🎑110)─1─日本の官製クールジャパンは失敗する。第二次安倍晋三政権の成長戦略の欺瞞。~No.249No.250 @ 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 日本の政府が国策として推し進めている官製クールジャパンは、死んだ日本文化もしくは生命力のない日本文化の遺跡である。
 政府が国策として巨費を投じて輸出している官製クールジャパンは何時か衰退し、本体のクールジャパンそのものも何時かは消滅する。
   ・   ・   ・   
 日本文化の生命力は、世界の文明・文化と比べて生命力が弱い為に、良質な栄養と新鮮な水と心地よい美しい日本国語の言霊と、そして何よりも新しい刺激を絶えず与え続けないと衰弱して消えてしまう。
   ・   ・   ・   
 2018年7月・8月号 SAPIO「熱狂を歩く  古谷経衡
 マレーシアで見たクールジャパン
 血税10億円乱費の現場
 バカンス気分が一転。南国マレーシアにて、クールジャパンの寒すぎる実態を目撃することになるとは、筆者も思ってもいなかったという。第二次安倍晋三政権の成長戦略の欺瞞を、クアラルンプールの〝官製〟百貨店から、現場報告する。
   *   
 私が赤道直下のマレーシアにバカンスで降り立ったのは、ちょうど92歳のマハティールが同国首相に返り咲いた18年5月の末であった。同国首都クアラルンプールは都市圏人口を含めると700万人の大都会である。
 この一等地、ちょうどツインタワー見上げるブキッ・ビンタンの交差点に、第二次安倍政権が国策として進めるクールジャパン戦略の最重要拠点の一つ、地下1階地上4階、総売り場面積1万1,000m2の『ISETAN The Japan Store』が存在することは、事前に知っていた。
 クールジャパンの前衛である、実質的な国策ファンドであるクールジャパン機構(以降機構)は、このJapan Storeに9億7,000万円の投資を行って2016年に堂々開業していた。
 官が入ると商売は失敗する、というのは士族の商法以来の我が国のお家芸とも言えるが、可も無く不可も無くやっていると思い、今回の視察は1時間で切り上げる予定でいた。ところが、そこで見たのは10億円の血税を投入した一等地の日本百貨店の、余りにもむごたらしい悲惨な現状であった。
 生鮮食品売り場には客は居らず、山梨県産のブドウが2房2万円、桃が5個で1万円、いちご(大)1パック2,000円。日本で300円未満で買える缶詰類やドレッシングが1,000円〜という法外な値段で客は誰も入っていない。
 2F日用雑貨コーナーでは、日本で『安かろう』の代名詞である雪平鍋(ゆきひらなべ)が1個1万5,000円。謎の仏像が11万円。柴犬をかたどったプレートが15万円という、意味不明の値付けで当然客はなし。しかもクールジャパンを謳っておきながら、スター・ウォーズの合金製模型が1個数万円から展示販売されていて開いた口が塞がらない。
 3F文化コーナーにも人影は全くなく、日本列島の壁面モザイクだけが辛うじてここが『日本百貨店』であることを伝えるが、現実には売り場の大半を占めているのはウォルト・ディズニーデンマークのレゴロックである。
 これのどこが日本文化だというのだろうか。それとも、日本文化とは米国文化と同一であり、日本はアメリカの属国であるという皮肉の意図がこの品揃えには反映されているのだろうか。流石(さすが)に深読みが過ぎる。単に、現場や官が、日本の現代カルチャーのことを何も知らないだけなのだ。
 現代日本文化の核となるはずの大友克洋押井守宮崎駿王立宇宙軍のDVDも漫画も一冊も置いていない。こんなものに血税10億円弱が投入されていることなど、日本では報道されていないし、現地に行くまで知るよしも無かった。
 私は怒りとも諦観とも似つかぬ感情で帰国し、直後ヤフーニュースでこの模様を大々的に写真付きで記事にした。すると膨大な反響があり、私の名前が世界のツイッタートレンドランキングの11位にまでに至った。
 やはり機構が血税を投入したこの世紀のハコ物『The Japan Store』に対する納税者の怒りは凄まじかった。
 偶然とは思うが、機構は私の記事が出てから約30時間後に、このクアラルンプールの日本百貨店から完全撤退することを発表した。報道によると、年5億の赤字を垂れ流していたのだという。
 当たり前だ。日本百貨店なのに日本の文化を置いて居らず、フルーツ王国マレーシアで100円未満で買える果物が2万円の値付けがされているのだから、現地人は誰も入らない。
 実に開業から2年で税金の投入は終了したわけだが、この間垂れ流し続けていた赤字の補填は、結果国民負担となるのではないか。
 『撤退しました』では済まされない、余りにもお寒い官製クールジャパンの実態を南方で見たのである。
 現代のインパール
