師からは『体力がなければ集中力もつかない』と教えられてきました。体力が増すにつれて集中力も上がったように感じます」
 松﨑選手も「恩師がよく『気力は体力』と言っていました。試合に勝つためには気力が必要です。気力は体力からできるもの。私も体力がついていくにつれて、集中力も増したように感じます」と言います。
 良い時も悪い時も、気持ちの良い人間でいること
 剣道には「ガッツポーズを取ると一本取り消し」のルールがあります。これは敗者の気持ちを慮ると、勝者として適切な行為ではないという考えが根底にあります。
 相手を慮ることについて星子選手は、「小さい頃の私は、負けると不貞腐れた態度をとる子供でした。しかし、恩師に『悔しい時、上手くいかない時こそ、きちんとした行動をとることが大切』と諭されてから、周囲に配慮した行動をとるようになりました。私の態度が悪ければ周囲の人も困るし、勝った人も良い気分にはなりません。また、上手くいかない時こそ、きちんとした態度を取ることで、応援してくれる人も増えるはずです」と話します。
 こうした態度を好ましいと思うのは日本だけではなく、トルコやオランダの友人たちに聞いたところ、同様の教えはヨーロッパにもあるそうです。
 「勝ち負けではなく、いかに良い勝負をするか。そうすればより多くの試合に誘われるし、人としてもより良くなる」
 あるオランダ人剣士は、昔はこのように教えられていたものの、最近はあまり言われることがないと語ります。それは日本も同様かもしれません。勝っても負けても相手を尊重する、気持ち良い人間でいること。失われがちかもしれませんが、改めて心の中に抱いておきたい教えです。
 打って反省、打たれて感謝
 また、剣道の教えの一つに「打って反省、打たれて感謝」があります。これは、打突が一本になり勝利しても、「本当に無駄なく打てたか?」と、常に反省し謙虚に向上に努めること。逆に負けた場合は自分の至らないところを教えてくれた相手に感謝する精神です。
 「私は高校では1年生からずっと試合に出させていただいていましたが、大学に入ってからは同期にも全国レベルの強い選手がいて、なかなか思うように活躍できませんでした。不安や焦りもありました。しかし『彼らには敵わない』と諦めず、模索し、食らいついていき、徐々に成長し結果に繋がっていきました。挫折しても、負けても、腐らずに向上に努めることは、自分の人格形成にも大きな影響を与えたと感じます」(松﨑選手)
 上手くいかなくても、負けても、その状況に感謝して糧にしていくこと。簡単なことではありませんが、そんな気持ちで物事に取り組めたら、きっと人としても成長できるでしょう。
 このように、剣道ではスポーツとしての側面だけではなく、理想的な「態度」や「心の在り方」を教える側面も強くあります。これは、命のやりとりをしてきた武士たちにとって、極限の状況で己の心を制御するために「心の在り方」について考えることが非常に重要だったためです。
 今はもう武士という職業はなくなってしまいましたが、その教えはまだ剣道のなかにきっと生きていて、日本人だけではなく海外の愛好家にとっても「人生を向上させてくれるもの」であるようです。私たち日本人も、改めてその教えを胸に抱きたいものです。」
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