- 作者:ハンナ・アーレント
- 発売日: 2017/08/24
- メディア: 単行本
関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
オウム真理教に帰依して幹部となった高学歴出身知的エリートは、ナチ党高級幹部・アイヒマンら同様に「大いなる凡庸」で、罪の意識もなく殺人を平然と行っていた。
「大いなる凡庸」以外に深い意味はない。
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オウム真理教の幹部は、ナチ党幹部同様に見るからに極悪人ではなく、人に好かれる好人物で、接すれば接するほど嫌われるどころか信頼され、メディアから非難されると擁護する人々が現れた。
事実、オウム真理教を破防法指定団体にする事に猛反対した人々がいた。
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ファシズムも、ナチズムも、そしてマルクス主義(共産主義)も、今を生きる低学歴出身労働者は理解できないが、明日を生きる高学歴出身知的エリートが染まりやすい。
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2018年1月20日 産経ニュース「【オウム裁判終結】麻原彰晃死刑囚ら13人の執行に現実味 時期・順番が焦点 法務省内「首謀者がまず執行されなければ、遺族や国民が納得しない」
死刑が確定したオウム真理教関係者
オウム事件の裁判が終結したことを受け、法務省は元教祖、麻原彰晃死刑囚ら確定死刑囚13人の執行について本格検討に入るとみられる。今後の焦点は執行の時期と順番だ。
刑事訴訟法は、死刑執行について、判決確定から6カ月以内に法相が命じなければならないと定めている。だが共犯者の逃亡中や公判中には執行をしない運用がなされてきた。公判で証言が得られなくなるのを避けるためだ。地下鉄サリン事件で麻原死刑囚らの共犯者にあたる高橋克也被告の裁判が終結したことで、このハードルは越えた。
死刑囚が再審請求中の場合も、執行が回避される傾向がある。執行後に冤罪(えんざい)が発覚した場合、取り返しがつかないためだが、麻原死刑囚を含め再審を求めている死刑囚が複数いる。
全体を見ても、収容中の確定死刑囚122人のうち約7割が再審請求中で、「大半は執行引き延ばし目的」とも指摘されている。
だが法務省は昨年7月、再審請求中の執行に踏み切った。当時の金田勝年法相は「請求をしているから執行しないという考えはとっていない」と強調した。同年12月にも再審請求中だった2人を執行。相次ぐ請求中の執行は、引き延ばし目的の請求は考慮しない、という法務省の強い姿勢を示したものとも解される。
執行順は死刑の確定順が原則とされており、それによれば平成17年5月に確定した宮前(旧姓・岡崎)一明死刑囚(57)が最初で、麻原死刑囚、横山真人死刑囚(54)と続くことになる。だが、同省内には「全事件を首謀した麻原死刑囚がまず執行されなければ、遺族や国民が納得しない」との意見が強まっているといい、こうした点も考慮されるとみられる。
ただ、死刑執行は最終的に時の法相の姿勢によるところが大きく、過去には思想信条などを理由に、執行を命じなかった法相も少なくない。
公安調査庁によると、アレフなどの後継団体は現在も麻原死刑囚への帰依を深めているとされる。執行命令を出した法相が報復される懸念もあり、同省は警備面も含め難しい対応を迫られることになる。」
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7月6日 18:32 msnニュース「グル(麻原彰晃)の指示なら、人を殺すことも喜び」<教団エリートの「罪と罰」(2)>