 そもそもクールジャパンとは何か。90年代に、北米や欧州で大ヒットした質の高い日本産アニメを『クールジャパン』と呼んだ。これが前述した大友や押井、宮崎等々である。
 ひと言で言うと、クールジャパンとは、この『ジャパニメーション』に、日本食・日本酒・日本のデザイン・日本の伝統工芸や服飾などを恣意的にくっつけた複合体である。
 しかし官はそもそも、クールジャパンの根底にある押井や大友作品に無知なので、畢竟(ひっきょう)その中心は経済産業省の官僚でも理解しうる日本酒や日本食に集中する。
 2013年に稲田朋美が担当大臣となって発足した『クールジャパン推進会議』は惨憺たる結果に終わった。のっけから、民間審議員の金美齢が『私はアニメとかよく知らないので、食の話にして下さい』と現代カルチャーを拒否して議論が進む。
 とにかく日本文化の発信、国威発揚ありきで予算がつけられ国策ファンド(機構)が設置され、日本文化とは何かと自問する前に、全てのことが無知と市場経済を無視した前提で見切り発車した。その結果、機構の投資した物件は海外で悉(ことごと)く赤字を垂れ流し、現在5年目にしてようやくその惨状がぼちぼちと明るみになりつつある。
 機構が撤退した『The Japan Store』は元々51%を出資していた三越伊勢丹HD子会社の完全運営となり、今後官が撤退して店舗をリニューアルする予定だという。
 だが機構に問い合わせても、三越伊勢丹HDに問い合わせても、『失敗の本質や反省、責任の所在』は全く回答せず、ただ事務的な応対だけが返ってきた。まさに現代のインパールである。お上が関与しなくなった後の日本百貨店が今後どうなるか、我が目で確かめたい。
 文化発信が国のブランドを左右し、場合によっては軍事力に匹敵する国力に繋がる、という理論を最初に打ち立てたのはアメリカの国際政治学者・ジョセフ・ナイである。ナイはこれをソフトパワーと言った。クールジャパンの根底にあるのはこのナイの理屈である。
 実はクールジャパン戦略の萌芽は第二次安倍政権では無く民主党政権(当時)から経済産業省の中であった。ナイの理屈は正確に言えば、ソフトパワー(文化)とハードパワー(軍事)が両立して初めてスマートパワーになって国力が向上する。民主党時代のクールジャパンの資料を読むと、割にナイの理屈に忠実で『文化発信だけでは駄目』という記載がある。
 しかし第二次安倍政権では、ハードを無視して、遮二無二空虚な文化発信だけが、『ゴスロリ十二単(じゅうにひとえ)が起源』などといって憚(はばか)らない無知蒙昧の担当大臣と市場経済や投資効果を無視した機構に丸投げされて進んでいる。
 私は日本人のアニメオタクとして、このお上の現代文化に対する無知と無駄を国辱と考える。まんだらけのアルバイトを強制連行して陳列をやらせた方がよほど上手くいく。現在のクールジャパン戦略は、誤謬(ごびゅう)に満ちており、その実行場所が海外なのをいいことに、好き放題の放漫が行われて居る。
 機構の総投資額は実に600億円ともいわれる。森友問題の8億円に怒るなら、こちらには満腔(まんこう)の肘鉄を食らわせなければならない。 
 日本人として、またいちオタクとして、私は、ひとつ探求すべきテーマが増えたように感じる。
 座頭のを 借りて座頭の 鳴りやめ    誹風柳多留 」
   ・   ・   ・   
 現代日本が思いつく最有望な金儲け成長戦略は、日本を訪れる外国人観光客の金を巻き上げるギャンブル・賭博である。
   ・   ・   ・   
 7月12日号 週刊文春万城目学の人生論ノート
 元禄、のち文化、ときどきJポップ(下)
 『ローマ帝国興亡史』で知られる歴史学ギボンについて著述されて本に、『文明がその頂点にあるとき、すでに衰亡の種子が芽生えている』
 という一文を見つけたとき、何やら大げさな話だなと思ったものだが、ふとJポップの隆盛を振り返ったとき、まさしくこのフレーズがそのまま当てはまることに気づく。
 きっと、かつての元禄文化化政文化の世の中を生きた人たちも、私と同じ実感を抱いたのではないか。すなわち、何かしらの頂点があった。それから10年以上が経過した。依然、音楽はあふれている。10年前に歌われていた人たちも大勢、残っている。ヒット曲もときどき出る。いい曲はたくさんある。それなのに何かが違う。何が変わったのかと問われても、うまく答えられないが、世の中に充ち満ちていた熱量が消えてしまった、さらにそれが戻ることは当分ないだろうと、どこか本能で勘づいている。
 2010年あたりだったろうか。
 Kポップのダンス・ミュージックが新たな波となって日本に押し寄せた。少女時代のPVを見て、ショックを受けた。いつの間にか、すべて追い抜かれていたからである。
 『ああ、芽が育ったのだ』
 刹那、かつての深夜番組が蘇った。
 アメリカのヒットチャートにそっくりなダンス系音楽で占められた韓国のヒットチャート。あれから10年が経ち、真に吸収され、洗練され、新たに自分たちの音楽に化けて海を越えてきたのだと、くねくねと見たことのない動きをする少女時代のメンバーの長い足に見惚れつつ悟った。