医師、弁護士、科学者……「宗教国家」を夢想した麻原彰晃の下には、高学歴で才能あふれるエリートが集まっていた。6日に死刑が執行された、「教団で最も血なまぐさい男」新実智光死刑囚と、「秘密兵器研究家」と呼ばれ教団の武装化を進めた早川紀代秀死刑囚。地下鉄サリン事件から17年となった2012年。最後の特別手配犯3人の逃亡生活にピリオドが打たれた年に発売された『週刊朝日 緊急臨時増刊「オウム全記録」』では、オウム真理教を徹底取材。麻原の操り人形として破滅へと堕ちていった彼らの、封印されたプロファイルをひもとく――。
*超有能な彼らはなぜ麻原彰晃の元に集まったのか? <教団エリートの「罪と罰」(1)>よりつづく
* * *
■教団で最も血なまぐさい男
<新実智光(にいみ・ともみつ)>
(1)生年月日:1964年3月9日
(2)最終学歴:愛知学院大法学部
(3)ホーリーネーム:ミラレパ
(4)役職:自治省大臣
(5)地下鉄サリン事件前の階級(ステージ):正悟師
オウム真理教が起こした7件の殺人事件すべてにかかわり、計26人を殺害したとして殺人などの罪に問われた。この人数は、麻原彰晃の27人に次ぐ多さだ。
愛知県岡崎市出身で、最も古参信徒の一人。学生時代はユースホステルクラブに所属し、牛丼店でアルバイトをするなど、ごく当たり前の生活を送っていた。一方で、宗教や精神世界に興味を持ち、五島勉の『ノストラダムスの大予言』も全巻読破していたという。
大学卒業前の1986年、オカルト雑誌に掲載されていた麻原の空中浮揚写真を見て、オウムに関心を持っていた。教団の機関誌では、このときのことを、
「修行をしながら自らを高める姿勢にひかれた」
と振り返っている。オウムの前身である「オウム神仙の会」のセミナーに参加し、修行に取り組むと体が浮き上がって、光が見えた。
「もう、一生ついていくしかない」
と確信したという。
大学を卒業後、地元の食品会社に就職したが、半年で退社して本格的にオウムにのめり込んでいく。
教団内では自治省大臣を務め、施設警備や麻原警護のほか、脱会しようとする信徒を連れ戻したり、監禁したりする「裏部隊」のリーダー役も担った。
麻原への強烈な「忠誠心」から、坂本弁護士一家殺害事件や、松本サリンと地下鉄サリン事件、田口修二さん、落田耕太郎さん、冨田俊男さんら信徒の殺害事件、VX殺人事件など、残虐な事件にも積極的に関与していった。
逮捕の直後には、
「これも修行と思っています。これから黙秘します」
と取調室のいすであぐらを組み、瞑想を続けた。
裁判の人定質問で職業を尋ねられた時は、
「麻原尊師の直弟子です」
と答え、事件については、
「グル(麻原)の指示であれば、人を殺すことに喜びを感ずるようでなければならない」
「一殺多生。(被告人は)最大多数の幸福のためのやむを得ぬ犠牲である」
と公言してはばかることがなかった。
かつて、教団内で麻原に寵愛されていた井上嘉浩死刑囚は、新実の裁判に検察側証人として出廷した際、
「新実さんも本当は(誤りに)気づいているのに、見ていて悲しい」
と語った、新実の部下の自治省次官で、地下鉄サリン事件の運転手役を務めた杉本繁郎受刑者も、
「教団を否定するのがつらいのではないか」
と心中を推し量った。
新実自身は一審の死刑判決後、弁護人を通じてこんな短歌を公表している。
「人は皆 時の定まぬ 死刑囚 会って別れて 夢と消えゆく」
判決の前日に、死刑判決が下ることを予想して作った歌だという。
上告中には麻原の四女への手紙でこんなこともつづっている。
「私が使役執行された際は、報身(教義上、夢の中で使える仮想の身体のこと)で尊師やシヴァ大神とコンタクトされ、意識の転移の件宜しく御願いしますね」
上告は2010年1月に棄却され、死刑が確定した。被害者への心からの謝罪と反省の言葉は、最後まで聞かれなかった。
教団で最も血なまぐさい男の「マインドコントロール」は最後まで解けることはなかった。
■「武装化」進めた秘密兵器研究家
<早川紀代秀(はやかわ・きよひで)>
(1)生年月日:1949年7月14日
(2)最終学歴:大阪府立大大学院農学研究科
(3)ホーリーネーム:ティローパ
(4)役職:建設省大臣
(5)地下鉄サリン事件前の階級(ステージ):正悟師
「早川ノート」と呼ばれるものがある。教団の防衛庁長官だったK・Tが逮捕された際に押収された、早川が作成したといわれるオウム武装化計画が記されたノートだ。
「もう戦うしかない 尊師にとって、敗北は死である」
という文言から始まるそのノートには、戦車や自動小銃の値段、防毒マスクの使い方、サリンの製造工程などが断片的に記され、「95年11月 戦争」という記述で終わっている。
麻原から「秘密兵器研究家」と評された早川は、1949年生まれの「団塊の世代」。大阪府堺市で地方公務員の一人息子として育った。
神戸大学農学部でバイオ技術を学び、進学した大阪府立大大学院では、緑地計画工学を専攻。卒業後は大手ゼネコンに就職し、土木技術部開発設計課に勤務した。しかし5年後に退職し、さらに2社に勤務した後、86年にオウムに入信した。麻原の著書を読んだことがきっかけだった。
翌87年には全財産を寄付して出家した。麻原より6歳年上で、若者が多い教団では「おやじ」と呼ばれていたという。
教団内ではゼネコンでの勤務経験を生かし、土地買収などの先頭に立つ。
「尊師が『やれ』と言われたことをやっていく」
という姿勢で、「建設」にかかわるすべてを仕切った。
教団のロシア進出では、表の顔は上祐史浩が努めたが、ラジオ局でのオウムの布教番組を流す交渉など、カネが絡む場面では早川が登場した。
モスクワ工科物理大学へ高性能コンピューターを寄贈し、レーザー研究の権威らに接近を図った。軍用ヘリと同型の「ミル17」を買い付け、銃器密造のモデルとなる部品や、LSD(合成麻薬)密造の原料もロシアから日本に持ち込んだ。
教団を批判した週刊誌「サンデー毎日」の連載記事をやめさせるため、毎日新聞社に爆弾を仕掛けようと下見に訪れたり、TBSに押し掛け、坂本弁護士のインタビューを収録したビデオを事前に見て、放送中止を迫ったこともある。
信徒の田口修二さん殺害事件や坂本弁護士一家殺害事件など、陰惨な事件にも実行犯のひとりとして関与し、サリンプラントの建設も指揮した。
地下鉄サリン事件から約1カ月後の95年4月19日には、TBSの番組に出演し、教団施設からの生中継でジャーナリストの筑紫哲也、有田芳生両氏のインタビューを受けた。
坂本弁護士一家殺害事件や仮谷清志さん逮捕監禁致死事件についての関与を聞かれ、「事実と違う」と強く否定しつつも、
「逮捕される理由はないが、今は微罪でも逮捕される状況。そういうことが起きる覚悟はできている」
と語った。実際に逮捕されたのは、その数時間後だった。
裁判でも当初は麻原への帰依の心を捨てきれず、97年12月の被告人質問では、「今も麻原被告を信じている。ポアは(殺される)ご本人のためになる」
と述べていた。だが、坂本弁護士の事件で犯行後に、当時1歳2カ月だった長男龍彦ちゃんの遺体に布団をかけた理由を聞かれた時は、
「寒そうだったから」
と話し、悲鳴に近い声を上げて、1分近く証言台に突っ伏した。
かたくなだった態度は、審理が進むにつれて変化した。一審の終盤には「自分たちのしてきたことは地獄をつくり出しただけ」と認め、
「今なお私が人間として存在していることに対し、申し訳無さと恥ずかしい気持ちでいっぱいです」
と謝罪した。一審では求刑通り死刑判決が下された。控訴審でも判決は覆らず、2009年7月、死刑が確定した。
*「人のために尽くしたい」と出家して2カ月で殺人者に… <教団エリートの「罪と罰」(3)>へつづく
※週刊朝日 臨時増刊『オウム全記録」(2012年7月15日号)」
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7月6日10:31 産経ニュース「麻原彰晃死刑囚ら7人死刑執行 早川・井上・新実・土谷・中川・遠藤死刑囚
1990年10月、オウム真理教の集会で講演する松本智津夫死刑囚=東京・代々木公園
【産経新聞号外】麻原死刑囚 刑執行[PDF]