 どうしたらよかったのか、と自問する。
 しかし、どうしようもなかった。と答えが出るのも早い。あの深夜番組で流れた98年あたりの日米韓のヒットチャートを見て、あのごりごりのダンス・ミュージックをJポップの主流に取り入れるなんて想像さえできなかった。あまりに世界的流行とは異なる、独自の曲調に進化してしまった日本の音楽シーンには、もはや余白がなかった。何しろ、日本のほうが断然いい音楽だったからである。
 おそらく、ちょうど世紀をまたぐあたりにJポップは頂点を迎えた。同時に世界の潮流からも隔絶された。
 そもそもは海外の音楽をまるっと取りこみスタートしたはずだった。ビートルズをある日聴いた中学生がギターを買う。英語がわからなくても夢中になってギターを覚え、メロディを問答無用で吸収する。かくして文化は伝播する。それまで彼を鍛えていた日本の音と海外からの音が融合し、次の音楽が生まれた。 
 今の日本に、この風景はあるのか。
 元禄文化化政文化も30年で廃れた。若いころはどうして持続しなかったかわからなかったが、今ならその理由が自然とわかる。外国から新たな養分を加えない限り、第一世代がやり残した部分から、次の世代は伸びしろを見つけるしかない。第一世代が天才ばかりの場合、焼け野原しか残らず、自然30年という一世代分の活動で幕を閉じる。
 クールジャパンなどとふやけた気分で発信している場合ではない。取りこまなくてはいけないのだ。いいものを探し、問答無用で吸収しなくてはいけない。だから、私はゲームをする。サッカーを観る。映画を観る。特に海外ドラマを観る。質の高い娯楽、その最先端のものが沸騰していそうなところに首を突っこむ。
 先日、防弾少年団が全米チャート1位になった。彼ら(Kポップ)はついに上り詰めたのだ」
   ・   ・   ・   
 日本文化は、ナチス・ドイツ、ファシスト・イタリア、ソ連が政治的プロパガンダに悪用した高度な文化とは異質である為に政治的プロパガンダには向かなかった。
 何故か、日本文化とは、外向きに他の文化と優劣を競い相手を圧倒し排除する優位・優越文化ではなく、内向きに内観で研鑽を積むだけの自己修練文化だからである。
   ・   ・   ・   
 中国や韓国・北朝鮮の官製文化政略は、日本とは違って成功している。
   ・   ・   ・   
 日本の人材育成とは、英語を巧みに話し、西洋の教養を身に付け、グローバルに世界で活躍できる高学歴出身知的エリートを育てる事である。
 人材育成の現場から、日本民族の伝統的な文化・芸術・芸能そして日本国語・民族宗教な省かれている。
 つまり、西洋を深く知る事であり、日本民族の知識は上辺の浅いものだけで十分であるという考え・思想・信念である。
 グローバルとは、日本の西洋化、アメリカ化である。
 それ故に、クールジャパンの目的は金儲けであって、日本民族文化の情報発信ではない。
 政治家や官僚にとってのクールジャパンとは、金を生む利権である。
   ・   ・   ・   
 その構造は、バブル経済時に日本全国で起きた巨額資金を投じた豪華な巨大施設建設ラッシュに似ている。
 大企業・政治家・官僚は、国策事業で大金を手に入れた。
 国策事業の失敗で、多額の借金が生活苦に陥りつつある国民に押し付けられた。
 国の財政赤字は、こうして生まれ、そして1,000兆円を突破し、その赤字の増加は留まる所を知らずに現代も続いている。
   ・   ・   ・  
 高学歴出身知的エリートは、現代のアニメ・マンガはおろか古典的な歌舞伎・文楽能楽、茶道・華道、民族芸能など民族特有の文化・文学・文芸・芸能・芸術・美術・宗教を深く知らないし、知ろうとも思わない。
 本心を言えば、子供じみたモノや古ぼけたモノには関心も興味もないない、のである。
 知りたいのは、アメリカを含む西洋の事のみである。
 身に付ける高度な教養とは、日本民族のモノではなく、アメリカを含めた西洋のモノである。
 高学歴出身知的エリートが強力に推進ししている英語教育の意味する所は、そこにある。
 数年後には、AIが組み込まれた高性能な翻訳機が安価で出回る。
   ・   ・   ・   
 江戸時代の武士の方が、現代の政治家・官僚よりも外国語を話せなかったし外国に行った事はなかったが文化的素養ははるかに高かったし、外交交渉能力は優れていた。
 その才能・実力は、日露交渉や日米交渉を見れば一目瞭然である。
   ・   ・   ・    
 江戸時代。財政赤字で苦しんでいた諸藩は、才能ある百姓や町人を武士に取り立てて財政再建を任せていた。
   ・   ・   ・   
 現代の高学歴出身知的エリートとは、真の意味でクールジャパンの対極に立つ文化的素養のない日本人の事である。


   ・   ・   ・