松本・地下鉄両サリン事件などで計29人の犠牲者を出した一連のオウム真理教事件をめぐり、死刑が確定していた教祖の麻原彰晃(しょうこう)死刑囚(63)=本名・松本智津夫(ちづお)=ら7人の死刑が6日午前に東京拘置所などで執行されたことが、関係者への取材で分かった。教団が起こした事件の死刑囚は計13人おり、執行は初めて。上川陽子法相が命令した。平成7年5月の麻原死刑囚の逮捕から23年。犯罪史上類を見ない一連の事件は大きな節目を迎えた。
ほかの6人は、早川紀代秀(68)=福岡拘置所▽井上嘉浩(48)=大阪拘置所▽新実智光(54)=同▽土谷正実(53)=東京拘置所▽遠藤誠一(58)=同▽中川智正(55)=広島拘置所−の各死刑囚。
法務省は今年3月、死刑囚13人のうち7人をそれまで収容していた東京拘置所から、執行施設のある5拘置所に移送していた。
確定判決によると、麻原死刑囚は(1)平成元年11月、教団に反対の立場を取っていた坂本堤弁護士=当時(33)=ら家族3人を横浜市の自宅で殺害(坂本弁護士一家殺害事件)(2)6年6月、長野県松本市でサリンを散布し7人を殺害(松本サリン事件)(3)7年3月、東京都心を走る3路線5方面の地下鉄でサリンをまき12人を殺害(地下鉄サリン事件)−などの凶悪事件を次々に起こした。
麻原死刑囚はこの3事件を首謀。このほかの事件を含め13の事件で計26人を殺害、1人を死亡させた。松本サリン事件と地下鉄サリン事件では、後に被害者が1人ずつ死亡。一連の事件での死者は29人に上っている。
確定判決では、一連の動機を「(麻原死刑囚が)救済の名の下に日本国を支配して自らその王になることを空想。その妨げになる者をポア(殺害)しようとした」と認定している。
麻原死刑囚は7年に逮捕され、裁判は8年から始まった。しかし、1審の途中から意味不明なことを話すようになり、最後は何も語らなくなった。16年の1審の死刑判決後、弁護側は即時に控訴したが、「麻原被告は裁判を受ける能力がない」などとして控訴趣意書を提出せず、控訴審は一度も開かれないまま死刑判決が確定した。」
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7月6日 15:10 産経ニュース「【浪速風】オウムに破防法を適用すべきだった 教祖ら7人死刑執行も残る懸念(7月6日)
平成7年9月、移送される麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚=警視庁
「人類の歴史で、これほど人間に対して冷やかな感情を共有して人を殺戮(さつりく)した集団はなかった」と司馬遼太郎さんは書いた。理由らしい理由もなく、無差別だった。「しかも、たれもが本来、常人だった。教祖をのぞいてだが」(風塵抄「“オウム”の器具ども」から)
▼教祖だった麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚の死刑が執行された。6人の信者も同時に。地下鉄サリン事件をはじめオウム真理教による一連の犯行は、わが国の犯罪史上でも、その凶悪さと規模は未曽有である。区切りだが、忘れてはならない。なぜこのような狂信的な集団が生まれたか。
▼オウムは「ポア」と称する教義で殺人を正当化した。人間の業(ごう)を救済してやるのだ−と。教祖が「ポアしよう」と言えば、マインドコントロールされた信者は従った。なんとおぞましい。はたして根絶やしされただろうか。いつか、オウムに破壊活動防止法を適用しなかったことを後悔しなければいいが。」
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7月26日 毎日新聞「元幹部ら6人の死刑執行 13人全員、同じ月に
法務省は26日、オウム真理教による一連の事件で死刑が確定した教団元幹部6人の刑を同日執行したと発表した。教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚と別の元幹部ら計7人の刑は今月6日に執行されており、一連の事件で有罪が確定した死刑囚13人を含む教団関係者190人全員の刑が執行されたことになる(服役中の受刑者含む)。東京都心で無差別テロを引き起こすなど日本社会を根底から揺るがした事件は、最大の区切りを越えた。
1カ月で2度の死刑執行は極めて異例。上川陽子法相は前回の法相在任中(2014年10月〜15年10月)を含めて計16人の執行を命じたことになる。執行は1989年以降約3年4カ月、当時の法相のスタンスなどから停止状態になった。93年に再開されて以降の法相としては鳩山邦夫氏の13人が最多だったが、上川氏はそれを上回った。
26日に執行されたのは刑の確定順に、岡崎(宮前に改姓)一明(57)=名古屋拘置所▽横山真人(54)=同▽端本悟(51)=東京拘置所▽林(小池に改姓)泰男(60)=仙台拘置支所▽豊田亨(50)=東京拘置所▽広瀬健一(54)=同=の6死刑囚。先に執行された7人と共に坂本堤弁護士一家殺害、松本・地下鉄両サリンの3事件のいずれかに関与し、殺人罪などで05〜09年に死刑が確定した。13人は東京拘置所に収容されていたが、3月に松本元死刑囚らを除く7人が他5カ所の拘置施設に移送された。
確定判決などによると、13人のうち最初に死刑が確定した岡崎死刑囚は坂本一家殺害に関与。後に脱会し、事件を自白して自首が認定された。横山死刑囚は地下鉄事件でサリン散布役を務めたが、自身が散布した電車で死者はいなかった。端本死刑囚は坂本一家殺害に関わり、松本事件でサリン噴霧車の運転などを担当。林死刑囚は松本事件で噴霧車製造に関与し、地下鉄事件では他の実行役より多い3袋のサリンを散布し8人を殺害した。豊田、広瀬両死刑囚も日比谷線、丸ノ内線でサリンをまき、それぞれ1人を死亡させた。 12年12月の第2次安倍内閣発足以降の死刑執行は14度目で計34人となった。【和田武士】
オウム真理教とは
松本智津夫元死刑囚が1984年に設立したヨガ教室「オウム神仙の会」が前身で87年に改称。「修行すれば超能力者になれる」などとうたって、若者を中心に信者を増やす一方、高額な布施や出家・脱会を巡って次々と事件を起こすようになった。90年には松本元死刑囚ら25人が衆院選に立候補したが惨敗し、殺人を肯定する教義の実践と武装化を加速させた。坂本堤弁護士一家殺害(89年)、松本サリン(94年)、地下鉄サリン(95年)など一連の事件で計29人(刑事裁判の認定では27人)が犠牲となり、6500人以上が負傷。公安調査庁によると、2000年に改称した後継主流派「アレフ」や、07年に分派した「ひかりの輪」などが存続している。」
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8月12日 NHK NEWS WEB「オウム真理教の一連の事件で死刑が確定していた6人の死刑が執行された。教団の元代表の麻原彰晃、本名・松本智津夫元死刑囚ら7人には今月6日に刑が執行されていて、教団に対する強制捜査から23年余りがたって13人の死刑囚全員に刑が執行された。
死刑が執行されたのは、岡崎一明死刑囚(57)、横山真人死刑囚(54)、端本悟死刑囚(51)、林泰男死刑囚(60)、豊田亨死刑囚(50)、広瀬健一死刑囚(54)の6人。
オウム真理教は、平成元年の坂本弁護士一家殺害事件や平成6年の松本サリン事件、平成7年の地下鉄サリン事件など数々の事件を引き起こし、合わせて29人が死亡、およそ6500人が被害に遭った。
平成7年3月から始まった強制捜査では192人が起訴され、首謀者とされた松本元死刑囚など13人の死刑が確定した。
一部の元信者が逃亡を続けたため刑事裁判は長期化したが、ことし1月に地下鉄サリン事件などに関わった高橋克也受刑者の上告が退けられたことで終結し、死刑囚が事件について証言を求められる機会がなくなった。
その後、一部の死刑囚は東京拘置所から全国5か所の拘置所や拘置支所へ移送され、今月6日、元代表の麻原彰晃、本名・松本智津夫元死刑囚ら7人に刑が執行された。
ほかの6人は、東京拘置所、名古屋拘置所、仙台拘置支所に収容されていたが、法務省によると、26日午前、刑を執行したという。
教団に対する強制捜査から23年余りがたち、教団の死刑囚全員に刑が執行された。」
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9月号 中央公論「木村凌二 時評2018
オウム事件から再考する人間の弱さと宗教
しばしば、21世紀は心の時代だ、と言われることがある。たしかに、物質的・肉体的な問題はかなり解決できるようになった。反面では、子供の自殺、肉親どうしの殺害、無差別殺人など、昭和の時代には考えられなかった事件が後を絶たない。
なかでも20世紀末に起こったオウム真理教の一連の事件は、ある特殊なカルト宗教の出来事として片づけるわけにはいかないような気がする。ありきたりだが、人間の心に『弱さ』があるかぎり、それが『狂気』に転じる状況は少なくない。まして、教育の途上にあって、精神の未熟な若者たちにとっては、そのきっかけはどこにでも転がっているはずだ。
ローマ帝国建国の地、パラティーノの丘。そこに2世紀末の落書きがあり、十字架に磔にされたロバが描かれ、『アレクサメスはやつの神を拝んでいる』という文字が記されている。キリスト教を邪教と見るローマ人からすれば、イエスはロバのようなものにすぎなかった。外部からは邪(よこしま)な詐欺師のように見えても、内からすれば聖なる教祖と崇められたんである。後に世界宗教となるキリスト教ですら、初期の段階では、真偽を極めがたいところがあった。
さらに16世紀の宗教改革の時代に目を向けても、その立役者ルターは、農民反乱が拡大すると、『暴徒は殺さなければならない』と非難し、それが反逆者の救済にもなるとまで説いている。これと、オウム真理教が転生を意味する『ポア』なる言葉で敵対者の殺人を正当化したことのどこに違いがあるのだろうか。
永遠なもの、絶対的なものなど、どこにもない。それに対してギリシャの哲人のごとく『パンタ・レイ(万物流転)』と居直っていられる心の『強さ』を持てるかどうか。まして経験の乏しい青少年期の若者であれば、何かに頼りたくなるのは自然の成り行きだろう。それは発達途上の刷り込みであり、幼い動物には普通に見られることである。それが自分のなかで完結していればいいが、外に向かって攻撃的になれば厄介になる。
現在公開中の映画『ゲッベルスと私』を観た。『嘘もくりかえせば真実になる』と語ったとされるゲッベルスは、ナチスの宣伝大臣を務めた、ヒトラー側近中の側近である。彼の秘書だった女性ポムゼルが、103歳のときに受けた独白インタビューが延々と続くなか、アーカイヴ映像が数多く挟まれている。
『なにも知らなかった。私に罪はない』と老女は弱々しく口にするが、『あの体制から逃れることは絶対にできない』と断言する。このとき、映画の背景にあるものに触れたような気がした。
彼女は20世紀初頭のドイツの子供の躾け方をふりかえる。とても厳しかったので、ごまかしたり、嘘をついたり、罪を他人になすりつけたりすることを子供なりに覚えながら、目上には従順になると言うのだ。そこにナチのつけ入る隙があったわけである。躾にある程度の厳しさはともなうと想うが、子供の自由な正直さを抑圧してはならないということではないだろうか。
宗教には、修行という名の厳しい躾がある。そこから逸脱する者が出ないように、時には外敵をこしらえ閉鎖集団になり、やがて外敵へのテロすら辞さなくなる。
カエサルは『人間は信じたいことを喜んで信じる』と語っている、そこに永遠・絶対らしきものが入りこむ。逆に言えば、見たくなるものは見ないのだ。改めて宗教を直視する教育が重要だと思う」
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9月23日 産経ニュース「【オトナの外来】「オウム事件」はまだ終わっていない…高学歴者が陥る「洗脳」とは
麻原彰晃死刑囚の死刑執行を受け東京拘置所前に集まった報道陣ら=東京都葛飾区(納冨康撮影)
オウム真理教事件は先日、幹部の死刑執行で幕を閉じましたが、事件に巻き込まれた方にはそれで癒やされるものではないでしょう。
オウム事件で多くの人が疑問に思ったことが、サリンなどを合成できるほどの高学歴の人々がなぜ疑問もなく教祖の命令に従ったのかということでしょう。
世界にはさまざまな宗教があります。人がある宗教に入信する一番のきっかけは家族、特に両親の影響が強いでしょう。自分の意思を示すことができる前に洗礼などで入信させる青田刈り的方法は信者を確保するうえではよい方法かもしれません。
しかし、地域社会が崩壊し、核家族化が進んだ現代ではこのような信者獲得は難しく、従来の伝統的な宗教が壊滅的な打撃を受けています。宗教色の薄い家庭で、さして宗教心の強くない人が入信するきっかけとなるのは心の病かもしれません。
責任感が強く、真面目で細かいことに気がつく人は人一倍優秀で、エリートコースを歩んでいる可能性が高いでしょう。順調に出世の階段を上っているうちは良いのですが、気の使い過ぎからうつ状態になる人もいます。
本来なら心療内科や精神科を受診した方が良いのですが、プライドが邪魔をして相談すらしない人もいます。徐々に追い詰められたところに親切な宗教家に出会って心が解き放たれ、うつ状態が改善することもあります。
うつ病の治療には薬物療法と認知行動療法が有効とされています。宗教の教義や修行にはこの認知行動療法的な要素が多く取り込まれていますので、薬を服用しなくても回復する可能性は大いにあります。
逆に多くの患者を診察している医師の場合は、診察時間が少なく薬の処方以外に適切なアドバイスができないと治療が難渋する時もあります。また、薬よりもカウンセリングの方が有効な病気もあります。このように医師の治療を受けても回復しなかった人が宗教で救われる例も稀ではありません。
体の病の治療でも信頼関係が生まれますが、心の病の場合は治療する医師と患者の間にそれ以上の強い信頼関係が生まれるのはよくあります。良い信頼関係なら問題ないのですが、ときには患者が治療者に強く依存する場合があります。治療者はそのような依存関係にならないように配慮することが大切です。
私がある病院で診察していた時、受付では「石蔵教の信者さまがお見えになった」と冗談を言われていました。私の外来には、ほとんど良くなったにもかかわらず、いまだに遠方から数カ月に一度受診される患者も少なくはありません。
それくらいの距離感なら問題ないのですが、治療者が依存を利用して法外な寄付を要求したり、無理な要求を突き付ける場合があります。依存度が強いと、要求を断ったら症状が悪化するのではないかとの懸念から反社会的な行為を受け入れることもあるかもしれません。
体育会系の指導にも同様のことが起こりがちです。日大やボクシング協会の問題でも指導者が絶対的な権力を手に入れると、その影響のある者は非常識、反社会的行動まで受け入れてしまうようです。
洗脳を防止するには科学的思考をする教育が大切です。恫喝や甘い言葉で巧みに弱い心に入り込もうとしますが、そこには論理的な矛盾や倫理的な問題があるはずです。冷静に考えればおかしいと思うことを拒否できない背景には心の弱さがあります。
心の弱さとは医学的にはセロトニンやノルアドレナリンが不足して起きる場合と、集団の中で流されてしまう意志の弱さがあるでしょう。うつ病の原因は十分に解明されていませんが、神経伝達物質の機能不全として科学的に説明できます。
人と違うことをするのが怖いというのは日本人の特性でもあります。「和を以(もっ)て貴(たっと)しとなす」の日本人の特性も素晴らしいですが、このよう風土では日大やボクシング協会のような問題が起きてしまいます。
米国では幼い時からある問題について「ディベート:討論」する教育が一般的で、それが米国人の良い意味での個人主義を形成しています。そんな米国でも洗脳に関する事件がよく起きるので、どの方法が本当に有効かはわかりません。心の健康と自分の意見をしっかり持つ教育と同時に、治療者が邪心を持たないことが大切だと私は思います。
◇
【プロフィル】石蔵文信(いしくら・ふみのぶ) 昭和30年、京都市出身。内科、循環器科専門医。大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授。三重大医学部卒業後、国立循環器病センター、大阪警察病院などに勤務。米メイヨークリニックへの留学後、大阪大学大学院医学系研究科准教授を経て現職。平成13年より大阪市内で「男性更年期外来」を開設し、中高年の心と体の専門家として丁寧なカウンセリングと治療に定評がある。「親を殺したくなったら読む本」など著書多数。」
・・・
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死刑のない欧米諸国では、大量殺人者やテロリストなど巨悪犯に体して逮捕して身柄が確保できず、武器を持って反撃してきて身の危険が迫った時、正当防衛として射殺する。
その為、自殺願望で犯罪を行う者は、射殺されたくて凶悪犯罪を繰り返して抵抗を続ける。
・ ・ ・
死刑のある日本では、如何なる残虐な犯人でも、警察は身の危険を冒しても逮捕し、どうしても確保できず命に危険が迫った時のみ犯人を射殺する。
いまだかって、犯人を射殺した事がない。
自殺願望の犯人は、逮捕されたくて凶悪犯行を行い、警官に抵抗せずあっけないほど簡単に逮捕される。
・ ・ ・
死刑のない国では、犯人を現場、もしくは逃亡先・潜伏先などで射殺する。
死刑のある日本では、犯人を射殺せず逮捕し、裁判を行って処刑する。
・ ・ ・
欧米諸国などでは、オウム真理教などのカルト集団や赤軍などのテロ集団は抵抗すればその場で武力制圧として全員を射殺した。
日本は、そうはしなかった。
・ ・ ・
欧米諸国と日本の違いはそこにある。
世界での常識は、現場での射殺である以上、日本は世界の非常識である。
・ ・ ・
日本の人権派や死刑反対派は、大量虐殺者・凶悪犯・テロリスト等の現場での射殺さえも非人道的だとして猛反対している。
つまり彼らが守りたいのは、加害者の命と権利であり、命の危険を冒して逮捕に向かう警察官の命でもなく、罪科もなく殺された被害者の権利でも、殺された被害者の家族や身内の心情などでもない。
日本で活躍する人権派や死刑反対派とは、そうした犯罪者の人権と命を守ろうとする人々が多数派である。
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日本人の精神は、明治・大正・昭和の中頃まではある程度しっかりと安定していたが、昭和の後期から平成と時代が進むにつれて不安定になり未熟化が進んできた。
それが、現代の教育の成果ともいえる。
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日本が変われるとすれば、それは、昭和天皇とA級戦犯達のによる数万人のポーランド系ユダヤ人難民達を無償で保護、日本軍は戦死者を出しながら河南省大飢餓で1,000万人の飢餓民を救護、などの人道貢献を認めた時であろう。
そして、世界が変わるとすれば、中世キリスト教会による日本人奴隷交易の容認、キリスト教系朝鮮人テロリストによる昭和天皇及び皇族の殺害失敗、中国人暴徒による済南大虐殺及び通州大虐殺事件、ソ連軍・ロシア人共産主義兵士による日本人避難民(女性や子供)の大虐殺、などの戦争犯罪・ジェノサイド事件を認めた時であろう。
全ての事例には、確かな証拠が山ほど存在する。
だが、その変化を最も嫌い否定し阻止しようとしているのは、現代日本人である。
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戦争犯罪は、軍国日本ではなく、中国共産党・ファシスト中国そしてソ連・共産主義勢力が先に行い、その被害はひとえに日本人の女性や子供達であった。
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日本にとって恐ろしい相手・明らかな敵は、宗教のキリスト教と主義主張の共産主義であった。
そして、日本の不倶戴天の敵・中国共産党である。
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